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2016年1月18日付 2594号

ORSの廃止問題、集約期限延長して協議継続 収支改善へ大詰め  JR貨物・田村社長が会見

会見する田村社長

 JR貨物の田村修二社長は13日の定例記者会見で、オフレールステーション(ORS)問題の協議の現状などを説明するとともに、鉄道事業部門の黒字化に向けて経営資源の一層の効率的運用を図る考えを示した。

 田村社長はORSについて、利用運送事業者との協議が継続しているとした上で「さまざまな提案をいただいている。拡販に本腰を入れていただければありがたい。実際に目の色を変えて拡販に取り組んでいるケースもあると聞いている。収支改善のためにどう使ってもらうのか、知恵を出していきたい。もう少し時間はあるので、精力的に詰めていきたい」と語り、おおむね協議が前向きに進んでいるとの認識を示すとともに、当初1月中旬としていた集約の期限を延長するとした。

 一方で「(存続が)難しいケースもあるが、ORSが廃止になっても実質的にそれをカバーしていくための知恵を出す」と述べ、ORS以外の手法で集配機能を維持することに含みを持たせた。
 利用運送事業者との協議にまで至っていない、青函トンネルの付加金の問題については、EH800の新製などで約160億円の設備投資を行っており、減価償却負担が発生することに言及し、「協力をお願いしている。コスト削減の自助努力はもちろん行っていく。理解を得られるよう頑張りたい」として、引き続き協議を行うよう求めていく考えを示した。

 田村社長はまた、12月の経営指標について①1日当たりの取扱収入が4億円超となった日が13日あった②1日当たり12フィート換算発送個数が1万7千個超となった日が5日あった③JRコンテナ運用効率が18%を超えた(一つのコンテナについて約5.5日に1回使用されている高効率の状態)④平均積載率が84.8%となり、2000年以降では月間最高値を記録した⑤月間取扱収入が本年度2回目の100億円超を達成した―の5項目を取り上げ、「この5項目が目安値を超えたのは07年度以来」と指摘、「これらを踏まえ08年のリーマンショック以前の状態に戻ったとみている」と述べた。
 その上で「当時と比較して、機関車の両数・貨車の両数・コンテナ個数・フォークリフト配置台数・社員数がどこまで効率化できたのか、現在検証している。今年3月のダイヤ改正でさらに効率化を進め、来年度の鉄道事業部門黒字化を実現していく」と語り、経営資源の効率的運用に力を入れていく考えを示した。

LINEと連携して利用者利便性を向上、19日から提供開始  ヤマト運輸

握手する長尾社長(左)と出澤社長(右)

 ヤマト運輸(長尾裕社長)はあす19日、LINE(出澤剛社長)が提供するスマートフォン向けコミュニケーションアプリ「LINE(ライン)」で、「お届け予定メッセージ」や荷物問い合わせなどの各機能の提供を開始する。

 サービス開始に向け、ヤマト運輸はラインに公式アカウントを開設。クロネコメンバーズ会員のクロネコIDとラインが連携し、公式アカウントの「トーク画面」で「お届け予定メッセージ」と「ご不在連絡メッセージ」を配信する。また、荷物問い合わせや集荷・再配達依頼、料金・お届け日検索などの機能についても、多くのスマートフォンユーザーに日常的に利用されているラインから利用することができるので、ユーザーの利便性が大きく向上するとしている。

 ラインは、無料のアプリケーションで、ヤマト運輸の公式アカウントの各メニューも無料だが、ダウンロード時や利用時には通信料金がかかる。また①荷物問い合わせ②集荷の依頼③再配達の依頼④料金・お届け日検索―の各サービスを利用する場合には、ヤマト運輸公式アカウントの「友だち」になる必要がある。

 ヤマト運輸では、今夏にも宅急便の送り状をラインで作成できるようにし、ヤマト運輸の直営店やコンビニエンスストアの店頭端末、セールスドライバー(SD)が携帯している端末を使い、ラインで作成した送り状を印字することで、ユーザーがストレスなく宅急便を利用できる環境を作るほか、将来的にはラインのユーザー間であれば相手の住所が分からなくても荷物が送れるような仕組みを構築していく。

 ヤマト運輸の長尾社長は15日に都内で会見し「宅急便は今月、サービス開始から40周年を迎える。これまでもさまざまな変化に対応してきたが、スマートフォンの登場は非常に大きな変化になる。最も身近なコミュニケーションツールであるラインと宅急便が融合し、より親しみやすい宅急便に変化していく」と語り、不在再配達の減少といった効率向上効果よりも、エンドユーザーの利便性向上に主眼を置いたサービスであることを強調した。

今週掲載トピック一覧

  • ☆物流業界の新年会
    ☆ウォッチ「2016年の物流に影響する中国の経済政策」
    ☆道『国際化に至る道半世紀』(15)

  • ☆通運連盟、全37ヵ所のORS対象に利用促進キャンペーン展開 発着バランス改善へ
    ☆JILS、「KPI」と「IoT」2推進部会を新設 川合副会長らが会見
    ☆中日本高速・新東名愛知県内区間が開通、御殿場~豊田東間200キロメートル超のダブルネットワーク完成
    ☆全ト協・日貨協連、12月WebKIT成約運賃指数は2番目に高い指数 車両不足が深刻化
    ☆ヤマト・ANA・伊勢丹、シンガポールで越境EC開始 現地で農水省がイベント
    ☆運輸労連・交通労連、16春闘の統一要求額を昨年比100円増の1万1千円中心に
    ☆JILS等が開催する「国際物流総合展」への出展申し込みペースが前回の2倍、9月13~16日に開催
    ☆通運連盟、2月に全国大会を開催 お試しキャンペーン利用のモーダルシフト事例発表など
    ☆セイノーHD、新年互礼会を開催 グループスローガン「進化」で一層の価値の創造
    ☆全ト協が文書発出、ロールボックスパレットの使用安全作業「8つのルール」周知徹底を
    ☆日倉協、「中小倉庫業の経営強化」をテーマに第9回経営者セミナーを開催 2月15日に経団連会館で
    ☆GLP、埼玉県の日高市内にホンダロジ向け物流施設「狭山日高I」を竣工
    ☆全ト協、トレーラ大型化による輸送効率化促進へハンドブックを作成 6社の導入事例紹介も
    ☆デンソー、車にカーナビ未搭載でも「ETC2.0」導入可能な車載器「DIU―A010」今月発売
    ☆佐川グローバルロジスティクス、山善の中核的拠点に県内最大規模の群馬営業所を新設
    ☆福岡運輸、北松通運の事業を引き継ぎグループ化
    ☆SBS即配サポート、「ISO27001」取得で信頼性向上 情報を安全・確実に処理
    ☆SBSフレイト、プライバシーマーク認定取得でさらなる安全 個人情報保護体制を強化
    ☆総務省、日本型郵便インフラシステムを海外へ展開するサービス提案を募集 対象国はミャンマー・タイ等

今週のユソー編集室

  • ▼「トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会」のことを考えると、「千里の道も一歩から」とか「継続は力なり」という格言が自然と頭に浮かぶ。
    ▼本紙では新年特集号でこの協議会のことを取り上げたが、その取材の際に地方運輸局のある担当者はこうつぶやいた、「正直言って、何をすればいいのかよく分かりません。困惑していますし、全く手探りの状態で進めているところです」。
    ▼県ごとの取り組みに温度差があるといった話や、昨年行われたアンケート調査の結果が実態を十分に反映していない、といったうわさは頻繁に耳にする。だが、たとえそれが事実であったとしても、全く驚くにはあたらない。
    ▼何十年も続いてきた慣行を、ひっくり返そうという話なのである。ましてや政策実現まで何年もかかるような話だ。大切なのは危機意識と改善意識の共有。そして「千里の道も一歩から」「継続は力なり」のとおり、一歩一歩着実に前進していくことだ。

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