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2017年2月27日付 2645号

トラックの運賃・料金、国による下限運賃の提示 事業者アンケートで求める声と「支障あり」両方で上位に  国交省

 国土交通省は20日、東京都千代田区の同省で第3回トラック運送業の適正運賃・料金検討会を開き、昨年12月から今年1月にかけてトラック事業者を対象に実施した運賃・料金に関するアンケート結果を報告。効果的な運賃・料金の収受につながる方策については、下限運賃の設定や付帯作業・高速料金の別建て、過剰に安く運送を請け負う事業者の排除などが回答の上位を占める一方、下限運賃については「支障あり」との回答も多かったことが分かった。

 アンケートは、各地方トラック協会の役員・青年部会会員や、全日本トラック協会が実施しているトラック運送業の景況感調査回答企業など1776者を対象に、郵送とウェブサイトで調査票を昨年12月に送付し、今年1月に回収。30.7%に当たる545事業者から回答を得た。回答事業者の実運送の売上高が一番高い輸送品目についての取引上の立場は、元請け61.8%、1次下請け31.4%、2次下請け6.3%、3次下請け0.2%などとなっている。

 質問項目は、最も売上高の多い品目についての運送委託者(真荷主・トラック事業者・利用運送事業者など)や、燃料サーチャージ・車両留め置き料・付帯作業料などの費用の収受状況、契約書への別建て料金の記載の有無など。

 また、運賃・料金の収受に効果的な項目について、「国が目安となる標準運賃を示す」「国が目安となる下限運賃を示す」「別建て料金の収受」「事前チェックの厳格化」「法令遵守できない業者への取り締まり等強化」「価格交渉など取引交渉のスキル向上」など10数項目について、「とても効果あり」「効果あり」「少し効果あり」「全く効果なし」「支障がある」まで5段階で回答してもらい、「支障がある」については、特に支障のある2項目について理由を尋ねている。

 このうち、「とても効果あり」との回答割合が高かったのは、「過剰に安く請け負う業者がいなくなる」で38.7%、次いで「国が下限運賃を提示して、違反があった場合に変更命令審査を行う」が35.3%、以下、「法令遵守できない業者への取り締まり等強化」30.6%、「付帯作業・高速代別建て」29.9%などとなっている。

 特に支障がある方法については、「国による下限運賃の設定」が最も多く、以下、「業界の下請けを3次等に制限する」「国による標準運賃の設定」などの順となっている。

 検討会では今後、アンケート結果を踏まえつつ、現在は明確化されていない運賃や付帯業務、車両留め置き料などの範囲について検討を行う。次回検討会は4月に開催の予定。

宅急便の総量規制で報道の一部を否定、将来的な実施には含みも  ヤマト労使

 23日付の一般紙で、宅配貨物の総量規制を行う方針と報じられたヤマト運輸(長尾裕社長)は同日、本紙の取材に対し引き続き労働条件の改善に取り組んでいく方針としたものの「会社側も(総量規制に)応じる方向」と報道された点については否定した。一方でヤマト運輸労働組合(森下明利委員長)も同日、総量規制について、春闘要求の内容には盛り込んでいないことなどを明らかにした。

 ネット通販の拡大に伴い宅配業界では慢性的な人手不足が続いており、昨年12月の繁忙期では一部で配達遅延などの影響も生じた。これらを踏まえ、この1月に開かれたヤマト労組の春闘討論集会では、森下委員長が「社員の命と健康を守るために、コンプライアンスを担保できる宅急便の取扱個数を明確にし、具体的に要求していくべきだ」と宅急便の総量規制の必要性を指摘。会社側の姿勢についても「体制を確保するという今までの回答では、もはや信ぴょう性を得られない」と批判していた。

 一方で森下委員長は、そうした要求を春闘の交渉事項に盛り込むことはせず、普段のコミュニケーションの中で求めていく姿勢を示しており、実際に今春闘の要求項目の中では、ヤマト便や時間帯お届けなど個別商品の見直しには言及しているものの「労働力確保と定着率向上のための施策」「適正な労務管理の徹底の具体的な施策」のいずれの項目にも、総量規制など取扱個数に関する文言は含まれていない。

 ヤマト労組では本紙の取材に対し「春闘要求には含んでいないが、品質と法令を守るために必要なこととして、以前から委員長が主張しており、すでに業界紙などでも報じられている。また、今春闘で具体的な取扱個数や個別の荷主の取り扱いに関して、組合側が何かを求めている事実もない」とコメントし、一般紙の報道をいぶかる様子もみせた。

 これに対してヤマト運輸広報戦略課は「春闘では組合側から賃金および労働条件に関する要求を受けているが、具体的な内容は答えられない。ただ、労働力確保の観点から、これまでも労働条件の改善には取り組んできており、引き続き取り組んでいく方針でいる」と述べたほか「現段階では総量規制に関する方向性が決まったという事実はない」として、報道を否定した。その反面で「会社側と組合側は普段から良好なコミュニケーションがとれており、例えば社長と委員長が個人間で何らかの意見交換を行っている可能性はある」とコメント。さらに2013年10月に発覚したクール宅急便の品質管理問題で、品質の担保を目的とした総量規制の可能性にも言及していることから、将来的な総量規制の実施については含みをもたせた。

今週掲載トピック一覧

  • ☆引越特集(1)
     各社の施策
      SGムービング
      札幌通運
      赤帽
      押入れ産業
      全ト協引越部会、本年度の繁忙期対策
    ☆アベノミクス物流にとって「吉」か「凶」か(76) 『浜田名誉教授の変節とシムズ理論(その1)』
    ☆四文字 『課題は続く「営自分離」』
    ☆積み残しの記余禄(1)『タブレット』

  • ☆石井国交大臣がトラックドライバーと意見交換、「働き方改革」に向けて実態把握へ
    ☆国交省・物流考慮の建築物検討会、貨物用エレベーター設置で物流事業者との事前検討「行わず」が65%超に
    ☆ハマキョウレックス、協和発酵キリングループの物流子会社取得へ
    ☆SGHD、同社取材絵画コンクール環境大臣賞作品をデザインしたラッピングトラックの出発式
    ☆日本郵便・ナスタ・大和ハウス、新型宅配ボックスを戸建て住宅に普及へ
    ☆17春闘スタート、運輸労連大手の要求状況
    ☆押入れ産の黒川社長が会見、福岡で直営店展開しコンテナ事業強化へ
    ☆日貨協連、事業用トラックドライバー研修テキスト初版セットほぼ完売に
    ☆千葉ト協、交通事故・労災防止大会開く
    ☆三八五労組が定期大会、本部・現場の役員が全組合員と対面へ
    ☆東ト協環境委、グリーン・エコプジェクト見直しへ来年度小委設置へ
    ☆東京都貨物輸送評価制度セミナーで東ト協がグリーン・エコプロジェクトの取り組み発表
    ☆損保ジャパン日本興亜、BCP策定セミナー開く
    ☆帝国データが17年度の賃金動向発表、労働力確保等を理由に賃金改善見込む企業が50%超える

今週のユソー編集室

  • ▼埼玉県三芳町に所在するアスクルの物流センターで16日午前9時ごろに発生した火災は、6日が経過した22日の午前9時半に、ようやく消し止められた。
    ▼従業員5人が軽いけがを負ったほか、近隣に避難勧告が出されるなどの影響を及ぼしたが、まずは重大な人的被害が発生しなかった点に安堵したい。一方で、鎮火に6日間も要したという事実は極めて重い。
    ▼この物流センターは東日本エリアをカバーする施設として、2013年7月に開所した。地上3階建て延べ床面積約7万2千平方メートルの規模で、日本初の自動梱包機の導入など先進的な取り組みを行っており、環境・BCP(事業継続計画)にも配慮した施設だったようだ。
    ▼保管貨物の特性や建物の構造上の問題など、消火に手間取った理由はさまざまあるだろうが、原因の究明と公表は迅速に行ってほしい。他の“先進的”物流センターに構造上の盲点はないのか、多くの教訓を与えてくれるはずだ。

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