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2016年2月1日付 2596号

「生産性向上重要に」、新年の物流を語る会で正副会長らが展望語る  物流連

工藤会長ら幹部が今年の展望を語った

 日本物流団体連合会(工藤泰三会長)は1月27日、東京都千代田区の海運クラブで「新年の物流を語る会」を開催、正副会長をはじめとする幹部がそれぞれ業界の展望等について語った。
 冒頭あいさつで工藤会長は、人口が減少し高齢化により介護にも人が必要となる中で「今後の物流が目指すべき方向性は海外進出と国内の生産性向上」と指摘。「生産性向上は物流企業と荷主企業が一体となって真剣に取り組むべきこと。労働力不足を生産性向上のチャンスと捉えたい。生産性が上がれば面白い業界と見なされ人も集まってくる」と語った。
 引き続き各副会長、委員が要旨次のとおり発言した(発言順)。

 齋藤充全日本トラック協会副会長
 昨年は国交省・厚労省が主導してトラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会がスタートしたが、業界にとってこれは画期的なこと。総力を挙げて取り組む。
 16年度は①取引環境・労働時間改善の推進②高速道路料金引き下げと割引制度充実化③参入基準の厳格化と規制緩和の見直し促進④準中型免許開始に伴う高卒新卒者の人材確保⑥消費税増税の円滑な転嫁の促進―などに取り組んでいく。

 田村修二JR貨物社長
 3月には北海道新幹線が開業するが、きちんと共存できるよう、絶対安全を旗頭に取り組む。青函トンネル前後の在来線は容量が増えて貨物列車のダイヤは良くなるので、使っていただきたい。
 背高海上コンテナが搭載できる低床貨車の実験走行をできるだけ早期に行うとともに、冷蔵・冷凍12フィートコンテナの開発を進めていく。

 川合正矩全国通運連盟会長
 通運連盟では①鉄道コンテナお試し輸送②31フィートコンテナ導入助成③輸送障害時の代行輸送に対する助成―などを進めている。
 お試し輸送は昨年度同様好調で、本年度の予算をほとんど使い切った状態。お試し期間終了後の継続利用は57%に達しており、使えば鉄道貨物輸送の良さを分かっていただけると思う。

 小比加恒久日本内航海運組合総連合会会長
 内航海運業界は船員の高齢化と船舶の高齢化が喫緊の課題。船員の高齢化対策では、若年船員の確保と代替建造を滞りなく進めることが重要。
 今年の大きなテーマは租税特別措置の継続など税制の問題。また国土交通省が昨年11月から開始した新たな内航海運ビジョン策定のための準備作業に対して、全面的に協力していく。

 入谷泰生日本長距離フェリー協会会長
 海運モーダルシフトの兆しはある。朗報は原油価格の大幅な下落と、船舶の代替が進むこと。船舶代替では、今年中に九州航路で8隻の新造船が投入される。新造船は運行効率・積載効率に優れ、航路によっては輸送能力も増強されるので、利用をお願いしたい。

 岡田晃ANA Cargo社長
 燃油価格が下落したことにより、サーチャージ料金はほぼゼロになっている。価格高騰時に運賃面で協力したが、その部分は下落してもそのままとなっており、トータルの料金は厳しい。航空貨物を安定的に維持するため、状況を理解してもらうことが重要。
 今年は昨年とは逆に、前半で我慢し後半で良くなることを期待したい。また、ペーパーレス化など効率化も必要になる。

 伊藤豊国際フレイトフォワーダーズ協会会長・航空貨物運送協会会長
 国際海上貨物は中国の景気減速懸念などから先行きは不透明だが、アジア全体では成長傾向は変わらず、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の合意などで大きなプラスになることを期待している。グローバルニーズに対応できる人材育成を図っていく。
 国際航空貨物は輸出が前年同期比マイナスとなり、円安で輸入も減少しているが、今年も前半はその傾向が続くとみている。ただ、一部メーカーの日本回帰やEC(電子商取引)の増加、農水産品の輸出増加を大きなチャンスと捉えている。
 テロ対策は以前に増して重大案件であり、航空保安教育訓練指定機関期間として、取り組みを一層強化していく。

 安部正一日本倉庫協会会長
 昨年は総じて貨物の動きが鈍かった。高止まりしている保管残高の在庫が調整され回転率が高まることが望ましく、今後の動向を注視している。
 協会としては、倉庫に関する多様な情報を提供することで、会員の事業の後押しとなるような活動を進めていく。物流総合効率化法の認定取得支援や、好評を博している日倉協セミナーなど教育・研修に力を入れる。

 工藤泰三日本船主協会会長
 中国経済の減速は、皆さんが思う以上に世界経済に影響を与えている。船を造るには2年程度が必要で、今は船を作りすぎて海運がひどい目にあっている状態。ASEAN諸国がさらに成長してくるまで、苦しい時間が続くと思う。

ヤマトのFRAPS(フラップス)を導入し東日本物流センター開設、作業効率が3割向上  KDDI

会見後に握手するKDDI田中社長(左)とヤマトホールディングス山内社長(右)

 通信大手のKDDI(田中孝司社長)は1月27日、相模原市に大型物流拠点「KDDI東日本物流センター」を開設。ヤマトホールディングス(山内雅喜社長)グループのヤマトロジスティクス(本間耕司社長)がビジネスモデル特許を持つクラウド型ピッキングシステム「FRAPS(Free Rack Auto Pick System、フラップス)」を導入し、作業効率の3割向上が実現した。
 携帯電話やスマートフォンの「au」ブランドを展開するKDDIでは、通信端末やアクセサリなどの周辺機器、販売促進用商材など、「auショップ」をはじめとする販売店・量販店向けの物量が増加しており、2012年に月間187万個だった出荷個数が15年には227万個にまで急増。今後も物量の増大が見込まれていることから、物流改革が急務となっており、13年10月にKDDIがヤマトに打診を行ったのを皮切りに東日本物流センター立ち上げに向けた検討を進めてきた。

 「KDDI東日本物流センター」は、相模原市緑区大山町4の7にラサール不動産投資顧問と三菱地所が15年1月に竣工させた「ロジポート橋本」の4階部分(床面積5万400平方メートル)を使用。フラップスにより、入荷から出荷までの作業効率を従来比で約30%向上させるとともに、再ピッキングを支援する「マージソータ」の導入で同一配送先の荷物の「同梱」を実現する。
 ピッキングは従来、作業者が台車を使用して商品棚を回り、配送先から受注のあった商品を一つ一つ「拾い集めて」いたが、フラップスでは、作業者の前に配送先ごとのオリコン(折り畳み式のコンテナ)がコンベアで運ばれ、ラック内のランプが点灯した商品をデジタル表示された個数オリコンに投入するので、作業効率が飛躍的に向上する。
 ヤマトグループのセンターでは全国13ヵ所に配備されているが、顧客の物流センター内への導入は「KDDI東日本物流センター」が初めて。

 また、午前中にピッキングを終えたオリコンと同じ配送先のピッキングが午後にも発生した場合などは、これまで午後分を別口でピッキングして午前分・午後分それぞれに梱包を行うか、午前にそろえたオリコンを「かるた取り」と呼ばれる作業で探し当てて再ピッキングするなどの方法が取られていたが、「マージソータ」を導入することにより、「かるた取り」を機械がスピーディーに代行。複数ピッキングを行った配送先の荷物を一括梱包する「同梱」を実現することで、コスト削減と店舗など配送先の作業負担軽減も実現する。

 センターの開設式典で会見したKDDIの田中社長は、東日本物流センターの立地について、ヤマトが「ゲートウェイ構想」の東日本の核として運用する「厚木ゲートウェイ」まで車で20分程度であることを説明。ヤマトの全国ネットワークに「KDDI東日本物流センター」をつなげることで、「多量の“モノ”をリアルタイムに配送する仕組みが実現する」とした。
 KDDIの赤木篤志購買本部長は、センターの立地にはBCP(事業継続計画)の観点も含まれているとした上で、現在東日本に47ヵ所ある物流拠点が新センターの開設により今年度末までには13拠点以下に集約できるとの見通しを示し、「場合によっては1桁台にまで集約できる可能性がある」とした。

 また、17年度には西日本にも大規模物流センターを開設予定であるとし、パートナーについては、「ヤマト以外の他社との比較も必要であると考えるが、ヤマトでほぼ間違いない」と述べた。
 ヤマトホールディングスの山内社長は、ヤマトグループでは物流を単なるコストではなく価値を生み出す手段に代える「バリュー・ネットワーキング」構想を進めていると強調。その上で、「KDDI東日本センター」に投入された物流ノウハウは、顧客に新たな価値を提供するものであるとの考えを示すとともに、今後は宅急便などの「toC」(消費者向け物流)に加え、「toB」(企業間物流)にも積極的に取り組んでいくとの姿勢を強調した。

今週掲載トピック一覧

  • ☆アベノミクス物流にとって「吉」か「凶」か(52)『原油価格の行方は?(その2)』
    ☆物流業界の新年会

  • ☆全ト協、警視庁からの要請を受け都内流入トラックに対する交通安全対策の指導徹底を通達
    ☆ヤマト運輸が第3回接客応対コンテストを開催、関東支社が初優勝
    ☆国交省、ETC2.0搭載車対象に特殊車両の通行許可を簡素化する「特車ゴールド」制度スタート
    ☆運輸労連が中央委で春闘方針決定、安すぎる運賃是正へ国の関与を求める
    ☆ヤマト運輸が仏企業と合弁会社設立に向けて合意、宅配各社が共同で利用できるオープン型ロッカー設置へ
    ☆NTTグループ・テルウェル東日本、引越サービス高評価の11社29チームを表彰
    ☆日通NECロジ(タイランド)、労働安全衛生マネジメントシステムの国際認証規格を取得
    ☆トピック『日本通信販売協会、「リアル店舗VSネット通販・家電購入実態調査」発表 オムニチャネル化進む』
    ☆住友倉庫、タイの子会社がISO9001取得
    ☆全流協の新年会で瀬戸会長があいさつ、「空き」が今年のキーワード JRコンテナ利用実験への積極的な参加を呼びかけ
    ☆建交労首都圏労使協が40周年記念総会・セミナー、中村会長らを再任 3月6日にトラックパレード
    ☆建交労中央運輸労使協、トラック運輸取引動向調査で「運賃上がった」15.5%「運賃下がった」は11.9%に
    ☆ヤマトグループ、秋田県食肉流通公社等3者間でタイ向け秋田牛の輸出販売に関する基本契約を締結
    ☆国交省が検討会を設置し初会合、貨物列車の安全確保について幅広い関係者で議論
    ☆SBSHD、安全スローガン決定
    ☆交政審鉄道部会のWGが技術検討の中間報告、青函トンネルの旅客・貨物供用走行の時間帯区分案など3案
    ☆全ト協新年賀詞交歓会、全国から500人余りが参加
    ☆東ト協港支部講演で濱関運局長が言及、準中型免許来年3月施行か 教習時間数等近く明らかに
    ☆日通総研短観12月調査、国内向け出荷1~3月“盛り上がりはまだ”
    ☆国交省、物流パイロット事業でタイ~ミャンマー間の越境物流の実証実験
    ☆日通キャピタル、国際規格マネジメント「情報セキュリティマネジメントシステム」3事業で取得
    ☆交政審自動車部会技術安全WGで報告書骨子案審議、今後の車両安全対策としてASV装置の義務化検討など

今週のユソー編集室

  • ▼青函トンネルの共用走行問題が、ここへきて新たな動きを見せつつある。新幹線車両にJR汎用12フィートコンテナを積載する「貨物新幹線」の検討を開始したという報道がそれだ。
    ▼全くの素人考えではあるが、コンテナを貨車に搭載した状態で専用車両に積み込み高速走行を可能にする「トレイン・オン・トレイン」方式よりは、実現へのハードルは低いように思う。
    ▼ただ、青森側と函館側に整備するコンテナ積み替え用の基地はどこに開設するのか、新車両の開発費は誰が負担するのか、EH800形式機関車のように、その負担が回り回って利用運送事業者に降りかかってくることはないのか、疑問は尽きない。
    ▼東京~新函館北斗間を3時間台で結びたいという気持ちは理解できる。それを実現したいなら、例えば盛岡駅~新青森駅間の速度制限を引き上げるといったやり方はできないのか。とにかく費用のかからない方法を選ぶべきではないかと思うのだが。

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