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2015年10月26日付 2584号

「未来を創る」物流の構築へ-収益性ある物流確立等三つの柱への取り組み提示し、その重要性を強調  経団連

 日本経済団体連合会(榊原定征会長)は20日、『企業競争力強化と豊かな生活を支える物流のあり方~官民が連携して、「未来を創る」物流を構築する~』と題する政策提言を発表した。

 物流業界が官民連携で課題克服や新しい産業構造への適切・迅速な対応をとらなければ、わが国産業全体の競争力が弱体化する恐れがあると物流の重要性を強調。
その上で時代の変化への対応のみならず、自らが広く社会に提案していく革新力を獲得していくために、官民が連携して「未来を創る」物流を目指す必要があるとして、①官民一体で取り組む基盤としての物流の再構築②収益性のある物流の確立③産業構造の高度化を支える物流の変革―に取り組まなければならないと提言している。
 物流の直面する課題については、官民連携での時代変化への対応の必要性を指摘。特に業界の喫緊の課題である担い手の確保・育成には、サプライチェーン全体として各主体連携の下、省人化・省力化による作業負担の軽減が不可欠であるとしている。

 その上で「未来を創る」物流を目指すべきとして、三つの柱に取り組むことが重要とした。
 その一つ「官民一体で取り組む競争基盤としての物流の再構築」については荷主企業と物流事業者が一体となって関連する事業の将来ビジョンを共有し、真の物流パートナーとして「選ばれる荷主」「選ばれる物流事業者」となることが重要であるとし、各社単独での取り組みが困難な各輸送モードの結節点強化にも官民連携しての重点的な取り組みが求められるとしている。
 そして行政が主体となって取り組むべきものとして、企業の競争力強化に役立つ社会資本整備を挙げ、港湾、道路、空港、街づくりなどについて整備の方向を提示。またセキュリティと物流効率化の両立に向けた取り組みの強化や人材確保・育成策の拡充を挙げている。

 一方、企業間・業界間の連携によって取り組むべきものとして、モーダルシフトについて輸送障害時における万全の対策の確保など官民の連携による継続的な環境整備が不可欠とし、共同物流についてはパートナー企業を見つけられるような取り組みの展開、コンテナラウンドユースについてはインランドデポを活用したコンテナのマッチング率の向上等、循環型一貫パレチゼーションについてはICT(コンピューター等に関連する情報通信技術)を活用した共同利用・共同回収システムのさらなる活用などを挙げている。
 そして、「収益性のある物流の確立」と「産業構造の高度化を支える物流への変革」の二つの柱については、労働環境のさらなる改善による担い手の継続的な確保やサプライチェーン全体で物流情報を共有し顧客価値の最大化やコストの最小化等全体最適の実現を目指すことが重要としている。

 「収益性のある物流」の実現には、産業界を挙げた取り組みを通じて物流事業における対価の適正収受を前提とした適切な競争環境の整備が必要であるとして、契約書面化の徹底・遵守、輸送・付帯作業区分の明確化などを進めることが重要であるとしている。
 またⅠoT(モノのインターネット)・ビッグデータ時代において、物流部門はサプライチェーン全体最適の実現を目指すトータルコーディネーターとしての役割が期待されるとしている。

中国向けの個人輸入越境EC新サービスを発表、安定した配送スケジュールを確保  日通

 日本通運(渡邉健二社長)は20日、日本発中国向け越境EC(電子商取引)ビジネスの個人向け輸送需要に対応した中国のECサイトに出店する国内事業者向けの新たなドアツウドアサービス「NEX―SOLUTION EC―CUSTOMER DIRECT」を発売した。

 サービスの内容は、◎個人通関の取り扱いが可能な地元業者と提携し、イレギュラーな通関検査を回避し、安定したリードタイムを実現=東京発上海向けの場合、最短で5日後配達◎中国全土をカバーする大手業者との提携により荷送人(日本の出店者など)から、荷受人(中国の個人購入者)の自宅まで、ドアツウドアで配送=集荷・配達地域にかかわらず同一重量帯一律運賃の簡単・明快な料金体系(チベット地域など一部地域を除く)◎EMS(国際スピード郵便)の定価に比べ1~2割低い料金で提供=個別見積もり。規格は重量20キログラム以下・三辺の合計180センチ以下・一辺の長さ80センチ以下で、1梱包あたり1千元以内(制限金額内は複数商品の同梱も可能)、関税は別途発生する(郵便と同じ税率「行郵税率」を適用)。

 経済産業省調査によると、2014年の日本発中国向け越境ビジネス売上高は6064億円にのぼり、前年から5割以上増加しており、18年には2.3倍になると見込まれている。これまで、越境ECの輸送はEMSが中心だったが、物量の急増に伴い出店者から輸送・通関の遅延を懸念する声が上がっていたことを受け商品化した。

今週掲載トピック一覧

  • ☆アベノミクス物流にとって『吉』か『凶』か(46)『少々分かりにくい「新3本の矢」』
    ☆ウォッチ「中国の『一帯一路』を活用~インドネシア高速鉄道建設・運営決定に関連して~」
    ☆日中ビジネスワンポイント『中国の青島・曲阜・泰山の旅』(3)
    ☆四文字『高齢化時代の「職業能力」』
    ☆道『国際化に至る道半世紀』(10)

  • ☆全ト協、各都道府県ト協に通知 自動車後退時など安全確保の徹底を求める
    ☆センコー、仙台港に新センターを竣工 東北広域ネットワークの中心的な拠点に
    ☆埼玉ト協、未来想造委を設置 若手・壮年経営者で構成し、今後の協会のあり方を検討
    ☆国交省、メコン地域におけるハブ・アンド・スポーク物流実証事業を実施 パイロット事業として
    ☆トピック「首都圏の高速網に変化 圏央道埼玉県内区間が31日に全通」
    ☆15秋闘が始まる、運輸労連大手組合の要求状況
    ☆伊藤JR貨物元会長、旭日重光章受章を祝う会開催
    ☆京葉物流、シンガポールGSCと合弁会社(ジャパンセルフストレージ)設立 首都圏で事業展開
    ☆日本生産技能労務協会、11月6日に物流人材セミナーを開催 改正派遣法のポイントなどにフォーカス
    ☆ヤマト労連、第12回定期大会を開催 新たに5組合が加盟し、人員6万5千人に
    ☆ヤマト運輸、「minne」との連携を発表 オリジナル専用BOXを提供し、発送の手間を削減など
    ☆住友商事 横浜港北に物流施設の開発を発表、ブランド名も決定 17年秋に稼働予定
    ☆物流連、モーダルシフト優良事業者を発表 大賞にヤマト運輸
    ☆日通、ハラール輸送の2件が商標登録
    ☆日倉協、第12回物流フォーラム「厳しい時代を生き抜く倉庫業」を開催 11月13日に経団連会館で
    ☆日本物流不動産機構推進協議会、「物流不動産の未来」テーマに定期セミナー開催

今週のユソー編集室

  • ▼今月31日まで行われているラグビーのワールドカップ。日本代表は初戦で優勝候補の南アフリカから歴史的な勝利をもぎ取ったものの、惜しくも予選リーグで姿を消した。
    ▼ボールを持って目的地まで運ぶという姿からか、あるいは特定の個人よりチームの規律や全員の力を結集することが大事であるという競技の性質からか、何となく物流と共通する点が多いようにも思えてしまう。
    ▼日本代表の副キャプテンを務めた五郎丸歩選手は、インタビューで「チームのみんながヒーロー」と語ったというが、その記事を読んで、以前業界の隠れたヒーローを取り上げるというテレビ番組の企画の相談を受けたことを思い出した。
    ▼物流業界でも個人としてヒーローと呼べる人はいるだろうが、その人が携わるのは全体の一部分でしかない。やはり全員がヒーローにならなければ、顧客ニーズに応えるという「トライ」をあげることは、できないのではないかと思うのだ。

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