物流・輸送の専門紙、輸送新聞はこれからも輸送産業の発展に貢献してまいります。

文字サイズ

2017年5月22日付 2656号

標準約款等の改正案を承認し意見募集へ、運賃・料金を明確化  中央協議会等

 国土交通省と厚生労働省は19日、東京都千代田区の中央合同庁舎で第6回トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会と第5回トラック運送業の生産性向上協議会の合同会議を開き、2016年度に各地方協議会で実施したパイロット事業の内容や成果について報告するとともに、トラック運送における運賃・料金の適正収受に向けた標準貨物自動車運送約款等の改正告示案を承認した。

 16年度は全47都道府県で48件のパイロット事業が行われ、うち28件で着荷主の参加が得られた。会合では、この中から愛媛県・熊本県での青果物輸送や長崎県から宮崎県への食料品輸送などの事例を紹介。食料品輸送の事例では、荷役と運送を分離するとともに、運行時に高速道路を利用することで拘束時間を2時間10分短縮した。

 また、和歌山県の鉄骨製造メーカーの製品輸送では、建設部材の寸法を見直して高速道路を24時間利用できるようにしたことで、2泊3日の輸送工程から19時間の拘束時間短縮を実現した。

 17年度は、すでに21都道府県で23件のパイロット事業の実施内容が固まっており、地方協議会の開催を経て準備が整い次第、実施に移す。

 こうした報告に対し委員からは、「16年度の結果を17年度パイロット事業に反映すべき」「ガイドラインを取りまとめる予定の18年度を待たずに、16年度の実施結果を速やかに公表することが望ましい」「好事例の水平展開に当たっては、他の輸送にしわ寄せがこないように配慮する必要がある」「コストの可視化が必要」などの意見が出された。

 標準貨物自動車運送約款等の一部改正告示案については、「トラック運送業の適正運賃・料金検討会」での議論やトラック事業者へのアンケート結果などを踏まえ、運賃と料金の明確化を行うこととし、運送状の記載事項に「待機時間料」「積込み料」「取卸し料」などの料金の具体例を規定する。また、トラック運送業における書面化推進ガイドラインについても、運送引受書の必要記載事項に「料金」を追加し、その具体例として、「待機時間料」「積込み料」「取卸し料」「附帯業務料」を規定する。

 運賃については「場所的移動および運送に必要な積付け業務」の対価であることを明確化するため、「一般貨物自動車運送事業等における運賃及び料金について(仮称)」とする国交省自動車局貨物課長通達を発出する。

 こうした改正案に対し委員からは、待機時間の確認方法や付帯作業時の労働災害の責任の所在などについて質問が出されたが、案の内容については了承され、今週中にもパブリックコメントの募集が開始される。

 パブコメ終了後、7月に公布され10月施行の見込み。

9月から道東地区でビール大手4社の共同物流サポート  日通

 日本通運(齋藤充社長)は16日、ビール大手4社の道東地区共同物流を9月からサポートすると発表した。アサヒビール、キリンビール、サッポロビール、サントリービールが物流部門での環境負荷の低減および長距離トラック輸送の削減によるドライバー不足への対処を目的に、北海道の道東エリアの一部(釧路・根室地区)で共同物流を行うことで合意したもの。

 各社は現在、札幌市近郊にある製造・物流拠点からトラックによる配送を行っているが、今回の共同物流ではトラック単位に満たない荷物を対象に、4社の製造・物流拠点から札幌貨物ターミナル駅構内の日通の倉庫に商品を集積し、配送先ごとに各社の商品を積み込み配送する。日通は集荷・仕分・積込・配送の各業務を担当する。

 なお、今回の共同配送スキームは原則として、1社1届け先でトラック単位(目安10トン超)にならない荷物を対象とし、各社拠点からのトラック配送は一部継続する。また、各社グループの酒類・飲料会社の荷物も対象となる。

 この取り組みにより、4社では合計で年間のCO2排出量が約330トン(従来比で約28%)削減できると試算。年間で長距離トラック約800台の削減を見込んでいる。

 日通では今後も、業界共通プラットフォームの構築に積極的に対応し、ドライバー不足への対応や環境負荷低減等、社会的責任に取り組む企業を物流面でサポートしていくとコメントしている。

今週掲載トピック一覧

  • ☆ウォッチ(72) 『中国の物流データと経済の動向』
    ☆日中ビジネスワンポイント(163) 『台湾10都市の旅(最終)』
    ☆積み残しの記・余禄(4)『縄梯子』

  • ☆日本通運 5月1日付役員一覧
    ☆ヤマト運輸の長尾社長が労組中央研修会で講演、宅急便地域経営の推進などデリバリー事業構造改革の内容を説明
    ☆物流連、次期会長に田村JR貨物社長
    ☆国交省が第5回物流施策大綱に関する有識者検討会開催、「強い物流」の必要性を前面に押し出した提言骨子案について審議
    ☆セイノーHDが17年3月期決算説明会開催、田口社長がさらなる輸送の安定化・効率化を「粛々と」進める意向示す
    ☆国交省がGマーク事業所のトレーラの基準緩和期間延長などを含む「基準緩和自動車の認定要領等の一部改正等」のパブリックコメント募集中
    ☆社整審道路分科基本政策部会が今後の道路ネットワーク構築のあり方検討、災害時と平常時を問わない輸送の確保目指す
    ☆丸運がグループの長期経営ビジョンと中期経営計画を発表、10年間で20%成長する方針
    ☆3PL協、新会長に和佐見氏を選任 大須賀会長は名誉顧問に
    ☆日通商事、愛媛県愛南漁業協同組合のブランド高級魚「伊予の媛貴海」に高鮮度物流システムを提供
    ☆日通、中国~欧州間クロスボーダー鉄道輸送サービスを拡大
    ☆日通、グループ会社のワンビシアーカイブズと協業で文書電子化サービス「スマートスキャニング」を発売
    ☆日通、マレーシアの倉庫に関するハラール認証取得でハラール一貫輸送体制を実現
    ☆日通が韓国MCCサービスに輸入混載輸送商品追加、世界22ヵ国・56都市から苫小牧へ輸入混載

今週のユソー編集室

  • ▼企業の社会的責任とも訳されるCSR経営。トラック運送業界では、やはりCO2の削減など、環境保全の取り組みに力を入れるケースが多いようだ。
    ▼面白いのはSGホールディングスが毎年開催している自然体験学習で、今年もゴールデンウィーク期間中に滋賀県守山市で開催され、グループ従業員家族が地元住民と一緒に田植えで汗を流したという。田植え体験は今年で11回目になる。
    ▼同社はここ数年、県と協力して琵琶湖に生息する絶滅危惧種「ニゴロブナ」の育成活動にも取り組んでおり、社有林の育成やグループ各社のサービスにカーボンニュートラルを組み合わせるなど、自然保護に対する力の入れようは大したものだ。
    ▼もちろんこうした取り組みに熱心なのは、大手企業ばかりではない。最近の一連の報道で、物流業界の労働力不足に関する社会の認知は進んだ。次は物流業界のCSR活動に対する認知度を、より一層向上させたい。

戻る