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2016年3月21日付 2602号

全国で第3回協議会、トラックの労働時間改善パイロット事業の具体的検討始まる  国交省

 トラック運転者の労働時間改善に向けパイロット事業スタート―。
 国土交通省は昨年5月に「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」を立ち上げ、常態化しているトラック運転者の長時間労働の大きな要因に挙げられている荷主との取引慣行の改善に向けた検討を進めているが、来年度は地域や業種などの実態に即した改善方策を探るためパイロット事業(実証実験)を行うこととしている。こうした中、全国各地域で第3回地方協議会が開かれ、昨年9月に実施した実態調査の結果を踏まえた具体的な実施方法などについての検討に入った。
 トラック事業者数が全国で最も多い関東運輸局管内でも、15日に東京都と神奈川県、17日に茨城県と山梨県で協議会が開かれ、22日には群馬県、23日には千葉県・埼玉県・栃木県で開催の予定となっている。

 東京運輸支局と東京労働局は15日、東京都新宿区の東京貨物運送健康保険組合会館で「第3回トラックにおける取引環境・労働時間改善東京都地方協議会」を開催。オブザーバーとして出席した東京都トラック協会の種田光男海上コンテナ専門部会長が東京港コンテナターミナルの長時間待機問題について説明した。
 種田部会長は、ゲートオープン時間や船舶からの揚げ卸し作業中心の体制など、東京港での“特殊事情”によってコンテナを引き取るための待機を余儀なくされる事態が慢性化していると指摘。低賃金・労働環境の悪化によって魅力のない業種と見られ、ドライバー不足が深刻化している現状を訴え、オーダーの際に指定時間に余裕を見てもらうなど、荷主の理解を得られれば効率的運用が図られ、ひいては荷主にもメリットを還元できるとし、自助努力だけでは解決できない問題に対して連携・協力し取り組む必要性を提起した。
 続いて、昨年9月に実施した実態調査「東京版」の報告が行われ、大消費地である東京の特徴として、1運行の当たりの走行距離は500キロメートル以下の短・中距離が大半を占め、平均保有車両は中型が最も多い傾向にある中で、500キロメートル超の長距離よりも短・中距離の方が平均拘束時間のうち手待ち時間は24分長くなる結果が示された。
 議事では引き続き、発・着荷主、運送事業者で構成する「対象集団」による実証実験を行う東京版パイロット事業案が示され、事業者選定等をはじめ実施方法については事務局に一任することを承認した。
 今後の協議会の進め方について委員から出された意見では、着荷主への理解促進の取り組み、ITを活用した計画発注、車両メーカーを交えたドライバーの負担を軽減する機器の研究など。

神奈川は厚労省スキームで

 神奈川運輸支局と神奈川労働局は15日、横浜市の神奈川県トラック総合会館で、「第3回トラック輸送における取引環境・労働時間改善神奈川県地方協議会」を開催した。
 会議ではまず、事務局が昨年9月に実施した「トラック輸送状況の実態調査」の神奈川県版概要を報告。

 神奈川県ではドライバーの拘束時間や荷役の書面化・料金収受、荷役・付帯作業の発生状況について、おおむね全国版と同様の傾向が見られた。その反面、1運行当たりの拘束時間が改善基準告示違反となる13時間または16時間を超える運行の割合は、いずれも全国平均を10ポイント程度下回っていること、連続運転時間4時間超となる割合の高い輸送品類が「化学工業品」であること(全国版では「農水産品」)など、神奈川県の特徴も一部で見られた。

 引き続き各都道府県で2016~17年度に行うパイロット事業について、事務局が概要を説明。

 神奈川では手待ち時間・運転時間・荷役時間の短縮に着目し、総拘束時間の短縮を目的に実施していく考えを示した。

 一方でパイロット事業の進め方については、厚生労働省が12年度から行っている「トラック運転者労働条件改善事業」のスキームを活用して行う方法と、国土交通省の予算を活用する方法の二つがあり、各都道府県協議会の意見を元に中央が裁定するが、国土交通省としては47都道府県のパイロット事業のうち、20県を厚生労働省の委託事業として進める考えであることを紹介した上で、神奈川県としては厚生労働省のスキームを活用して事業を行う要望を提出する案を示した。

 会議ではこうした事務局案を承認するとともに、パイロット事業を行う荷主・運送事業者など対象集団の決定を事務局に一任した。
 委員からは、パイロット事業の対象集団を16年度と17年度で変え、できるだけ多くの事例を作るよう要望が寄せられた。

 また、改善基準告示を守っても長時間労働の実態は変わらないとの指摘に対して、事務局側が告示は労働時間ではなく拘束時間を示したものであり、拘束時間とともに長時間労働の改善にもしっかりと取り組んでいくと回答した。
 次回会合は7月ごろ開催の予定。

マレーシアの物流企業の株式取得 マレーシア・タイ中心の事業基点構築へ  福通

 福山通運(小丸成洋社長)は15日開催の取締役会で、マレーシアの物流企業「E.H.Utara Holdings」およびそのグループ会社であるタイ王国の物流企業「E.H.Utara(Thailand)」の株式を譲り受けることを決めた。取得する株式は外資規制により49%だが、実質的支配により連結子会社とする予定。

 「E.H.Utara Holdings」は1979年設立のマレーシア・ケダ州に本社を置く物流企業。特にマレーシア~タイ間でのクロスボーダー・トラック輸送に強みを持ち、自動車部品、電子製品、日用消費財などを主要貨物に、現地企業のみならず日系外資大手企業を主要顧客とし、マレーシアを中心に幅広く事業を展開している。
 福山通運では東南アジア諸国を国際事業における重要な地域として位置付けており、今回の子会社化実現により、国際事業で新たなマレーシア・タイを中心とした事業の基点を構築することができ、これらを軸に同地域・周辺地域でのさらなる領域拡大も目指すことができる。またクロスボーダー・トラック輸送のノウハウも活用しながら福山通運グループの事業の多角化を推進し積極的な営業展開を図っていく。

 「E.H.Utara Holdings」は資本金が500万マレーシア・リンギット(円換算で約1億4千万円)で2015年8月期連結売上高は14億4400万円、連結経常利益が9700万円。今回取得する株式は全株式の49%に当たる245万株、取得価格は880万米ドル(円換算で約10億円)。15日に契約締結、株式譲渡実行日は5月を予定。

今週掲載トピック一覧

  • ☆ウォッチ「「爆買い」から見る日本の品質と物流」

  • ☆矢崎エナジーシステム、法人向け業務支援用ETC2.0発売 デジタコ等と連動
    ☆佐川急便、23区内に即日配達サービス開始22日集荷分から 遠隔地からの荷物も
    ☆運輸労連16春闘、大手8単組で妥結 3単組でベア獲得 賃上げやや抑えめ
    ☆京阪電鉄、車庫拡張用地を転用した淀ロジヤード開業 日通とつばめ急便が入居
    ☆国交省、運転者の指導・監督指針の改正告示を来月公布 実施マニュアルも公表
    ☆物流連が環境対策委員会開く、16年度事業計画案の説明受ける 物流の生産性向上目指し先進技術の研究会等を開催
    ☆JR貨物が年度末需要増大に対応、臨時列車の運転等で輸送力8千個増強
    ☆佐川急便が第1回BC企業交流会開く、異業種企業間の交流により物流BCP高度化へ
    ☆ボックスチャーター、ペイジーを導入 決済の利便性向上を図る
    ☆埼玉ト協、防災意見交換会開く 各自治体担当者等約80人が参加
    ☆物流連が環境対策委員会開く モーダルシフト表彰規程改正
    ☆日倉協、オンデマンド視聴研修「スマホ版」リリース
    ☆JR貨物の田村社長がコメント、青函付加料金を導入決定 真荷主営業に協力
    ☆日通、スリランカ支店開設 アパレル等に対応
    ☆日通が2月の航空・海運実績発表、米国西海岸ストの反動で海運事業は微減 航空事業は2桁の減少
    ☆日立物流がBCAOアワードで優秀実践賞を受賞、事業継続の取り組みで
    ☆千葉適正化実施機関、第2回審議委員会で巡回指導評価結果報告 “悪い”評価減少し1割に“良い”が7割へ増加
    ☆国交省の藤井自動車局長が会見、協議会におけるトラック輸送実態調査について考えを示す 品目・地域別傾向は収穫

今週のユソー編集室

  • ▼近年の人工知能の発達は目覚ましい。先日は世界最強クラスの囲碁の棋士が、コンピューターソフトに負け越したというニュースが報じられた。
    ▼解説によれば、その打ち手はプロでさえ戸惑うようなものだったという。天文学的演算処理能力を要求されるという囲碁の世界でも、コンピューターの能力が人間のそれを上回ろうとしているのは間違いない。
    ▼こうしたコンピューターの力が物流に応用された場合、どれほどの生産性向上効果が見込めるのだろう。災害時まで含めたオペレーションが人工知能によって差配され、刻々と変化する状況に応じて最適な物流が提供される時代が、やってくるのかもしれない。
    ▼トラックが自動運転化され、荷役・配達はロボットが行い、人工知能がオペレーションをつかさどる。未来の物流に人間は必要ないのかもしれない。だが、そうした未来をあまり明るいものだと感じられないのは、人間特有の“ひがみ”なのだろうか。

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