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2015年8月24日付 2576号

トータルSCM獲得へ国内複合・営業利益率3%達成、事業展開の方向性示す  日通・大日向副社長が会見

グローバル営業戦略本部の取り組みを説明する大日向副社長

 日本通運の大日向明副社長は10日の記者会見で、国内複合事業の営業利益率3%達成に向け、「トータルSCM」を獲得していく戦略を示した。5月1日付組織改正の狙い、グローバル営業戦略本部の事業展開について要旨次のとおり語った。

 〈国内複合事業の営業利益率3%達成こそが使命〉
 5月1日付組織改正の狙い、また改正後のワンストップ・アカウント営業の方向性についてお話したいと思います。
 グローバル営業戦略本部の最も重要な使命、それは経営計画に掲げる国内複合事業の「営業利益率3%達成」、ここに尽きます。渡邉健二社長は再三にわたり、不退転の決意で当たると表明していますし、これに全精力を投入することは当然のことです。
 限界利益管理をはじめ、これまで取り組んできた施策によって、営業利益率は徐々に上向いており、第1四半期は2・3%となっています。
 現経営計画の策定に私も携わってきたのですが、当時、国内複合事業の連結売上高を7千億円と見ていく中で、利益率が1%しか見込めない点が問題でした。7千億円を売り上げ、6930億円がコストという事業が果たして成立するのか、アナリスト・投資家への説明責任を含め、極めて具合の悪い状況でして、何とか3%に持っていきたいと、この数値を設定しました。
 達成に向けて全精力を投入するのは当然のこととして、少し考えなければならない部分が増えてきています。それはグローバルロジスティクス営業です。この部分を整理する必要があると考えています。
 日系企業の海外進出はイコール、マーケットがボーダレスになるということですが、お客さまの海外進出を国内複合事業が「インターナショナルビジネス」と捉えられることができるかということが課題の一つでもありました。

 〈国内複合事業展開の方向性〉
 国境がなくなり、マーケットがボーダレスになる中で、日本と同じ物流サービスの提供を海外でも望まれるとしたら、最も適合した部門はどこかと言えば、日本で物流を良く知り、お客さまの商品知識があって、ヒューマンチャンネルがある部隊です。
 当社の国際関連事業はフレイトフォワーディングを中心としたインターナショナルビジネスを展開し、世界一とは言いませんが、競争優位性・品質の面で優れているという自負を持っています。もし私が依頼する立場であれば間違いなく日本通運を選択します。
 一方で、お客さまの海外進出に当たって、海外セクションに取り次げばこと足りるとの考え方は施策として間違っています。最後まで、自分のお客さまの面倒を見ること、求められるニーズを最もわかっているスタッフが対応することが重要です。
 国内複合事業に携わってきたスタッフはマーケットの広がりとともに、働く場所が全世界になる、そう考えるべきだと考え、この施策を積極的に推進しています。

 〈組織改正の狙いはトータルSCMの獲得〉
 次に、今次組織改正の狙いですが、現在のグローバルマーケットに立脚しつつ、トータルSCMの獲得に向け営業を強化していくことです。
 グローバル展開されているお客さまに集中的に陸海空、内外の当社の物流サービスを利用いただけるよう取り組んでいきます。
 新設の産業マーケティング部は、マーケティングを含めた調査・研究を行い、動向・ニーズをしっかり把握し、営業部門に落とし込んでいく役割を担います。
 飲料、医薬品、コスメティックなど、多様な産業分野を想定し、ターゲットがつかめ次第、営業部門につなぎ、適合的な物流サービスを提案していきます。

会見の続きは電子版かコンビニプリントサービスでお読みいただけます。

自民党トラック議連幹部会で税制改正・予算の最重点要望事項を説明  全ト協

星野会長(左から4人目)から細田会長(右から5人目)に要望書を提出

 自民党トラック輸送振興議員連盟(細田博之会長)の幹部会が19日、東京都千代田区のザ・キャピトルホテル東急で開催され、全日本トラック協会(星野良三会長)はトラック運送業界の来年度税制改正・予算に関する最重点要望事項として5項目を提示し説明、その実現への尽力方を求めた。
 冒頭、細田議連会長があいさつ。昨年末以来連続9ヵ月にわたり軽油含め石油価格が低落し、トラック業界では以前よりもやや経営面でプラスが生じていると思われると述べた上で、高速道路料金問題や中型免許制度についても大幅改善の方向で実現したことなどについて言及。そしてトラック業界もコスト面では改善はしたものの、需要面が上昇するまでに至っていないとして、議連としても予算問題を含め対応していきたいと述べた。
 次いで星野全ト協会長があいさつし、昨年の補正予算による措置により、高速道路料金の大口多頻度割引や環境対応車、燃料供給施設の導入補助が実現したことへの尽力方に対し謝意を示した。一方、アベノミクス効果で物量が増えているものの、その反面で人手不足により運転者確保が重要になっている中で、準中型免許の新設など道交法改正案が6月に成立したことに対し感謝の言葉を述べた。そして取引環境と労働時間の改善に向け、荷主とトラック運送事業者が一体となって、無駄な待ち時間を無くすよう取り組んでいきたいとした。

 この後、福本秀爾全ト協理事長が要望事項を説明、これを受け国土交通省の藤井直樹自動車局長、森昌文道路局長、厚生労働省の岡崎淳一労働基準局長が要望事項に対する行政側の対応を説明。
 意見交換の中で、小幡伸全ト協副会長は高速道路利用率について言及、欧米の32%に対し、日本は16%にとどまるとして、欧米並みの利用率となれば交通事故が大幅に減少することを説明、燃料削減にもかなりの効果があるとした。

 最重点要望事項の概要は次のとおり。
 ①高速道路料金における大口・多頻度割引最大50%の恒久化=2015年度末までとなっている高速道路料金の大口・多頻度割引の最大割引率50%を恒久化されたい。
 ②石油石炭税に係る「地球温暖化対策のための課税の特例」の引き上げに伴う補助の拡充=石油石炭税の税率が16年度には1当たり26銭上乗せされることから、上乗せ分に見合った補助の増額を。またこれまでの環境対応車への代替補助、EMS機器等の導入補助に加え、車両の大型化や大型天然ガストラックに対する導入補助も対象にされたい。
 ③自動車税における環境性能課税(環境性能割)の軽減。
 ④自動車税における営自格差見直し反対。
 ⑤長時間労働抑制のための諸対策に係る補助制度の充実=「トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会」の下に来年度以降、長時間労働抑制に向けてトラック運送事業者と荷主が講じることとしている諸対策が実効性あるものとなり、長時間労働抑制が促進されるよう、これらに係る補助制度の充実を図られたい。

今週掲載トピック一覧

  • ☆運輸労連の夏季一時金妥結一覧

  • ☆国交省、14年のコンテナ取扱貨物量は過去最高に
    ☆ヤマトHDが東京五輪のオフィシャルパートナーに、荷物輸送で大会支援
    ☆国交省、次世代運行管理システムの検討深化で勉強会
    ☆日通、米国発メキシコ向け鉄道・トラック混載輸送サービス開始
    ☆社整審・交政審の物流関係部会が中間取りまとめ案審議、自家用車での有償貨物運送で速やかな検討必要
    ☆日通、中国~タイ「南北回廊」で陸路のチャーター輸送開始
    ☆日通・伊藤副社長が海外事業の方針語る「海外発航空事業を強化へ」
    ☆三井倉庫HD、再生医療専用容器でiPS細胞を輸送
    ☆全ト協、トラックの4~6月の景況感は規模間格差が拡大
    ☆SBSロジコム、二子玉川ライズの物流を紹介
    ☆丸運、中国・天津に子会社を設立
    ☆日立物流、香川県内にイオングループ向けの物流センター
    ☆三菱倉庫、品質管理基準対応の新医薬品保冷サービスの構築に着手
    ☆国交省、改善基準告示違反の適正化機関指導は9月1日から開始
    ☆内閣消費者委員会、報告書で全ト協・引越事業者優良認定制度を紹介
    ☆ヤマト運輸、ネコポスの連携第2弾「フリル」でも提供

今週のユソー編集室

  • ▼先月31日に火災事故を発生させた大洗港~苫小牧港間を運航するカーフェリーは、鎮火が確認された後室蘭港へえい航され、先週積載していた車両を降ろす作業が行われた。
    ▼船にはシャシー100台とトラック36台などが積まれていたとされ、火元に近い車両は荷台が焼け落ちるなどの損傷を受けているようだ。本州と北海道を結ぶ動脈の一つであっただけに、物流にも少なからず影響が出ている。
    ▼もう一つの動脈である鉄道では、JR貨物が4日から臨時貨物列車の運転を開始、8月中に合計19本を運転すると発表している。同社では、すでに運転した列車の利用状況は堅調としており、9月に入っても運転する方向で調整中という。
    ▼交通ネットワークの多重化等を意味する「リダンダンシー」の重要性が指摘されているが、北海道~本州間の鉄道と船舶の補完関係は極めて重要だ。新幹線開通後も、そうした機能が損なわれることのないよう望みたい。

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