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2015年7月20日付 2572号

長時間労働の是正へ、トラックの取引環境・労働時間改善の地方協議会がまずは東京・新潟で発足  国交省

東京地方協議会では活発な意見交換が行われた

 トラックの取引環境・労働時間改善に向けた具体的協議スタート―。
 国土交通省は、トラック輸送での手待ち時間解消など取引環境・労働時間改善に向けた協議会を今月から来月にかけて各都道府県に設置し、検討を本格化させる構えだが、その先陣を切って14日、東京都と新潟県で第1回会合が開かれた。協議会は、5月に本省で中央協議会が設置されたことを受け、各地域の実態に即した取引環境・労働時間改善に向けた調査・検討などを行うために都道府県単位で設置されるもので、今月中に多くの都道府県で第1回会合が開かれる。

 14日に東京都新宿区の東京貨物運送健康保険組合会館で第1回会合が開かれた東京地方協議会は、本省や他の道府県同様に昨年度まで開催していたトラック輸送適正取引パートナーシップ会議を改組する形で発足。パートナーシップ会議時代から委員だったトラック事業者(団体)、荷主企業(団体)、労働組合などの代表者に、東京労働局長ら労働行政担当官も加わり、中小企業での月60時間超の時間外労働の割増賃金率50%の猶予が切れる直前の2018年度まで4年間にわたり調査・検討や実証実験、ガイドラインの策定・普及などの取り組みを行う。第1回会合では、協議会運営や労働基準法の一部改正法案の説明などに加え、9月に実施予定のアンケート実施内容案について審議。

 アンケートは、トラックでの長時間労働の実態を把握するため、各都道府県各100人のドライバーを対象に1週間の労働時間や作業内容などを調査する方針が中央協議会で示されたが、東京都はトラックの稼働台数が多いことなどを踏まえ、対象を150人とする案が示され承認された。また、東京労働局からは、昨年管内で道路貨物運送業216事業場を監督指導したところ、83.8%で法令違反が認められたことが報告され、「道路貨物運送業は、交通事情や荷主および配送先の事情により運行が左右されるため、総じて自動車運転者の長時間労働が常態化する傾向にあり、過労死・過労自殺など過重労働に起因する労働災害も少なくない」との分析が示された。

 こうした説明に対し委員からは、
 「国内貨物輸送量は減っているが、季節などによる波動が大きく、期末などにはトラックのドライバー不足が顕著になる。労働力人口の減少などにより、ドライバー不足の深刻化が叫ばれるが、このままでは給与が低く労働時間が長いトラック産業には人が入ってこない。手待ち時間の解消など荷主の理解で改善できることがある」(米田易憲東京都交通運輸産業労働組合協議会議長)
 「われわれトラック事業者は、社会インフラとしての役割を担っているが、輸送契約については商取引ということで行政は介入できない。公共輸送機関として育てるならば、労働時間短縮などに向けた荷主との協議に行政の後押しは必要。このままの状況が続けば、今後の東京の輸送がどうなるのか自信が持てない」(天野智義天野運送代表取締役)
 「ドライバー不足に直面しているが、作業員の確保にも苦労しており、工場内のロジスティクスを減らす努力もしている」(髙橋哲也キリングループロジスティクス東日本支社営業部長)
 「全サプライヤーにウェブ上で納期確定を行う仕組みを提供し、事前の納期調整を行うことで、待機時間の短縮を図っている」(池田和幸アスクルECR本部統括部長)
 「トラックドライバーは長時間労働だが、時間外手当がなければ家族を養えない実態にある。労働時間を減らすには、まず実質賃金を上げる必要がある」(早乙女湯一連合東京副事務局長)
 「トラックの手待ち時間解消に向けた活動を10年前から行っており、現在も『プラスマイナス15分』をKPIの目標として掲げ取り組んでいる」(久野雅人ブリヂストン物流取締役)
 などの意見が出された。

宅急便センターを”自社拠点”に「ヤマトクラウドデポ」発売  ヤマトHD

 ヤマトホールディングス(山内雅喜社長)は13日から、ヤマト運輸の全国約4千ヵ所の宅急便センターを、利用各社のビジネス拠点として活用できる企業向けサービス「ヤマトクラウドデポ」の販売を開始した。営業マンがスマートフォンなどで商材等を発注し、最も便利なセンターで引き取れるクラウド型の発注システムと、宅急便ネットワークを融合したパッケージサービス。

 営業マンは自社営業拠点に立ち寄ることなく、必要な商材等を最寄りのセンターで引き取り直接訪問先企業に向かえるようになるほか、各営業所での発注・在庫確認などバックオフィス業務の省力化や在庫削減も実現できる。具体的な機能は①個人別の出荷依頼入力②出荷依頼の配送状況照会③サイト内での商材在庫管理④引き取りセンターの検索と選択サポート⑤引き取り場所への商材の到着通知。このほか各メーカーからヤマト運輸が直接商材等を引き取り、検品・セットアップした後必要なセンターへ配送するサービスなど、各種オプションを設定。

 サービス利用料は営業スタッフの社員数に応じたID使用料と商材輸送分の従量課金制。

今週掲載トピック一覧

  • 夏季第1特集
    ☆車両整備特集『日通商事整備製作部・SGモータース・ヤマトオートワークス』
    ☆臨海鉄道特集『黒字への転換目指し”安打製造機”の開拓へ~名古屋臨海鉄道』

  • ☆日本ロジスティクス研究会、セミナーでパワーアシストスーツ2種類の性能を体験
    ☆全日通労組が第70回定期大会を開催
    ☆物流連が9月にインターンシップ、規模拡大し第2回開催
    ☆日通商事名古屋支店、名古屋北塗装工場が竣工
    ☆日通商事福岡支店、福岡工場塗装作業場上屋を増設
    ☆全ト協が15年1~3月の交通事故統計分析を発表、事業用貨物車の死亡事故は目標大幅に上回るペースに

今週のユソー編集室

  • ▼先週の日本列島には、沖縄など一部地方を除き、梅雨明けの知らせも届かないうちに猛暑と台風が襲来し、あたかも夏本番を思わせる気候となった。
    ▼容赦なく照りつける太陽を見上げながら、近づく夏休みに思いをはせた方も多いと思うが、交通運輸産業の安全確保という観点から言えば、台風は無論のこと猛暑もドライバーの健康管理の面で気にかかるところだ。
    ▼国交省の検討会では、鉄道輸送障害発生時の代替輸送対策について近く報告書をまとめる予定としており、気候が荒々しさを増す中で災害に強い物流網の構築に向けて、一刻も早い対策の実現が望まれている。
    ▼国交省などが検討しているトラックドライバーの労働時間短縮も、もはや気温35度以上は当たり前という猛暑の季節下で心身の健康を保つため、荷役作業効率化などともあわせて、ぜひとも実現してもらいたい話だ。猛暑の夏を快適に過ごすために、とにかく安全確保を心がけたい。

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