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2014年12月1日付 2544号

物流KPIの導入促進に向けて検討会を立ち上げ  国交省

 物流業でのKPI導入を促進―。
 国土交通省は、メーカーなど荷主サイドで導入が進んでいるKPI(Key Performance Indicator=重要業績評価指標)の物流業での導入促進を図るため、「物流事業者におけるKPI導入のあり方に関する検討会」を設置。11月27日に東京都千代田区の霞が関ビルで第1回会合を開き、物流業ではメーカーなどに比べKPI導入が遅れている現状を報告するとともに、日本ロジスティクスシステム協会(JILS)会員の物流事業者400社を対象にKPI活用実態に関するアンケート調査を実施することを決めた。

 KPIは、コストや品質、組織などの管理・業務プロセスを「見える化」し、「コミュニケーション」を通じて組織内に共通認識を醸成、「評価」によって担当者に解決を促して業務改善などにつなげる手法に用いる指標で、荷主企業などでは一般化しつつある。

 JILSが会員を対象に行ったKPI導入に関する調査では、荷主では約8割が導入しているが、物流事業者を含む物流コスト研究会参加企業では5割を下回っている。一方で、荷主の8割弱がアウトソーシング先にKPIなどを用いた定量的な管理運営や報告を望んでおり、物流事業者は自社の業務改善のみならず、荷主ニーズへの対応の観点からもKPI導入を検討する場面が今後増加することが予想される。

 こうした状況に対し、物流事業者のKPI導入に向けた実態把握や課題抽出、それらを踏まえたパンフレット作成などを目的に検討会を立ち上げたもので、委員は、林克彦流通経済大教授を座長に、荷主企業や物流企業担当者、学識経験者などで構成されている。

 物流業でのKPIの『利用目的』では①物流事業者の経営改善②自社のオペレーション改善③荷主への報告など企業間連携④社会的観点での評価―を例に挙げ『評価の視点』では、「財務」「コスト・価格」「品質・サービスレベル」「人材・学習」「技術・革新性」「安全・リスク対策」「環境」「企業間連携」を例として示している。これらの『利用目的』と『評価の視点』を組み合わせた範囲でKPI設定を行うことを想定するが、詳細な指標などについての設定は各事業者が行うこととし、検討会では概念の整理を行うにとどめる。

 検討を進めるに当たって、JILS会員の物流事業者にKPIの導入状況や活用に当たっての課題点、導入しない理由などについてのアンケートを来年1月に実施する予定。

 第1回会合では、「物流事業者がKPIを導入することで、荷主と“共通言語”を持つことができる」などの意見が出る一方、「荷主が使い方を間違えると、物流事業者を“切る”材料になりかねない」と懸念を示す意見も出された。検討会は、年明けに第2回会合を開き、年度末までに第3回会合を開いて取りまとめを行い、パンフレット作成や講習会での説明などにつなげる方針。なお、来年度以降については、関連予算の要求を行っていないため未定としている。

モーダルシフト優良事業者公表制度を「表彰」制度に改定  物流連

 日本物流団体連合会(川合正矩会長)は、11月26日に開いた理事会で、2003年度以降継続してきた「モーダルシフト取り組み優良事業者公表制度」を、“表彰”を主軸とした新制度「モーダルシフト優良事業者公表・表彰制度」に改めることを決めた。

 新制度では、これまでの公表基準よりも多様化した表彰基準を設け、応募する物流事業者から表彰対象を選定し、最優良事業者賞(大賞)のほか、表彰基準ごとに、モーダルシフト実行賞、継続賞、有効活用賞など、複数の部門賞を授与する。各賞に選定されなかった応募事業者も、表彰基準に該当するものは、モーダルシフトに積極的に取り組んでいる優良事業者として公表する。

 近年、労働力不足が深刻化する中で、モーダルシフトの重要性も高まっていることから、トラック事業者やフォワーダーも対象とし、より多くのモーダルシフトへの取り組みを積極的に顕彰していくことが、新制度の目的。募集は、きょう1日から開始し、来年3月末に表彰事業者等を公表する予定としている。

今週掲載トピック一覧

  • ☆特集、日本通運中部警送支店年末防犯訓練
    ☆物流にとってアベノミクス『吉』か『凶』か(29)
    ☆四文字『昭和の大事件「行政改革」』
    ☆道『米ドルとオイルショック、車社会』(16)

  • ☆国交省自動車事故調、第2回会合で報告書案の初審議
    ☆横浜市、基幹航路の拡大へ国内初の補助制度
    ☆物流連が報告書、第1回物流業界インターンシップは好評
    ☆厚労省、トラック運転手の過重労働・労働条件相談事例公表
    ☆国交省羽尾物流審議官が定例会見、物流業の労働力不足に対するアクションプラン骨子案提示へ
    ☆全ト協、テレビ会議システムを利用した初の講習会を開催
    ☆ヤマト運輸、滋賀県と包括的連携協定しPRに協力
    ☆ディー・ティーHD、タイに冷凍トラックボディー製造の合弁会社設立へ
    ☆警視庁、高速道で12月末まで安全啓発活動実施
    ☆損害保険ジャパン日本興亜、海外進出企業対象にASEAN地域の物流を学ぶセミナー開催
    ☆経産省・国交省、海コンのラウンドユース実現に向けて準備委開催
    ☆ヤマトシステム開発、地方自治体向けの利用券運営支援サービス開始

今週のユソー編集室

  • ▼12月に入り、今年も残すところあとわずかとなった。近年は街のライトップも盛んに行われ、クリスマスに向けて華やかな雰囲気を演出している。
    ▼物価は上がれど給料は上がらず、先行きの景況感は不透明。なかなか未来に希望を見出しにくい日本の状況だが、せめてこの時期だけは街の明るさに身をまかせ、楽しい気分に浸りたいものだ。
    ▼物流の世界でも、年末の繁忙期に突入する。振り返ってみれば昨年の今ごろは、消費税増税を控えて拡大する需要と、顕在化する現場の労働力不足の間で、各社とも戦力の手配に頭を悩ませた時期だったかもしれない。今年もそうした状況が、再現されることになるのだろうか。
    ▼本紙でも今号まで3週にわたり特集を組んでいるが、ボーナスシーズンが到来し警備輸送業務ではとりわけ緊張感の高まる時期でもある。物流に携わるすべての人々が、心身の健康を保ちながら、安全にも心を配り、笑顔で年末を迎えたい。

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