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2017年5月1日付 2654号

労働力不足への対応、次期物流施策大綱は生産性向上を核に 国交省重田物流審議官が会見

会見する重田物流審

 国土交通省の重田雅史大臣官房物流審議官は4月25日の会見で、現在策定に向けた検討が進んでいる次期総合物流施策大綱の基本的な考え方について、「今後5~10年を見据えると、生産性を飛躍的に向上させなければ物流の危機は乗り越えられない。イノベーションで生産性を上げることに尽きる」として①物流事業者と荷主・消費者との連携②トラック運転者をはじめとする物流人材の多様化・高度化③中小事業者を含めたテクノロジーの積極的活用④アジアの物流需要取り込み⑤災害対応―の視点を盛り込むことが重要であるとの考えを示すとともに、宅配便の再配達削減には消費者と通販・物流事業者とのコミュニケーションが不可欠であるとして、国交省としても消費者に対する周知・広報などで後押ししていく姿勢を強調した。

 重田物流審議官は、4月20日に開かれた次期物流大綱の第4回有識者検討会で示した骨子案に対し委員から、「総花的」「危機感がメッセージとして伝わらない」などの意見が出されたことに触れた上で、連休明けの第5回検討会に向け、現在委員の意見を踏まえた素案づくりを進めていることを説明。

 宅配便の労働力不足問題については、「消費者のITリテラシー(能力)が高まっており、通販・物流事業者が通信手段を活用して消費者とコミュニケーションを取ることで再配達が減る」とし、国交省としても「宅配便の1回受け取り」の重要性などについての周知に努めていくとした。

 また、共同宅配ロッカーの設置については、「ロッカーだけで再配達問題の解決にはならないが、受取場所を多様化しなければ、通販利用者のニーズに対応できないのは明白」として、コンビニ店舗や運送事業者の営業所、郵便局などを含めた受取場所の多様化や事業者間でのシェアを後押ししていく考えを示した。

 さらに、ヤマト運輸の総量規制問題については、「現在の宅急便は通販の取り扱いが増え、かつて想定していたCtoCのビジネスモデルとは違うものになっている。従来の宅急便が目指すサービスレベルやコスト、オペレーションに通販の荷物を載せたことが混乱を招いた」と述べ、総量規制はそうした環境変化の中での経営判断であるとの見方を示すとともに、国交省としても生産性の向上や働き方改革に関する政策メニューを通じて応援していきたいとした。

 通販事業者に対しては、「アマゾンは、欧米では自前で物流を行っているが、日本には高い品質でコストパフォーマンスのいい物流サービスがあり、“使わない手はない”といった感じで活用してきた。ところが佐川急便のアマゾン撤退の時点で、このままでは難しいことに気づいた。物流とどう折り合いをつけるかを真剣に考えないと、無店舗販売は成り立たない」として、「売る人・買う人・運ぶ人」が、ぞれぞれ効率的になる方法を売る側から考えるべきとした。

トール社の業績不振で4千億円の特損計上 長門日本郵政社長・横山日本郵便社長が会見

会見する長門日本郵政社長(手前)と横山日本郵便社長(奥)

 日本郵政(長門正貢社長)は4月25日、オーストラリアの物流子会社・トール社の業績不振により2017年3月期決算で4003億円の特別損失を計上すると発表。同日の記者会見で長門社長は、トール社のリストラ、ガバナンス・経営管理の強化等に取り組む方針を示し、日本郵便の横山邦男社長は、eコマース等の伸長が見込まれる国内マーケットは「宝の山」であり、ゆうパックや企業物流のロジスティクス事業でシナジー効果を発揮していきたいと語った。

 当期純損失は400億円と、郵政民営化後初の赤字決算となる。決算発表は今月15日。長門社長は「最終赤字の責任を重く受け止め、攻める経営のスタートとするために負の遺産を一気に断ち切る判断をした」と説明。買収の成否を問われた長門社長は、国内市場の縮小を踏まえ海外に活路を見い出す一石を打ち出したという点で1勝、6200億円の買収額が高かった点が1敗で「1勝1敗」と表現。執行役員以上の賞与カットや、当時、買収に携わった日本郵便の高橋亨代表取締役会長の代表権の返上等の措置を取ることを表明した。

 続けて、100社を超えるM&Aで拡大してきたトール社はオフィス・オペレーションが重複したままで固定比率が高く、主力の資源物流の市場減速で業績が急激に悪化しており、本年1月に経営陣を刷新するとともに、部門・ユニットの統合、2千人のリストラを実施するなど、コスト削減施策を中心に「筋肉質な体質」を作り上げ、業績回復に向けた対策を講じていく方針で、グローバル展開の中心としての位置付けは変えず、売却等の考えはないと明言した。

 一方、シナジー効果について、当初の見込みよりもその効果は限定的になっているものの、守秘義務契約により具体的事案はあげられないが、国際物流につなげる取り組みも出ていると説明。

 これに関連し、日本郵便の横山社長は、トール社とのシナジーを出すためには物流事業が主体になるとの考えを示し、国内の物流事業者との提携等も視野に入れ検討していく方向性を示唆した。さらに、横山社長は「国内マーケットは縮小するとは思っていない」と述べ、減少傾向にある手紙・ハガキについても「心を届ける」という点で、リアルとバーチャルの間で落ち着く地点があるとの認識を示すとともに、宅配事業についてはeコマースの発展で拡大が見込まれ「宝の山」であると述べ「個人に優しいゆうパック」を作っていかなければならないと考えていると語った。

今週掲載トピック一覧

  • ☆アベノミクス物流にとって「吉」か「凶」か(81) 『為替の行方は?(その3)』

  • ☆ヤマトHD・山内社長とヤマト運輸・長尾社長が会見、グループの働き方改革とデリバリー事業の構造改革でさらなる成長の基盤構築へ
    ☆センコー、ベトナムでフォーワーディング業務スタート
    ☆国交省、トラック運送の料金適正収受を目指し早ければ今夏にも標準約款を改正へ
    ☆国交省が交通事故対策検討会の17年度第1回会合を開催、7月の新プラン公表へ検討を開始
    ☆経産省が16年の電子商取引調査公表、日本国内のBtoC市場規模が前年比10%増の15兆円を突破
    ☆日本青年会議所の青木会頭が石井国交相を訪問、運転手不足緩和へ荷主規制の強化を提言
    ☆国交省の藤井自動車局長が会見、ヤマト運輸の一連の動きを積極的な取り組みと評価
    ☆日本ガス協会、LEVO・HSKと高効率天然ガストラックの実証実験開始 運行は佐川急便と新潟運輸が
    ☆センコー、シンガポールを拠点に航空・海上事業を営む「スカイリフト社」を子会社化
    ☆東ト協ロジ研が本年度第1回オープン物流フォーラムを開催、デフレ脱却やトラックの料金問題テーマに講師2人が講演
    ☆日本長距離フェリー協会が17年度の輸送実績まとめる、トラック航送台数は前年度比6%増の122万台に
    ☆セイノーHD・セブン―イレブン、セブン―イレブン店舗の「お届けサービス」拡大や「御用聞き・見守り」拡充に向けた専門会社の設立など業務提携契約を締結
    ☆全ト協がトラックの過労死半減を目指しWGを設置し計画策定へ、全国5千人のトラック運転者に実態調査し計画策定へ
    ☆日通が16年度の実績を発表、鉄道コンテナ・内航海上輸送は微減
    ☆西濃運輸、特積み業界初の車両位置情報提供サービス「いち知る」を開始
    ☆日立物流が決算説明会開催、中谷社長がSGHとのシナジーについて17年度売上高150億円・営業利益10億円を目指すとコメント
    ☆日通総研が短観3月分調査を発表、運賃動向指数は全輸送機関でプラスに

今週のユソー編集室

  • ▼「ヤマト運輸の宅急便総量規制」を伝えた2月末の一般紙報道からおよそ2ヵ月、「ヤマトショック」は今もなお、さまざまに形を変え、一般社会に大きな影響を与え続けている。
    ▼特筆すべきなのは、やはり「宅配便の再配達は社会悪」という認識が広く普及したことだろう。単純に考えても、1個の荷物を何回も運ぶことは、無駄な労力・無駄な時間・無駄なCO2排出をもたらすことになる。
    ▼すでに再配達防止は社会的な課題と位置付けられており、さまざまな企業が対策用のツールとして、ハード・ソフト両面から自社の商品やシステムなどをアピールしている。なるほど「再配達防止」は、大きなビジネスチャンスにもなるわけだ。
    ▼こうした取り組みにより、1個でも多くの荷物が1回の配達で届くようになればいい。一方で、例えば駅頭などに設置される宅配ロッカーについては、各社が連携して、より効率的に設置していく必要があるようにも思う。

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