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2014年10月13日付 2537号

事故防止対策や旧暫定税率撤廃求める決議も  全ト協が事業者大会

事業者大会の模様 あいさつする星野会長

 全日本トラック協会(星野良三会長)は「トラックの日」の9日、福岡市中央区のヒルトン福岡シーホークで第19回全国トラック運送事業者大会を開催。燃料価格高騰に苦しむ業界の切実な現状を訴え、軽油引取税の旧暫定税率の撤廃などを盛り込んだ「決議」に加え、交通事故が増加傾向にあることを踏まえた「事故防止対策の徹底に係る大会決議」を採択した。また交通安全対策、人材確保の2テーマによる分科会討議が行われ、各社の先進的な取り組みが紹介された。全国から1500人を超える事業者らが参加した。

 全体会議冒頭の開催地ブロックの原重則九州トラック協会長あいさつに続き、星野会長があいさつ。
 星野会長は前日に飯塚市でトラックの森づくり記念植樹式を行ったことを紹介し、植樹を通じ地球温暖化防止や環境保全の意識向上に業界として貢献していきたいとの決意を述べた。
 そして、近年自然災害が頻発しているとし、7月末に竣工した全日本トラック総合会館について、大規模災害に国や関係機関と迅速に連携が取れるよう、中央の防災司令塔としての機能をいかんなく発揮していきたいと述べた。また燃料価格の高騰が続き、7月には軽油価格がインタンクで126円を超えたとし、経済活動を支える多くのトラック運送事業者が存廃の危機に直面し、安定した輸送力を確保していくことが困難になっていると訴えた。
 こうした状況を受けて、7月に燃料高騰対策本部を開催し、燃料高騰対策の緊急要望の実施を決定し、また、署名活動も決め、燃料高騰に苦しむトラック運送業界に係る署名活動を全国一斉に実施し、目標数の2倍となる200万人余りの署名を集めることができたことを紹介した。今後は自らが先頭に立って、軽油引取税の旧暫定税率廃止と燃料対策の早急な実施を政府や自民党に対し強く訴えていくことを約束した。

 最後に、今大会は燃料価格高騰、高速道路料金、労働力不足などの諸課題に業界が一丸となって、積極的に取り組んでいくため、一致結束する絶好の機会であると訴えトラック運送、業界の明るい未来を自らの手で切り開く英知と総力を結集し、ともに頑張っていこうと呼び掛けた。

 次の分科会は、「トラック業界の交通安全対策の推進について」と「トラック業界の人材確保および育成について」のテーマで、それぞれ二つの分科会に分かれ討議。パネルディスカッション方式で行われ、事業者の取り組みなどの発表や意見開陳が行われた。この中で、人材確保の分科会では自動車科・自動車専攻科を設置している福岡県の希望が丘高等学校の自動車科科長から、生徒、保護者や教育者からのトラック業界に対するイメージの紹介やGマークの強力なPRなどの提案が行われ、注目された。

 分科会終了後、「鉄道の再生~JR九州の経営を通して~」をテーマに石原進九州旅客鉄道相談役が記念講演した。

 全体会再開後は、二つの大会決議を拍手で採択。
 
 一つは当面する諸課題に勇気と英断をもって、果敢に対応していくとし次の8項目を決議。◎軽油引取税の旧暫定税率の撤廃◎軽油高騰対策の推進ならびに燃料サーチャージの導入促進◎高速道路通行料金の引き下げおよび割引制度の拡充◎参入基準の厳格化等規制緩和見直しの促進◎原価管理に基づく適正運賃収受の促進◎事業後継者の育成と少子高齢化に対応した労働力の確保および人材育成の促進◎適正化事業の推進による法令遵守の徹底◎交通・労災事故撲滅および環境・省エネ対策の積極的な推進。

 あと一つは事故防止対策の徹底の決議で、最近は事業用トラックによる交通事故が増加傾向にあることから、業界をあげてさらなる安全対策の徹底を図る必要があるとして、次の2項目を宣言した。
 ◎各都道府県別の車両1万台当たり死亡事故件数を「2・0」以内とする目標に向け、業界あげた安全対策の取り組みを推進する。
 ◎全てのトラック運送事業者が「安全を最優先する」という経営理念と、「絶対に事故を起こさせない」という信念を持ち、事故防止を図る。

 来賓あいさつは小川洋福岡県知事と太田明宏国土交通大臣(田端浩自動車局長代読)の2氏。全員によるガンバローコールなどを経て閉会。次回事業者大会は来年10月1日に金沢市で開催する予定。

東海道線不通対策でトラック代行輸送や臨時貨物列車運転  JR貨物

 台風18号で東海道線の一部が土砂流入により不通となったことに伴い、JR貨物(田村修二社長)は現在、トラック代行輸送と迂回(うかい)臨時列車の運転などを行っている。不通となったのは東海道線の由比駅~興津駅間で、JR東海では10月20日ごろの開通を見込んでいる。

 この区間を走行する貨物列車は1日当たり約90本で、主な輸送品目は宅配便等の積合せ貨物、書籍・雑誌、紙・パルプ、清涼飲料水等の食料工業品、化学工業品、自動車部品などとなっている。日本の大動脈ということもあり、12フィートコンテナ換算の提供輸送力は、全国の提供輸送力の半分に当たる約1万1千個にものぼっている。
 JR貨物ではこれを受けて、当面の対策として①トラック代行輸送②迂回臨時列車の運転③定期列車の接続―を実施している。

 トラック代行については、東京貨タ駅~静岡貨物駅間で片道最大12フィートコンテナ換算200個の輸送を実施。静岡貨物駅~福岡貨タ駅間の臨時列車に接続することで、関東~九州間の輸送力の一部を確保している。
 また、東京貨タ駅~西浜松駅間でも片道最大12フィートコンテナ換算50個のトラック代行輸送を実施。西浜松駅~福岡貨タ駅および西浜松駅~広島貨タ駅の列車に接続することで、関東~九州および広島向け輸送力を確保した。

 迂回臨時列車については、次の三つの区間で運転を行っている。
 ◎東京貨タ駅~福岡貨タ駅間(上越・日本海縦貫、山陽線経由)1往復、12フィートコンテナ換算100個。
 東京午前11時10分発~福岡翌日午後6時11分着、福岡午前0時22分発~東京翌日午前6時28分着。
 ◎名古屋貨タ駅~札幌貨タ駅間(日本海縦貫線経由)1往復、12フィートコンテナ換算100個。名古屋午後9時42分発~札幌翌々日午前5時31分着、札幌午前0時37分発~名古屋翌日午後2時18分着。
 ◎東京貨タ駅~大阪貨タ駅間(中央東線・中央西線経由)1往復、12フィートコンテナ換算65個。東京午後5時15分発~大阪翌々日午前7時5分着、大阪午後7時24分発~東京翌々日午前6時50分着。

 定期列車の接続では、隅田川駅~金沢貨タ駅間と大阪貨タ駅~金沢貨タ駅間の列車を金沢貨タ駅で接続することにより、関東~関西間の輸送力の一部を確保した。片道輸送力は12フィートコンテナ換算30個。隅田川午後3時52分発~大阪翌々日午前5時17分着、大阪午後1時33分発~隅田川翌々日午前11時37分着。

 このほか関西~九州間、関西~広島・山口間、静岡~名古屋間、札幌~沼津・富士間で区間列車を運転し、トラック代行輸送や迂回列車に接続している。

 JR貨物ではこれらにより、最大で1日当たり往復1990個の輸送力を確保するとしているが、通常の提供輸送力の18%程度にとどまっていることから、引き続きトラック代行輸送および迂回臨時列車の拡大を検討している。

今週掲載トピック一覧

  • ☆ウオッチ『中国の「物流業発展中長期企画(2014~2020年)」』
    ☆四文字『戦後の快挙「新規開業」』
    ☆道『ドルとオイルショック、車社会』(12)
    ☆人物ウィークリー、国土交通省・藤田耕三鉄道局長

  • ☆日本郵便、1日付で自動車整備と物販の子会社2社営業開始
    ☆交運労協が定期総会、初の専従議長に私鉄総連の住野氏
    ☆SBSロジコム、横浜に建設する物流センターが横浜港で初の地域再生支援制度認定
    ☆東ト協、「トラックの日」で本部イベント開催
    ☆日通労連が定期大会、グループシナジー効果による利益の再配分求める
    ☆ヤマト労連が定期大会、グループ各社の制度格差是正求める
    ☆通運連盟、流通経済大学で寄付講座開始
    ☆鉄道功労者の大臣表彰、JR貨物から4人
    ☆全ト協の9月WebKIT成約運賃指数、117記録し今年度最も高い数値に
    ☆国交省、モーダルシフト等推進事業8件を認定
    ☆日本通運、舞鶴国際埠頭倉庫が8日に竣工式
    ☆JR貨物、ダイワコーポレーションに賃貸される東京貨タの物流施設「新C2棟」の竣工式

今週のユソー編集室

  • ▼顕在化しつつある労働力不足に不安を隠せないトラック運送業界。その将来像を確立するため、行政をも巻き込んで、女性登用や高齢者雇用といった打開策が検討されている。
    ▼これらの策はそれなりに成果を上げるだろうが、将来的な不安を払い去るほどの効果が得られるのかと言われれば、正直そこまでは期待できないように思う。やはり根本的な解決策、すなわち子供を増やす取り組みをさらに強化してもらいたい。
    ▼内閣府の調査によれば、少子化社会対策基本法に基づく大綱の達成度が低いとされたのは、「仕事と家庭が両立できる職場環境の実現が可能な社会」など、仕事に関するものが目立つ。
    ▼ならば、政府と企業が一体となって、働きながら子育てができる環境を強力に整備してもらうしかない。短期的には利益に結びつかないかもしれないが、国内市場の再育成や日本ブランドの維持ができれば、社会全体で大きなリターンが得られるはずだ。

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