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2014年1月27日付 2505号

中期経営計画『DAN-TOTSU3か年計画STEP』策定、国内外の物流革新で16年度売上高1.5兆円目指す  ヤマトHD

 ヤマトホールディングス(木川眞社長)は22日、2016年度を最終年度とする中期経営計画「DAN―TOTSU3か年計画STEP」を発表した。

 9ヵ年の長期経営計画の2期目となるもので、「バリュー・ネットワーキング」構想の推進と「健全な企業風土」の醸成を柱に、16年度の連結売上高1兆5500億円、営業利益900億円を目指す内容。

 期間中に行っていく主な施策は、次のとおり。

 【「バリュー・ネットワーキング」構想の推進】
 ◎多彩な高付加価値モデルの創出
 デリバリーとノンデリバリーの横断的なグループ一体体制を強化するとともに、自治体等との連携による地域生活支援サービスの本格的な事業化を目指す。3年間で総額30億円の研究開発費の予算化、およびM&Aを積極的に推進する。

 ◎グローバル事業拡大
 14年度稼働予定のヤマトグループ国際輸送一貫トレース機能を活用し、アジア各国をつなぐ高付加価値な物流網の構築を進める。ASEAN地域統括会社「ヤマトアジア」を中心に、ニーズが顕在化しつつある小口多頻度の調達・納品、国際保冷、国際通販などの物流ソリューションと域内の幹線輸送を組み合わせたグローバルなデマンドチェーンマネジメントという新市場を創出する。
 また、15年までに国際クール宅急便のサービスエリアを台湾・シンガポールへ順次拡大する。

 ◎事業基盤の強化
 ネットワークの革新など、物流施設や車両配備に3年間で総額約1200億円の投資を行い、16年の大都市間(関東・中部・関西圏)当日配達の実現に向け、15年までにトライアル輸送を開始。
 またクロネコメール便については、新たに提案した「外形基準の導入による信書規制の改革」の実現に向け、引き続き働きかけを強化する。

 【「健全な企業風土」の醸成】
 ◎グループ全体で社員教育や企業理念の浸透に全力をあげる。「お客様との約束を守る体制」をより強固にし、事業領域拡大に伴うリスクを低減するために、ガバナンス強化とIT基盤の強化、確立に努める。
 IT基盤の強化については、16年度までに次世代情報システムを構築。グループ全体で荷物の流動量や集配エリアの「見える化」を推進し、荷物の総量予測に基づく、集配改革と的確な体制整備による品質の維持、向上を図っていく。

 これらの施策により、最終年度の16年度の目標数値を次のとおり設定した。
 ◎連結売上高=1兆5500億円(13年度見込額対比15.2%増)
 ◎連結営業利益=900億円(同26.7%増)
 ◎連結営業利益率=5・8%(同0.6ポイント増)
 ◎株主資本利益率(ROE)=9.0%超(12年度末は6.7%)
 ◎国内宅急便取扱個数=18億2千万個(12年度実績対比22.3%増)

 また、事業別の16年度目標数値は、次のとおり。
 ◎デリバリー事業(非連結含む)=売上高1兆2700億円、営業利益490億円
 ◎BIZ―ロジ事業(非連結含む)=売上高1600億円、営業利益90億円
 ◎ホームコンビニエンス事業=売上高800億円、営業利益15億円
 ◎e―ビジネス事業=売上高1100億円、営業利益140億円
 ◎フィナンシャル事業=売上高850億円、営業利益130億円
 ◎トラックメンテナンス事業=売上高800億円、営業利益50億円
 ◎その他=売上高450億円、営業利益15億円

正副会長らが会見「潮流プラスに生かす」  物流連が「新年の物流を語る会」開催

各業界のトップが一堂に会した「新年の物流を語る会」

 物流連(川合正矩会長)は22日、東京・平河町の海運クラブで、正副会長らによる「新年の物流を語る会」を開催した。

 冒頭あいさつで川合会長は、昨年は交通政策基本法の成立や、国交省内に物流審議官が設けられるなど、物流を担う体制や構成が整った年であったと表現できるのではないかと述べた上で、経済・政治的にもここ数年とは違った潮流が物流界に押し寄せており、物流事業の経営にプラスに生かせるようかじ取りをしていかなければならないと強調、より具体的な成果を求めていきたいと抱負を語った。

 引き続き各副会長、委員長が要旨次のとおり発言した(発言順)。終了後、同所で新年賀詞交換会を開催した。

 ◎上野孝副会長(内航総連会長)
 昨年は、災害時に果たした内航の役割について、一般の人に知っていただく機会もあったが、国内物流での大きな役割を果たす一方で認知度が高くないのも事実であり、一般の人に、もっと知ってもらう取り組みが大切と考えている。

 ◎朝倉次郎副会長(船主協会長)
 数年間苦しい状態が続いたが、今年は脱却できそうで、明るい兆しが戻ってくるのではないかと思う。海運サバイバルの時代からグレートリバイバル、と希望を込め、大復活の年になるのではと予感している。

 ◎入谷泰生理事(長距離フェリー協会長)
 燃料費高騰は企業努力だけでは解決できない問題であり、会員各社ともに限界にきている。
 また法定対応年数を過ぎた船舶が増え、利便向上に支障をきたしており、新造船計画が緊近の課題となっている。

 ◎岡田晃経営効率化委員長(全日空常務取締役)
 今年1番のトピックは首都圏の輸送量増加であり3月末、羽田空港からの中韓台の国際線の発着枠が3万回から6万回と倍になる。
 貨物のフォワーダーの拠点は成田に集積しているので、羽田との使い分けをしながら国内外の貨物の接続を行っていきたい。

 ◎石田忠正氏(JR貨物取締役会長)
 新規顧客が増えてきている。今後はエコマークやモーダルシフトが本格化すると見込まれている。またトラックドライバー不足が深刻化していることで、「鉄道頼むよ」との声も聞く。
 責任が重く、きちんと対応できる体制をつくるよう努力する。

 ◎星野良三副会長(全ト協会長)
 ドライバー不足が懸念されている中、若手を中心とした労働力確保・人材教育・能力開発を強力に推進していきたい。8月には全日本トラック総合会館が竣工する。

 ◎岡本哲郎副会長(日倉協会長)
 昨年7月以降、入出庫が活発になっておりデフレ脱却の年になると期待している。今年は倉庫業の公共性の維持拡大、会員事業者の経営基盤の強化を目指し、経済循環の中での役割を果たしていきたい。

 ◎中村次郎氏(JIFFA・JAFA会長)
 航空貨物で重視しているのがテロ対策であり、セキュリティの問題。海運貨物では、3月から導入される「24時間ルール」に対しどう対応するかが課題となっている。

 ◎川合正矩会長(通運連盟会長)
 「顧客にどのように戻ってもらうか」を中心に、鉄道コンテナお試しキャンペーンの実施をはじめ、モーダルシフトの促進に向け31コンテナの導入・養生資材の助成などに取り組んでいる。

今週掲載トピック一覧

  • ☆物流にとってアベノミクス『吉』か『凶』か(14)
    ☆寄稿、パレット管理『戦略的経営課題とシステム導入の5つのハードル(下)』
    ☆運輸・交通両労連トップに聞く『2014年春闘展望』
    ☆四文字『廃止運動か「免許制度」』
    ☆道『規制緩和時代の幕開け(25)』
    ☆物流業界の新年会

  • ☆国交省、ドライバー不足問題でプロジェクトチーム設置
    ☆日貨協連の新春講演会で国交省・加賀貨物課長が講演、業界の現状と行政の対応
    燃料高騰対策予算など
    ☆交通労連トラック部会が中央委、賃上げ要求7800円中心など春闘要求まとめる 
    ☆ヤマト労組が春闘討論集会、繁忙期の混乱踏まえキーワードを「約束」に
    ☆日通、「春の新生活応援」で引越キャンペーン
    ☆ヤマト運輸が新システム運用開始、ICカード免許証活用して運行管理業務を支援
    ☆日通・パナソニックロジスティクスが発足
    ☆全流協の瀬戸会長が10年後のドライバー不足等への対応でプロジェクト設置へ、幹線運行効率化を研究
    ☆日通、ブラジル7拠点目のロジセンターをカジャマールに開設
    ☆佐川急便が組織改正、5支社を本社統合し本社7部から16部体制に
    ☆日通、「原木BILT-2」を竣工

今週のユソー編集室

  • ▼すでに一般紙等で大きく報じられているとおり、東京都知事選が23日に公示され、新人16人が立候補した。投開票は2月9日に行われる。
    ▼日本最大の都市の首長選というだけあって、原発が焦点の1つに挙げられるなど、やや違和感はあるものの、しばらくは行われないであろう国政選挙の代理戦争のような形になるのは、やむを得ないのだろう。
    ▼ただ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、新しい都知事はこれからのまちづくりに大きな影響を与える人物となるのだから、都民ではない物流関係者にも、興味は尽きない。
    ▼まだまだ不足している貨物車の駐車スペース、集配車を狙い打ちするかのような駐車違反の取り締まりなど、都内における物流課題は数多い。東京への一極集中は今後も加速化していくと予想するならば、なおさら物流に配慮したまちづくりが必要とされるはずだ。果たして都民の選択は誰になるのだろうか。

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