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2015年11月9日付 2586号

「賢い物流管理」実現へ 物流効率化と過積載撲滅を一体的に進める施策を合同小委で提示国交省

 国土交通省は5日に開かれた、社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会物流小委員会と交通政策審議会交通体系分科会物流部会物流体系小委員会の合同会議の場で、「ITを活用した『賢い物流管理』について(案)」を公表し、ETC2.0を活用した施策と、自動重量計測装置WIM(Weight―in―motion)を活用した施策を組み合わせ、物流効率化と過積載の取り締まり強化を一体的に進める考えを示した。

 「ETC2.0」を活用した施策では①装着車への特車通行許可の簡素化②トラック運行支援サービス③大型車誘導区間の「ラスト1マイル」の追加―の3点を挙げている。

 特車通行許可では現在、申請した個別の輸送経路のみ通行可能なことに加え、定期的に更新手続きが必要となっているのに対し、ETC2.0装着車を対象に、国が指定した大型車誘導区間を走行する場合、一つの申請で輸送経路を自由に選択できるようにする。更新手続きについてもETC2.0で得られる経路データやWIMで得られる重量データを照合し、違反がない場合は自動更新できるようにする。国交省では今月中にもパブリックコメントを募集した上で実施に踏み切る構え。

 運行管理支援については、ETC2.0で得られるリアルタイム位置情報と急制動等で判断できる危険箇所情報を、事業者に提供する形で社会実験を行うこととしており、今月中にも事業者の公募を開始する。公募対象は物流事業者に加え、国交省のデータを加工して提供する事業者、バス事業者、レンタカー事業者なども含む。

 大型誘導区間の追加では、現在誘導区間から目的地である物流拠点までの「ラスト1マイル」がつながっていない部分があるため、まずは国際競争力強化の観点から2015年度内に国際戦略・拠点港湾との「ラスト1マイル」を選定・追加し、16年度以降物流効率化や環境保全の観点から、重要港湾・工業団地・トラックターミナルなどへのさらなる「ラスト1マイル」について、順次検討・追加していく。

 WIMを活用した施策については、現在40ヵ所に設置されている同装置の計測により、直近2年間の過積載車両が12年度比で約3割も増加していることを背景としたもの。施策は①増設とイエローカード(警告・是正指導)の見直し②道路管理者ネットワークの構築③トラックと荷主情報のマッチング―の3点。

 増設とイエローカードについては、新技術を採用し測定誤差を改善させたWIMを本年度から順次増設するほか、現在軸重と月間の違反回数で2段階に設定されているイエローカードゾーンについて、段階の細分化を図るとともに、レッドカード(告発・許可取り消し)の発出条件についても、現行のイエローカード4回を3回以下に引き下げるなど厳罰化を視野に入れ、16年度から段階的に見直していく。

 道路管理者ネットワークでは、現在各高速会社でばらつきがみられる特車基準等について統一化を図るとともに、違反情報の共有化、基地取り締まり時のWIM情報の活用、基地取り締まりの強化を行うもの。いずれも16年度から順次実施していく方針で、特車基準の統一化のみ前倒しの実施を検討する。

 荷主情報とのマッチングについては、過積載運行に関して荷主にも責任をもたせることを意図したもので、16年度から◎基地取締りの違反者に荷主名など荷主に関する情報を聴取◎荷主も関与した特車許可申請の仕組みの検討―を順次実施していく。さらに工事現場など運送元に関する情報を活用した防止策についても、幅広く検討していく考え。

 これらの施策にメリハリをきかせ、20年度目途に過積載半減を目指していく。

 委員からはWIMの増設方針について質問が挙がり、これについて国交省側は通行量の多いところに増設していく考えを示したものの、具体的な設置基準や増設箇所数については検討中とした。

 合同会議ではこのほか、関係者からのヒアリングとして、国土技術政策総合研究所の牧野浩志ITS研究室長が「路車協調システムの動向」について、ITS Japanの内村孝彦理事が「自動運転技術の動向」について、日本通運の中野喜正業務部専任部長が「『オペレーション支援システム』活用による運行・作業実績の可視化と安全・エコドライブ運転の推進」について、それぞれ説明した。

 このうち中野専任部長は、データ・テック製のドライブレコーダー一体型デジタル式運行記録計を用いて開発したオペレーション支援システムの導入により、動態管理や燃費管理・積荷状況把握などといった運行管理面に加え、運転行動評価や危険挙動把握など安全運転面、勤務日報など勤怠管理面で改善が図られたことを説明。

 今後は作業計画や実績管理など作業操配機能の追加や、稼働率・実車率・燃費情報・一車別収支データの活用による、さらなる効率化を予定していることなどを明らかにした。

トラック千台保有の丸協グループを子会社化 取得総額100億円  三井倉庫HD

 三井倉庫ホールディングス(藤岡圭社長)は4日開催の取締役会で、大阪に本社を置く丸協運輸をはじめとする丸協グループの全株式を取得し、子会社化することを決議した。丸協グループはトラック千台を保有しており、三井倉庫グループの運送機能を強化する。

 大阪に本社を置く丸協運輸と、愛媛に本社を置く丸協運輸とその他関係する会社4社の総取得額は100億円、株式譲渡実行日は12月18日の予定。丸協グループの現経営陣は、引き続き経営に携わる。同グループを統括管理するため、新たに連結子会社として「三井倉庫トランスポート」を設立し、倉庫港湾運送・グローバルフロー・グローバルエクスプレス・ロジスティクスシステム・BPO・サプライチェーンソリューション事業に続く、7番目の事業会社として位置付ける。

 今回の株式取得について、「三井倉庫グループの各事業会社を、運送機能を通じ有機的につなげることでサプライチェーン全般に対するワンストップサービスが提供可能になり、物流の『小口化・多頻度化』やドライバー不足にも対応可能となるため、さらなるグループシナジーの創出と生産性向上に大きく貢献するものと考えている」とコメントしている。

今週掲載トピック一覧

  • ☆ウォッチ「中国の『第13次5ヵ年計画』を読む」
    ☆四文字『過積載で議論「国会審議」』
    ☆道『国際化に至る道半世紀』(11)

  • ☆秋の叙勲、岡部日通元会長に旭日重光章
    ☆日通、齋藤副社長が第2四半期連結決算会見 複合事業の利益率が、目標の3%達成に近づく2.4%に ワンビシアーカイブスのM&Aに関してはグローバル拠点展開も視野に
    ☆カンダグループ、第36回カンダ祭り開催 元気と笑顔で交流 働きやすい職場づくりへ
    ☆物流連、若年労働者の確保を支援するセミナーを来年1月に開催 参加企業34社に
    ☆山九、メキシコに初の現地法人設立
    ☆国交省、第2回トラックの取引環境・労働時間改善中央協議会を内閣府の協議会と合同開催 好事例発表
    ☆東ト協連、「第23回運賃動向に関するアンケート調査」の結果を公表 荷主との運賃交渉で「値上げ」が44%の一方、「値下げ」も7%
    ☆運輸労連、ドライバー8千人弱に調査 残業代等やや改善するも年収規模間格差は拡大
    ☆物流連、施設見学会を開催 「ひまわり5」訪船等
    ☆国交省、首都直下地震を想定した物資輸送ワークショップを開催 即応型計画策定へ
    ☆日貨協連、「組織見直し特別委員会」を設置 25日に第1回会合
    ☆長距離フェリー協、上半期トラック航送実績まとめ 前年並みの59万台
    ☆全ト協、業界要望実現する会を開催 11日に憲政記念館で
    ☆SG佐川ベトナム、スターマークと連携しベトナムでECサイトを開設 日本品質で配送提供
    ☆国交省、共同輸配送促進のマッチング試行を開始 来年2月まで実施
    ☆各社の第2四半期決算

今週のユソー編集室

  • ▼政府が国家的戦略として実用化に取り組んでいる自動運転技術。計画では段階的に自働化を進め、2020年代後半に完全自動走行システムの市場化を実現するという。
    ▼個人的には走行中ハンドルから手を放すことに強い心理的抵抗感がある。4日には名古屋大学の実験車が自損事故を起こしたとの報道もあり、実用化された場合には、そうした事故時の責任の所在なども大きな課題になってくるだろう。
    ▼だが社会全体、とりわけトラック運送業界からみれば、この技術に対する期待は大きい。例えば主要幹線高速道路で無人トラック走行が実用化されれば、労働力確保に頭を抱える事業者が受けられる恩恵は、計り知れないものになる。
    ▼関係者の言によれば、トラックの隊列走行は早期実現の可能性を感じるという。ここはやはり早期の実用化と技術の応用を重ね、高齢化に歯止めが掛からない長距離トラックドライバーの負担軽減・解消につなげてほしい。 への普及促進を望みたい。

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