「生産性向上重要に」、新年の物流を語る会で正副会長らが展望語る 物流連

日本物流団体連合会(工藤泰三会長)は1月27日、東京都千代田区の海運クラブで「新年の物流を語る会」を開催、正副会長をはじめとする幹部がそれぞれ業界の展望等について語った。
冒頭あいさつで工藤会長は、人口が減少し高齢化により介護にも人が必要となる中で「今後の物流が目指すべき方向性は海外進出と国内の生産性向上」と指摘。「生産性向上は物流企業と荷主企業が一体となって真剣に取り組むべきこと。労働力不足を生産性向上のチャンスと捉えたい。生産性が上がれば面白い業界と見なされ人も集まってくる」と語った。
引き続き各副会長、委員が要旨次のとおり発言した(発言順)。
齋藤充全日本トラック協会副会長
昨年は国交省・厚労省が主導してトラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会がスタートしたが、業界にとってこれは画期的なこと。総力を挙げて取り組む。
16年度は①取引環境・労働時間改善の推進②高速道路料金引き下げと割引制度充実化③参入基準の厳格化と規制緩和の見直し促進④準中型免許開始に伴う高卒新卒者の人材確保⑥消費税増税の円滑な転嫁の促進―などに取り組んでいく。
田村修二JR貨物社長
3月には北海道新幹線が開業するが、きちんと共存できるよう、絶対安全を旗頭に取り組む。青函トンネル前後の在来線は容量が増えて貨物列車のダイヤは良くなるので、使っていただきたい。
背高海上コンテナが搭載できる低床貨車の実験走行をできるだけ早期に行うとともに、冷蔵・冷凍12フィートコンテナの開発を進めていく。
川合正矩全国通運連盟会長
通運連盟では①鉄道コンテナお試し輸送②31フィートコンテナ導入助成③輸送障害時の代行輸送に対する助成―などを進めている。
お試し輸送は昨年度同様好調で、本年度の予算をほとんど使い切った状態。お試し期間終了後の継続利用は57%に達しており、使えば鉄道貨物輸送の良さを分かっていただけると思う。
小比加恒久日本内航海運組合総連合会会長
内航海運業界は船員の高齢化と船舶の高齢化が喫緊の課題。船員の高齢化対策では、若年船員の確保と代替建造を滞りなく進めることが重要。
今年の大きなテーマは租税特別措置の継続など税制の問題。また国土交通省が昨年11月から開始した新たな内航海運ビジョン策定のための準備作業に対して、全面的に協力していく。
入谷泰生日本長距離フェリー協会会長
海運モーダルシフトの兆しはある。朗報は原油価格の大幅な下落と、船舶の代替が進むこと。船舶代替では、今年中に九州航路で8隻の新造船が投入される。新造船は運行効率・積載効率に優れ、航路によっては輸送能力も増強されるので、利用をお願いしたい。
岡田晃ANA Cargo社長
燃油価格が下落したことにより、サーチャージ料金はほぼゼロになっている。価格高騰時に運賃面で協力したが、その部分は下落してもそのままとなっており、トータルの料金は厳しい。航空貨物を安定的に維持するため、状況を理解してもらうことが重要。
今年は昨年とは逆に、前半で我慢し後半で良くなることを期待したい。また、ペーパーレス化など効率化も必要になる。
伊藤豊国際フレイトフォワーダーズ協会会長・航空貨物運送協会会長
国際海上貨物は中国の景気減速懸念などから先行きは不透明だが、アジア全体では成長傾向は変わらず、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の合意などで大きなプラスになることを期待している。グローバルニーズに対応できる人材育成を図っていく。
国際航空貨物は輸出が前年同期比マイナスとなり、円安で輸入も減少しているが、今年も前半はその傾向が続くとみている。ただ、一部メーカーの日本回帰やEC(電子商取引)の増加、農水産品の輸出増加を大きなチャンスと捉えている。
テロ対策は以前に増して重大案件であり、航空保安教育訓練指定機関期間として、取り組みを一層強化していく。
安部正一日本倉庫協会会長
昨年は総じて貨物の動きが鈍かった。高止まりしている保管残高の在庫が調整され回転率が高まることが望ましく、今後の動向を注視している。
協会としては、倉庫に関する多様な情報を提供することで、会員の事業の後押しとなるような活動を進めていく。物流総合効率化法の認定取得支援や、好評を博している日倉協セミナーなど教育・研修に力を入れる。
工藤泰三日本船主協会会長
中国経済の減速は、皆さんが思う以上に世界経済に影響を与えている。船を造るには2年程度が必要で、今は船を作りすぎて海運がひどい目にあっている状態。ASEAN諸国がさらに成長してくるまで、苦しい時間が続くと思う。