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2015年6月1日付 2566号

物流政策立案に向けて三つの小委員会を設置  社整審・交政審

 社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会と交通政策審議会交通体系分科会物流部会は、物流の課題点や対応策などに関する具体的な検討を行うため、物流に関する小委員会を設置。5月29日に東京都千代田区の国土交通省で第1回合同会議を開き、荷主・物流関係者からモーダルシフトやトラック効率化などに関するヒアリングを行った。この中で、荷主としてプレゼンテーションを行ったイオングローバルSCM事業本部の坪井康彦運営管理部部長は、メーカーなど異業種との取り組みにより鉄道貨物でのコンテナ輸送が6年間で15倍に増えたことを明らかにした。

 社整審と交政審は、太田昭宏国土交通大臣から今後の物流政策の基本的な方向性に関する諮問を受けたことを踏まえ、交政審に「物流部会」を設置、4月30日に社整審道路分科会基本政策部会と第1回合同会議を開いて、「ワンステージ上」の検討をスタートさせた。

 小委員会は、今後の物流政策の基本的方向性に関するより具体的な検討を行うため設置されたもので、社整審道路分科会基本政策部会に「物流小委員会」、交整審交通体系分科会物流部会に「物流体系小委員会」と「物流サービス小委員会」が置かれた。「物流体系小委員会」は、中期的な物流政策、広域物流、災害対応、新技術などを扱い、「物流サービス小委員会」では、地域物流を中心に検討を行う。「物流小委員会」は、「物流体系小委員会」と「物流サービス小委員会」と合同で、全てのテーマを扱う。

 5月29日に開かれた会議は、「物流小委員会」と「物流体系小委員会」の合同開催で、両小委員会とも根本敏則一橋大大学院教授が座長を務めた。
 会議の冒頭、国交省の羽尾一郎物流審議官は、4月の合同会議では、モード間の連携やデータに基づく政策立案、民間の協調体制構築など幅広い意見が出たことを説明した上で、「物流を取り巻く状況が大きく変動する中、物流の公共性・社会性を認識しながら、物流政策の立案を行う必要性を感じた」とし、小委員会では専門的・集中的な議論が行われることを期待したいと述べた。

 あいさつの後、トヨタ自動車の熊沢洋一生産部品物流部長、イオングローバルSCMの坪井部長、井本商運の葛西直樹営業部営業課長、味の素の魚住和宏物流企画部専任部長、全国物流ネットワーク協会(全流協)の山内信幸専務理事がプレゼンテーションを行った。

 熊沢部長は、名古屋・岩手間での31コンテナを活用した鉄道貨物輸送の例を紹介。2006年に船舶から鉄道に切り替え、現在では、リードタイムと環境面で船舶に比べ優位にある鉄道貨物輸送が同区間全体の約6割の輸送を担っていることなどを説明し、平時の定時性の高さや荷傷みの少ない輸送品質の高さを評価した。一方で、異常発生時などのリスク対応や量変動への柔軟な対応、31コンテナ取扱駅の拡大などの課題があると指摘した。

 イオングローバルSCMの坪井部長は、イオン単独でモーダルシフトを行っていた08年度には12フィートコンテナ換算で2400個だった鉄道貨物輸送が、メーカーとのラウンド輸送などの取り組みにより12年度以降大幅に増加し、昨年度は3万6694個となったことを報告。定期的に「イオン鉄道輸送研究会」を開催してメーカーを交えた鉄道貨物輸送拡大に向けた検討などを行うことで、共同専用列車の運行や31フィートコンテナの往復利用につなげているとし、企業間連携が鉄道貨物輸送拡大の“カギ”となることを強調した。

ISO海コンの標準化急務

 井本商運の葛西部長は、同社が国際コンテナを国内各港間で輸送する内航フィーダーの56%を担っていることを紹介した上で、今後は国内コンテナを取り込んでいく戦略を掲げていることを説明。国際コンテナに使用されるISO規格コンテナを活用した「海コン便」サービスの展開を計画しているが、国内物流ではISO規格が標準化されていないことや京浜港での外貿コンテナ優先着岸による内航船の沖待ちなどの課題があると指摘し、改善を求めた。

 味の素の魚住専任部長は、東日本大震災を契機に進めている船舶へのモーダルシフトについて、工場の最寄りの川崎港から関西までの輸送で、集荷時間の繰り上げなどにより、鉄道・トラックと変わらない到着時間を実現したことなどを紹介するとともに、船舶輸送に関する荷主へのPR不足や船員不足などの課題があると指摘した。

 全流協の山内専務理事は、トラックの効率化について、エコアライアンスによる2社提携モデルやジャパン・トランズ・ラインによる3社提携モデルなどについて紹介。労働力不足が深刻化する中、片荷を解消して往復実車輸送とするニーズは今後も増加するとみられ、ITなどを活用しマッチングを進める必要があるとした。

トラックドライバーの確保・育成へ雇用関連助成金の活用促進図る  国交省・厚労省

 国土交通省と厚生労働省は5月28日、トラックドライバーの確保・育成に向けた両省の取り組みや補助制度などを取りまとめ公表した。トラックドライバーの有効求人倍率が全業種に比べ高止まりしていることなど踏まえ、厚労省関係の補助制度のトラック事業での活用方法等について、わかりやすく説明している。

 有効求人倍率は、2010年度には全業種の0.51に対しトラックドライバーは0.46となっていたが、11年度には逆転し全業種の0.62に対してトラックドライバーは0.72となった。以後、両者の差は広がり、昨年度は全業種の1.00に対してトラックドライバーは1.55とトラック運送業での人材不足が有効求人倍率の数字からも顕著となっている。こうした状況を踏まえ、両省が連携し、トラックドライバーの人材確保・育成に向けた取り組みについて、このほど取りまとめたもの。

 国交省の下請・荷主適正取引ガイドライン周知・普及や不適正事業者の指導強化など、“おなじみ”の取り組みに加え、厚労省関係の補助金について、トラックドライバーの採用や正社員化などに関する活用方法についてわかりやすく説明。

 「実習併用職業訓練(実践型人材養成システム)」では、新卒者等を雇い入れ、6ヵ月以上2年以内に実習と座学などの訓練を併用した場合に、実習では1時間当たり600円、それ以外では800円が助成され、講習費用などの半分が支給される。

 トラックでの活用例では、高卒者等を雇い入れ、6ヵ月間配送作業などの実習と、トラック協会が主催する講習会やフォークリフトの実技などを行った場合、約34万円が支給されるとし、「実習は総訓練時間の2割以上8割以下」などカリキュラム設定の際の注意点などについてもわかりやすく説明している。
 
 「キャリアアップ助成金」では、職業経験の少ない非正規労働者に中型免許やフォークリフト免許取得などの有期実習型訓練を4ヵ月間実施した場合に、約44万円が支給され、さらに正規雇用労働者に転換すれば50万円が支給されるなどの例を示している。

 このほか、雇用管理制度の導入や女性の活躍、地域事業者全体の労働環境向上などに関する補助制度のトラック運送業への活用例も示している。これらの補助制度のトラック運送業での活用は例が少なく、活用の余地が大きいことから、ハローワークやトラック協会、ホームページなどを通じて、広く周知を図る。

今週掲載トピック一覧

  • ☆特集・2015年度日通グループ全国ドライバー・フォークリフトオペレーターコンテスト
    ☆インタビュー・長尾裕ヤマト運輸社長『一番身近で一番愛される企業に~主管支店長集め合宿~』
    ☆アベノミクス物流にとって『吉』か『凶』か(39)
    ☆四文字『認識の論点は?「価格競争」』
    ☆道『国際化に至る道半世紀』(1)

  • ☆国交省、改善基準告示違反への指導は適正化機関活用へ調整
    ☆物流連が環境大賞発表、大賞に日本梱包運輸倉庫
    ☆日立物流、日立製作所の無人搬送車活用して新型ピッキングシステムが本格稼働
    ☆ヤマト運輸・長尾社長が労組研修会で講演、顧客目線でサービス見直し訴える
    ☆国交省、過疎地での貨客混載などモデル事業を公募
    ☆日本通運・伊藤副社長が会見、近い将来売上高・人員とも海外事業が国内事業を上回るとの見通し示す
    ☆ボックスチャーターが株主懇談会、15年度は計画目標に向けて事業一気に加速
    ☆NTTロジスコ、平和島物流センタで医療機器洗浄サービス開始
    ☆西鉄、国際物流網活用し農産物輸出を強化
    ☆東ト協、都民参加フェスタ開催へ実行委を設置
    ☆鉄貨協、エコレールマークの認定300件に

今週のユソー編集室

  • ▼維新の党が掲げる大阪都構想が、住民投票の結果否決された。年代別の投票動向では70歳代の反対投票率が圧倒的であったことから、シルバーデモクラシーが発揮されたと分析する識者もいる。
    ▼都構想の否決が高齢者層の反対によるものかはともかく、高齢化の進行は社会に大きな影響を与えている。一向になくならない振り込め詐欺にしても、比較的裕福な高齢者層が増えていることが背景にある。
    ▼物流の世界では長距離ドライバーの高齢化が著しいが、それ以外にも高齢者が関係する交通事故が増加傾向にあり、交通の安全そのものに影響を与えている点が気にかかる。近年は高齢者が加害者になるケースも増えているという。
    ▼高齢者の交通事故防止のため政府や警察が広報活動を強化しているが、あわせて例えば高速道路の逆走を防ぐ仕組みづくりや、運転免許制度のさらなる改善を行い、高齢者も安心して暮らせる交通環境を実現していきたい。

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