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2015年2月2日付 2551号

運転者教育強化へ素案了承、初任運転者指導で実車実技義務付けに  国交省

 国土交通省は1月28日、東京都千代田区の経済産業省別館で「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会」の今年度第2回会合を開き、今国会に提出予定の改正道路交通法で創設される見通しとなっている準中型運転免許制度に関連したトラック運送業での運転者教育対策について議論。現行11項目となっている一般運転者に対する指導・監督項目に「交通事故統計を用いた教育」と「緊急時における適切な対応」を加え13項目とすることや、初任運転者への実車による実技義務付けなどを盛り込んだ運転者教育対策に関する方向性の素案を了承した。

 素案では、現在11項目となっている一般運転者に対する指導・監督の項目について、「交通事故統計を用いた教育」と「緊急時における適切な対応」の2項目を追加するとともに、現行4項目となっている初任運転者に対する指導についても一般運転者のものと項目を統一する。

 「交通事故統計を用いた教育」では、追突など大型車に多い事故に関して、発生状況などについての統計を示し、運転者の安全意識向上につなげる。

 「緊急時における適切な対応」では、これまで事故の未然防止に主眼が置かれていた指導・監督項目に、事故発生時など緊急時の対応を加えることで、事故被害の軽減などを狙う。

 また、これまでも義務化されていた「トラックの運行の安全を確保するために遵守すべき基本事項」について、改善基準告示をはじめとする労働時間や薬物防止など、事業者による教育が徹底されていない事項の明文化を図る。これらの指導・監督については、1年間で実施することとし、事業者に教育計画の策定などを求める。新たな指導・監督の指針(告示)は、準中型運転免許制度のスタートに合わせて施行する計画で、2017年とみられる。

「人財」最重要課題に、「新年の物流を語る会」で正副会長らが展望語る 物流連

各業界のトップが展望を語った

 日本物流団体連合会(川合正矩会長)は1月28日、東京都千代田区平河町の海運クラブで「新年の物流を語る会」を開催、正副会長をはじめとする幹部がそれぞれ業界の展望等について考えを述べた。各業界においても労働力確保問題が顕在化し、労働環境の改善・整備等、「人財」を最重要課題の一つにあげる発言が今年の特徴となった。

 冒頭あいさつで川合会長は、少子高齢化に伴う労働力不足問題は社会的課題であり、昨年9月には学生を対象とした物流業界インターンシップ、今月には業界合同セミナーを開催するなど、物流連として官民連携の取り組みを実施してきたことを報告した上で、今後は教育機関、政府との連携を含めた「産学官の和」に広げた施策を推進していく必要があるとし、過疎地域の持続可能な物流システム、荷主も含めた物流効率化対策、東京五輪に向けての物流対策、業界情報の発信力等に取り組む姿勢を強調した。
 引き続き各副会長、委員が要旨次のとおり発言した(発言順)。

 星野良三全日本トラック協会会長
 昨年は燃料高騰に苦しむ業界の声を発信するため、全国一斉の署名活動を展開し、207万人もの協力を得て政府・与党への要望活動を行った。14年度補正予算においても高速道路料金割引の延長をはじめ、業界の要望が盛り込まれた。また、啓発カードの配布等交通事故防止対策に注力し、事故件数が減少する成果も上がっており、引き続き取り組みを強化していく。昨年竣工した全日本トラック総合会館は災害対策基本法に基づく指定機関として追加指定を受けており、万一に備えたライフライン確保に十分な体制で臨みたい。
 今年は消費者保護の観点から創設した引越優良事業者認定制度がスタートする。制度の周知を図っていきたい。また、準中型免許への対応を含め、ドライバー確保対策に尽力していく。トラック業界は事業者数6万3千社を数え、今後も共生による持続可能な発展を目指したいと考えている。

 田村修二JR貨物社長
 昨年は東海道線をはじめ台風等の災害、消費税増税の影響を受けながらも、輸送実績は前年水準を上回る業績で推移できた。
 一方で、貨物鉄道部門の黒字化というミッションを実現するため、営業体制強化に向けた組織改正実施をはじめ、休日運行、異業種専用列車の運転等に取り組んだ。収支改善に向け列車別分析等にも取り組んでいる。輸送枠については関西、九州からの要望が多く、3月のダイヤ改正に向け、できる限り応えられるよう努力したい。輸送容量はまだ十分に余力があると認識しており、BCP(事業継続計画)の観点を踏まえ、営業拡大につなげていきたい。今後の課題としては、整備新幹線があげられ、輸送コスト削減を踏まえた取り組みを行っていきたい。

 上野孝日本内航海運組合総連合会会長
 貨物動向は貨物船については回復基調にある一方、タンカーは低迷を続け、明るい兆しを探すのが難しい状況。
 内航海運業界は老朽船を高齢の船員が看る「老老介護」状態。建造は景気動向で解決される面はあるが、人材確保問題は社会的要素。いわゆる海事試験による有資格が必要となる船員確保は一段ハードルが高くなる。専門養成機関は充実しているが、景気停滞から企業が受け入れてこられなかった事情があり、今年は船員確保対策の元年となるよう願っている。

 入谷泰生日本長距離フェリー協会会長
 昨年は台風等天候不順の影響を受け実績は減少基調となった。
 今年は上向く期待を抱いている。一つは原油安、もう一つは新造船の投入計画が複数あがっていること。輸送枠確保でご迷惑をかけていることを解消できるものと考えている。大災害時の補完的機能の確立の観点からも貢献できると思う。
 長距離フェリー業界も労働力不足問題が顕在化しており、今後、労働環境の改善に取り組んでいく方針。

 朝倉次郎日本船主協会会長
 昨年のこの場で、「明るい兆しが戻ってくるのでは」と希望的観測を述べたが、実際は、薄日はさしたが、まだら模様であった。ばら積みは「真冬」、コンテナは「そこそこ」、タンカーは「回復の兆し」だった。
 この業界は春が短く、冬がすぐ来て、しかも長い。こうした実態を理解してもらい、造船時に適用される特別償却制度の継続を望んでいる。

 岡田晃全日本空輸常務取締役執行役員
 航空貨物は、昨年プラス基調に転じ、今年も継続していくものと期待している。明るいトピックしては、羽田空港の発着枠が拡大したことに伴い、「貨物上屋らしい」風景が見られるようになったこと。
 今年は原油安、米国経済の回復により自動車および部品、Eコマース関連の伸びが期待される。業界動向としては、アライアンスの進展、送り状等の電子化の取り組みがあげられる。

 中村次郎国際フレイトフォワーダーズ協会会長・航空貨物運送協会会長
 国際航空貨物業界は重量ベースで10%増の水準で伸びている。米国経済の回復が大きな要因にあげられ、米国西海岸の港湾ストなど、緊急性のあるスポット貨物が寄与したものと見ている。国際複合輸送も14%増の水準で伸長を続け、昨年初めて取扱量が1億を上回った。
 今年の国際物流を展望すると、一つ目はまだまだグローバル化は進み、ブロック化(地産地消)が進むということ。二つ目は製造拠点を含め「日本回帰」が進むこと。三つ目はテロ対策のセキュリティ強化が一層強まるものと見ている。

 安部正一日本倉庫協会会長
 昨年は消費増税前の駆け込み需要の反動から、在庫が増え、入出庫が減少する傾向が続いた。直近では回転率が上昇し、改善の兆しが見えつつある。
 協会としては、引き続き公共性を最重点とした活動を行っていく方針で、教育・研修事業の体系化等内容の拡充と充実、倉庫自主監査制度のDVD製作による普及・浸透、大規模災害時の緊急貨物輸送対策に向けたBCP策定の推進、そして物効法の認定支援活動を展開していく方針。

 川合全国通運連盟会長
 昨年は雪害、集中豪雨等天災に悩まされたが、プラス基調を確保しており、潮目の変化というか、通運事業の拡大の可能性を実感した。
 定時性、大量輸送という良いところを伸ばし、「お試しキャンペーン」、コンテナ補助事業、輸送障害対策、養生資材助成、省労働化の検討、認知度向上の取り組み等を展開していく。

今週掲載トピック一覧

  • ☆運輸・交通両労連トップに聞く『2015春闘展望』
    ☆物流にとってアベノミクス『吉』か『凶』か(32)

  • ☆国交省、物流審議官部門に物流効率化目指した最新技術の研究会設置
    ☆日倉協、中小倉庫業の経営者セミナー開催
    ☆通販協がリアル書店とネット書店比較アンケート調査、高齢者ほどネットで購入
    ☆建交労が中央労使懇、取引動向アンケートで「運賃上がった」15%に
    ☆全流協の新年会、瀬戸会長が今年の課題に安全、人手不足、災害対策の3点あげる
    ☆国交省、基準2倍以上の重量超過は”一発”告発へ
    ☆運輸労連が賃金等実態調査、ドライバーの高齢化進み他産業との格差持続
    ☆国交省、自動車情報の利活用で将来ビジョン策定
    ☆SBSHD、安全スローガン決定
    ☆首都高・東京都、3月7日の大橋JCT~大井JCT間開業で物流機能強化へ
    ☆運輸労連が中央委で春闘方針決定、志高く掲げ交渉へ
    ☆ヤマト運輸・ANA cargo・愛媛県、県産品の流通拡大へ3者が連携協定
    ☆経産省、食品ロスの削減へ次世代物流システム構築
    ☆日本路線トラック連盟、臨時社員総会開き3月末での解散決議
    ☆国交省、大型車の一般道課金など道路活用基本方針を公表
    ☆SBSグループ、Gマーク認定事業所の取得割合が80%に
    ☆物流界の新年会

今週のユソー編集室

  • ▼ヤマト運輸は1月22日、今年3月末でクロネコメール便を廃止すると発表した。信書の範囲が曖昧で利用者が意図せず郵便法を犯してしまう「信書リスク」を回避するためだという。
    ▼これに対して高市早苗総務大臣は同23日「信書の定義は明確だ」と反論した。なるほど信書の定義は文言としては明確なのだが、実際の運用面で判断するのが難しいことも事実だ。
    ▼ヤマト運輸が代替商品を用意しながら、あえて「廃止」という発表をしたのは、問題提起の意図があったのは明らかだ。信書改革の議論の中で、同社が提案した「信書への外形基準の導入」は、事実上黙殺されてしまった。
    ▼利用者保護や利便性の向上という観点からみても「信書の定義を誰でも判断できるようにしよう」という同社の主張が一顧だにされないのは、不可解というよりほかにない。悪意もないのに検挙されてしまうという事態を防ぐためにも、もう一度議論する必要性がある。

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