全国で第3回協議会、トラックの労働時間改善パイロット事業の具体的検討始まる 国交省
トラック運転者の労働時間改善に向けパイロット事業スタート―。
国土交通省は昨年5月に「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」を立ち上げ、常態化しているトラック運転者の長時間労働の大きな要因に挙げられている荷主との取引慣行の改善に向けた検討を進めているが、来年度は地域や業種などの実態に即した改善方策を探るためパイロット事業(実証実験)を行うこととしている。こうした中、全国各地域で第3回地方協議会が開かれ、昨年9月に実施した実態調査の結果を踏まえた具体的な実施方法などについての検討に入った。
トラック事業者数が全国で最も多い関東運輸局管内でも、15日に東京都と神奈川県、17日に茨城県と山梨県で協議会が開かれ、22日には群馬県、23日には千葉県・埼玉県・栃木県で開催の予定となっている。
東京運輸支局と東京労働局は15日、東京都新宿区の東京貨物運送健康保険組合会館で「第3回トラックにおける取引環境・労働時間改善東京都地方協議会」を開催。オブザーバーとして出席した東京都トラック協会の種田光男海上コンテナ専門部会長が東京港コンテナターミナルの長時間待機問題について説明した。
種田部会長は、ゲートオープン時間や船舶からの揚げ卸し作業中心の体制など、東京港での“特殊事情”によってコンテナを引き取るための待機を余儀なくされる事態が慢性化していると指摘。低賃金・労働環境の悪化によって魅力のない業種と見られ、ドライバー不足が深刻化している現状を訴え、オーダーの際に指定時間に余裕を見てもらうなど、荷主の理解を得られれば効率的運用が図られ、ひいては荷主にもメリットを還元できるとし、自助努力だけでは解決できない問題に対して連携・協力し取り組む必要性を提起した。
続いて、昨年9月に実施した実態調査「東京版」の報告が行われ、大消費地である東京の特徴として、1運行の当たりの走行距離は500キロメートル以下の短・中距離が大半を占め、平均保有車両は中型が最も多い傾向にある中で、500キロメートル超の長距離よりも短・中距離の方が平均拘束時間のうち手待ち時間は24分長くなる結果が示された。
議事では引き続き、発・着荷主、運送事業者で構成する「対象集団」による実証実験を行う東京版パイロット事業案が示され、事業者選定等をはじめ実施方法については事務局に一任することを承認した。
今後の協議会の進め方について委員から出された意見では、着荷主への理解促進の取り組み、ITを活用した計画発注、車両メーカーを交えたドライバーの負担を軽減する機器の研究など。
神奈川は厚労省スキームで
神奈川運輸支局と神奈川労働局は15日、横浜市の神奈川県トラック総合会館で、「第3回トラック輸送における取引環境・労働時間改善神奈川県地方協議会」を開催した。
会議ではまず、事務局が昨年9月に実施した「トラック輸送状況の実態調査」の神奈川県版概要を報告。
神奈川県ではドライバーの拘束時間や荷役の書面化・料金収受、荷役・付帯作業の発生状況について、おおむね全国版と同様の傾向が見られた。その反面、1運行当たりの拘束時間が改善基準告示違反となる13時間または16時間を超える運行の割合は、いずれも全国平均を10ポイント程度下回っていること、連続運転時間4時間超となる割合の高い輸送品類が「化学工業品」であること(全国版では「農水産品」)など、神奈川県の特徴も一部で見られた。
引き続き各都道府県で2016~17年度に行うパイロット事業について、事務局が概要を説明。
神奈川では手待ち時間・運転時間・荷役時間の短縮に着目し、総拘束時間の短縮を目的に実施していく考えを示した。
一方でパイロット事業の進め方については、厚生労働省が12年度から行っている「トラック運転者労働条件改善事業」のスキームを活用して行う方法と、国土交通省の予算を活用する方法の二つがあり、各都道府県協議会の意見を元に中央が裁定するが、国土交通省としては47都道府県のパイロット事業のうち、20県を厚生労働省の委託事業として進める考えであることを紹介した上で、神奈川県としては厚生労働省のスキームを活用して事業を行う要望を提出する案を示した。
会議ではこうした事務局案を承認するとともに、パイロット事業を行う荷主・運送事業者など対象集団の決定を事務局に一任した。
委員からは、パイロット事業の対象集団を16年度と17年度で変え、できるだけ多くの事例を作るよう要望が寄せられた。
また、改善基準告示を守っても長時間労働の実態は変わらないとの指摘に対して、事務局側が告示は労働時間ではなく拘束時間を示したものであり、拘束時間とともに長時間労働の改善にもしっかりと取り組んでいくと回答した。
次回会合は7月ごろ開催の予定。