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2013年11月11日付 2496号

軽油高騰対策など求め、『業界要望実現する会』開催  全ト協、道運研

要望書を議員に提出 あいさつする星野全ト協会長(中央)

 全ト協(星野良三会長)と道路運送経営研究会(道運研、坂本克己会長)は5日、東京・千代田区の「ザ・キャピトルホテル東急」で軽油価格高騰に伴う経営危機突破に向けた『トラック業界の要望を実現する会』を開催した。自民、公明両党の各トラック議連を中心とする衆参議員を前に業界の窮状を訴え、燃料費を補填する補助金の創設はじめ、軽油引取税の旧暫定税率の廃止、地球温暖化対策税の還付措置、高速道路料金の引き下げなどを要望し、その実現方を強く求めた。自民・公明両党の議員からは年末に向けた税制改正、予算編成にあたり、要望実現に全力を尽くしたいとの決意が示された。

 要望を実現する会には全国から150人の事業者が参集、国会議員は自民党トラック輸送振興議員連盟、公明党トラック問題議員懇話会の議員中心に自民・公明両党の衆参議員150人が出席。開会冒頭、全ト協・星野会長、道運研・坂本会長、全ト協・小幡全ト協税制・交付金委員長から、細田博之自民党トラック議連会長、高木陽介公明党トラック議連幹事長に要望書を手渡した。

 主催者を代表して星野会長があいさつし、軽油高騰で2009年度に比べ業界全体の負担増は年間6400億円にも及び、安定した輸送力確保が非常に困難になっているとし、また災害時の役割も訴えて、補助金の創設等要望事項実現に向け政府与党としての早急な検討方を強く求めた。

 これを受けて、来賓として細田自民党トラック議連会長があいさつし、燃料高騰で甚大な被害をこうむっているのがトラック運送業界であるとして、議連として自民・公明両党が協議して年末までに予算措置を講じていきたいと述べた。そして「皆さま方の業況が上昇気流に乗るように一生懸命頑張ることをお誓い申しあげたい」と語った。

 次いで、国会の関係で欠席した北側一雄公明党トラック議連会長に代って高木トラック議連幹事長があいさつ。災害列島・日本を守っていくためにはなくてはならない業界であり、軽油高騰問題は単なる一業界の問題ではなく、国家の問題であるととらえるべきとして、要望実現のため自民党トラック議連と連携し年末の税制改正、予算編成に向けて全力をあげて取り組んでいきたいと述べた。

 福本秀爾全ト協理事長による要望事項説明のあと、事業者の意見開陳に移り、まず三浦文雄全ト協副会長がアベノミクス効果の恩恵を全く受けておらず、まさにその被害者であるとして、健全な事業を行うことができるよう軽油高騰対策としての補助金を創設して、「われわれを助けてほしい」と訴えた。次いで奈良幹男札幌地区トラック協会長は、軽油引取税が一般財源化されても農業、船舶等は課税免除のままで全く不公平。少なくとも旧暫定税率分17円10銭を撤廃し少しでもトラック運送事業者の負担を軽減するべきだと主張した。

 また加藤浩幸静岡ト協副会長は、石油石炭税の地球温暖化対策のための課税特例について、船舶等と同様に還付措置を早急に適用し、課税の公平性を貫くべきと要請した。馬渡雅敏佐賀ト協会長は、総務省の自動車税制のあり方に関する検討会の報告書に税の営自格差が合理性を欠き、営業用の税率を引き上げ自家用との税率格差を是正すべきと記載してあることを採りあげ、本末転倒であるとして、営自格差縮小の案はなくしてほしいと要望した。

 田中亨滋賀ト協副会長は、サーチャージ導入の要請が荷主企業には行き届いていないとして、国交、経産の両大臣連名で直接荷主企業に対し燃料サーチャージ導入を要請すれば、大きなインパクトを与えることができると提起した。御手洗安愛媛ト協副会長は、財源を生み出し高速道路料金の引き下げを図るべきとして、大口多頻度割引の拡充などを求めた。

 意見交換では、古屋圭司国家公安委員長が発言し、中型運転免許問題に言及して世界のスタンダードをしっかり見るべきであるとし、また高校新卒の就職にネックとなっていることは極めて問題であるとして、有識者検討会で見直しを進めていることを紹介。それには施行規則改正と、法律改正の2つの方法があるとし、関係者の要望をしっかりと聞きながら、事故が増えることのないよう、意見をまとめていくとの考えを示した。

 片山さつき参院議員、赤羽一嘉衆院議員、宮内秀樹衆院議員が要望実現に努める旨意見を述べた。 最後に全員で、坂本道運研会長の発声でシュプレヒコールし、閉会した。

中国・重慶に保税対応の合弁会社設立  香港日通

 香港日通(和田貴志社長)は5日、中国・重慶市西永総合保税区に民生物流との合弁会社「重慶民生日通西永物流有限公司」を設立したと発表した。保税物流に対応した新会社となる。

 民生物流は1925年創業の重慶最大級の物流企業・民生輪船のグループ会社。2010年に日通国際物流(中国)有限公司と戦略的提携契約を締結している。以降、中国内陸地域への事業展開、保税ロジスティクス業務の取り組みを強化している。

 重慶市は中国第4番目の直轄市で、電子・情報産業への産業構造転換を目指しており、近年はパソコンメーカーの生産を請け負うEMS(電子機器の受託生産を行うサービス)企業誘致に成功している。

 西永総合保税区は、重慶市のEMS企業進出地区の一つで、中国で最も機能の完備された税関特殊監督管理エリアとなる。新会社では、外国企業の非居住者在庫管理のほか、同社の保税倉庫への貨物搬入は輸出とみなされるため、中国における増値税の還付手続きが可能となる。

 このほかVMI・ジャストインタイム配送等の生産支援サービス、簡易な流通加工、貨物の中継仕分等の保税ロジスティクス業務を中心としたサービスを提供していく。3270平方メートルの倉庫を備える。

今週掲載トピック一覧

  • ☆ウオッチ『「上海自由貿易試験区」の発足と物流』
    ☆四文字『労連中・長期方針「財政運営」』
    ☆道『規制緩和時代の幕開け⑳』
    ☆人物ウィークリー、国土交通省関東運輸局・門井正則自動車監査指導部長
    ☆日通商事が“食材探しマガジン”カタログ「鮮」発行、巻頭インタビューは陳建一さん

  • ☆埼玉ト協が交通・環境フェア開催、生活を支える働く自動車見て触って体験乗車
    ☆関運局と関東ト協がパートナーシップ構築セミナー、運送契約書面化など荷主の理解不可欠
    ☆国交省、コンテナ搬出入予約制プレ実証実験で待機時間短縮に効果
    ☆日通の萩尾副社長が会見、国内複合事業の利益率大きく改善
    ☆日通と日通キャピタルが国際物流品代金立て替えサービス開始、資金調達の負荷軽減
    ☆ヤマト運輸労組の年末一時金交渉、クール宅急便問題受けて異例の早期妥結に
    ☆全ト協の福本理事長が会見、自動車税制の営自格差縮小「ゆゆしき問題」
    ☆近鉄エクスプレスの石崎社長が会見、海上貨物が順調に
    ☆日立物流、茨城県つくば市内に大型物流センター建設へ
    ☆千葉ト協、交通事故・労災防止へ大会とセミナー開催
    ☆日貨協連、WebKIT活用へ全国研修・交流会開く
    ☆日通の上半期国際事業本部実績、国内航空が好調に推移
    ☆国交省の田端自動車局長が会見、トラック業界の要望に対し補正予算による措置「要求事案として適切」  
    ☆物流各社の2014年3月期第2四半期連結決算

今週のユソー編集室

  • ▼2020年までの新たな温暖化ガス削減目標について、政府は2005年比3.8%減に設定する方針を固めたという。京都議定書の基準年である1990年比でみると、3%の増になる。
    ▼京都議定書で掲げていた当初の目標は、「2012年で1990年比6%削減」だったことからみると、諸外国に地球温暖化防止へ取り組む日本の姿勢は大きく後退した、と受け止められても仕方がないだろう。
    ▼背景には、震災後の国内世論を踏まえて、原子力発電所の稼働をゼロと見込んだことがあるという。震災から2年半が経過しても、なお周囲に脅威を与える福島第一原発の現状を考え、なおかつ現実的な目標数値を設定しようとすれば、こうした結果になるのはやむを得ないのかもしれない。
    ▼ただ、「温暖化対策の優等生」とされた物流業界の観点からすれば、これまでの間の努力が報われなかったようにも思え、なんともやるせない気持ちになってしまう。

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