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2015年1月19日付 2549号

旧型DPF装着車の代替促進補助を創設、人材確保・育成も  2015年度予算案決まる

 政府は14日、総額96兆3420億円の2015年度予算案を閣議決定した。国土交通省の一般会計予算は5兆7887億円で14年度並み。自動車局関係の一般会計は24億900万円で、新規事業として「自動車運送事業での人材の確保・育成への取り組み」や「事業用自動車総合安全情報の分析機能強化による事故の未然防止」が認められたほか、エネルギー対策特別会計(エネ特)を活用した環境省との連携事業として、中小トラック事業者の新長期規制適合車からポスト新長期規制適合車両への代替を促進するための補助制度を新たに盛り込んだ。

 自動車局関係では、自動車運送事業などでの人材の確保・育成に向けた取り組みとして新規に8100万円が認められたほか、事業用自動車総合安全情報の分析機能強化に9100万円を計上。
 人材の確保・育成については、若年者雇用の先駆的モデルケースの創出やガイドライン作成などを行うとともに、ITを活用した中継輸送実験を行い、不規則な就業形態や長時間労働の解消に向けた検討を行う。安全情報の分析機能強化については、事業用自動車に関して行政が保有する監査・処分履歴や重大事故関連情報などの分析機能を強化した上で、運送事業者やコンサルティング会社、保険会社への情報提供などを通じて事故防止対策の強化を図る。

 安全総合対策(予算額10億円)では、14年度同様に、①先進安全自動車(ASV)②過労運転防止のための先進的な取り組みに対する支援③デジタル式運行記録計の導入支援④社内安全教育の実施に対する支援―を実施するが、ASVについてはトラックの対象を、車両総重量「8トン超」から「3.5トン超」に引き下げる。CNG・ハイブリッドトラックなどに補助を行う環境対応車普及促進対策は14年度比約9%減の4億8100万円。

 このほか、14年度補正予算で中小トラックの燃料費対策(補正予算関連は2面参照)を実施する。

 エネ特活用で旧型車を代替

 エネ特を活用した連携事業では、資源エネルギー庁との連携で、「省エネルギー型ロジスティクス等推進事業費補助金」と「国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証実験」を、環境省との連携で「物流の低炭素化促進事業」「中小トラック運送業者における低炭素化推進事業」などを継続して実施するが、「省エネルギー型ロジスティクス等推進事業費補助金」では、14年度の内容から一部変更。エコタイヤ導入補助に代わり、中小トラック事業者がポスト新長期規制適合トラックに代替する際に一部経費補助を行う制度を創設する。

 これは、新長期規制適合トラックが装着する旧型DPFでは手動燃焼が必要なため運行の燃費改善がほぼ不可能な状況を踏まえ、手動燃焼が不要なポスト新長期規制適合車への移行促進が目的。補助額や対象事業者などについては今後決定する。

 自動車局の組織・定員関係は、本省では環境政策課専門官など5人、地方では監査体制強化に向けた運輸支局の運輸企画専門官10人をはじめとする14人が認められ、合計で19人の増員。なお、税制改正要望については、昨年末に決定された15年度税制改正大綱の内容のとおりとなっている。

 総合政策局のうち、物流審議官関連では、新規事業である「地域の持続可能な物流ネットワーク構築」や「コンテナラウンドユース促進」「物流資材のリターナブルユース」などを盛り込んだ「物流産業イノベーション推進」に14年度比63%増の4100万円を計上。

 地域の持続可能な物流ネットワーク構築では、過疎地での物流事業者とNPOの協働による宅配サービスの維持・改善などの輸送システム構築に向け、全国2~3ヵ所でモデル事業を実施する計画。コンテナラウンドユースについては、国際海上コンテナの陸上輸送での空コンテナの輸送距離削減に向けたコンテナの往復利用促進のための課題検討などを行う。
 物流資材のリターナブルユースについては、日中韓の3ヵ国によるワークショップを実施して課題検証を行うとともに、日韓間で実証実験を行う。物流のグリーン化では、モーダルシフト等推進事業に3800万円を計上したほか、環境省との連携によるエネ特活用のモーダルシフト促進施策を73億円の内数で実施する。

 また、環境省との連携による新規事業として、国際海上コンテナの鉄道利用促進に向け、40フィート背高コンテナに対応した低床貨車を2両作製し、鉄道輸送の実証実験を行う。実施区間については現段階では未定。

トナミ運輸と第一貨物が中京・東海~関東向けで共同運行開始

 トナミ運輸(綿貫勝介社長)と第一貨物(武藤幸規社長)は13日、各社の富士支店および小牧支店において、中京・東海地区~関東間の共同運行を開始した。両社の自社幹線便の共同化促進により、幹線運行・効率化の進展を図ることを目的としたもので、関東向けの自社便各1便を共同運行化する。

 1便は、第一貨物富士支店の自社便で、第一貨物富士支店を経由した後、トナミ運輸富士支店で5の関東向け貨物を積載。もう1便は、トナミ運輸小牧支店の自社便でトナミ運輸の小牧支店を経由した後、第一貨物小牧支店で5の関東向け貨物を積載する。

 両社では2012年9月に、輸送の良質なサービスと運行機能の効率化を目的として、第一貨物と久留米運送、トナミ運輸3社の合弁出資による輸送共同運航会社「ジャパン・トランズ・ライン」を設立し、3社の関東~関西間の幹線運行の一部を行っていた。今後、土・日曜日の運行効率化に向け、引き続き共同化の拡大を検討するほか、部分的制度の共用や共同配達の具体化も行っていく考え。

今週掲載トピック一覧

  • ☆ウオッチ『新常態(ニュー・ノーマル)時代の中国~習国家主席の新年あいさつから2015年への展望』
    ☆四文字『ネックの「燃料問題」』
    ☆道『米ドルとオイルショック、車社会』(18)
    ☆日中ビジネスワンポイント『「羊」にまつわる祝福の言葉やことわざ』
    ☆物流業界の新年会

  • ☆国交省・田端自動車局長、トラックの新規許可で手続き厳格化へ今月中にパブコメ
    ☆国交省の14年度補正予算決定、エネルギーコスト削減でインタンク補助盛り込む
    ☆セイノーHDが新年互礼会、プロの仕事で邁進
    ☆全ト協、12月WebKIT成約運賃指数が3月に次ぐ高い指数に
    ☆日通、エボラ出血熱感染地域に個人防護具を空輸
    ☆カゴメがサスティナビリティレポート、物流でのCO2排出量を5ヵ年で2.9%削減
    ☆JR貨物、東海道線不通時の輸送力確保へ各種の施策を検討
    ☆日本郵便、楽天と協力して郵便局内にネット通販専用ロッカー
    ☆三菱倉庫、新保管・配送センターシステムを全国44倉庫に導入
    ☆YLC、ジョンソン&ジョンソンの物流センター運用開始へ
    ☆JR貨物、柏井マーケティングセンター所長が会見、商品力の向上と通運との連携強化目指す
    ☆社整審国土幹線部会、大型車の走行に関し一般道課金制度検討へ
    ☆国交省、物流業のKPI導入で今月中にアンケート調査実施
    ☆JILS・西田会長が会見、海外での人材育成急務
    ☆米国ヤマト運輸、メキシコに現地法人設立

今週のユソー編集室

  • ▼14日にNHKの「クローズアップ現代」で、「モノが運べない!?“物流危機”」と題した番組が放映され、業界関係者からも大きな注目を集めた。
    ▼トラック運送業界を覆う労働力不足問題を真正面から採り上げ、他産業と比較して低位に置かれている労働環境にありながら、多様化する顧客ニーズに応えるため奮闘する、業界の実情を浮き彫りにした、好企画ではなかっただろうか。
    ▼困惑する荷主や進展するモーダルシフトなど、業界を取り巻く環境が幅広く紹介されたのは良かったと思うのだが、正直なところ消化不良の感も否めず、「30分ではとても足りない、せめて1時間番組で」と思う。
    ▼NHKでは、以前も過酷な長距離ドライバーの労働環境に焦点を当てたドキュメンタリーを放映したことがある。労働環境の改善は急務であり、今後もこうした番組が放映されることを望みたい。もちろん本紙でも、全力で世にアピールしていくつもりである。

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