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2017年4月10日付 2651号

猶予期間後の720時間適用を国交省などへ要請、「改革の意義失う」  運輸労連・交通労連

 運輸労連(難波淳介委員長)と交通労連(山口浩一委員長)は3日、政府の「働き方改革実行計画」で、自動車運転業務の時間外労働の上限規制について、「一般則施行の5年後に年960時間(月平均80時間)以内」などと決められたことを受けて、国土交通省・厚生労働省・全日本トラック協会の各省・団体へ、運転手不足を改善するために、より厳しい規制を適用するよう求める要請活動を行った。

 両労連は要請書の冒頭で「休日労働が960時間の別枠で取り扱われ、時間外労働と休日労働を拘束時間に置き換えた場合、現行の自動車運転の業務に対する労働時間等の規制である改善基準告示と何ら変わらない水準が維持され続ける」と指摘。自動車運転従事者が、「脳・心臓疾患の労災補償支給決定件数」のワースト1になっており、長時間労働の改善が急務であることと併せ、「『働き方改革』の意義が失われてしまう」と強く警鐘を鳴らした。

 その上で両労連は①一般則施行5年後の「上限規制720時間」の適用②過労死水準を根拠とした規制である「単月100時間」「2~6ヵ月平均80時間」の一般則施行5年後の適用③一般則施行後5年間の総拘束時間を年3300時間へ短縮④拘束時間・休息期間の法定化と限度時間との相関の明確化⑤労働時間管理の徹底と不適正事業者の指導強化―を要請した。

 要請は、国交・厚労の両省に対して難波委員長・世永正伸運輸労連副委員長・貫正和交通労連トラック部会事務局長が、全ト協に対して山口委員長・世永副委員長・貫事務局長が、それぞれ行っており、国交省は加藤進自動車局貨物課長らが、厚労省は原口剛政策統括官付参事官らが、全ト協は福本秀爾理事長らが、それぞれ応対した。

 要請場面では労働組合側が、加入者数13万4千人規模の運輸共済において、16年度の自殺による本人死亡給付の件数17件のうち、「仕事上(業務上)の悩み」を原因とするものが最も多い7件にのぼっているなど、長時間労働が自殺の原因に結び付いている可能性を指摘。要請書の内容を実行するよう求めた。今回の要請活動について世永副委員長は、本紙の取材に対し「年960時間」の算出根拠が明確化されていないとした上で、給与体系が運賃歩合となっている事業者では労使ともに労働時間の改善意識が薄く、そうした事業者の例を算出根拠としたのではないかと疑問を呈するとともに、あらためて労働環境改善に向けた取り組みの必要性を訴えた。

 両労連は今後も共同歩調をとりながら、連合などを通じて労働政策審議会の場で、要請項目の実現に取り組んでいく構えとしている。

日本発タイ向け「国際クール宅急便」発売、最短で翌々日に配達  ヤマト運輸

 ヤマト運輸(長尾裕社長)は17日、日本発タイ向け一貫保冷小口輸送「国際クール宅急便」の販売を開始する。全国のSDによる集荷や宅急便センターへの持ち込みで荷物1個から発送でき、最短で翌々日の午前中にバンコク全域に配達する。

 日本からタイの空港までの空路はヤマト運輸の航空保冷コンテナを用い、タイ国内の輸送ではヤマトアジアなどが出資するSCG Yamatoの保冷コンテナを使用。ヤマトグループのネットワークによる一貫保冷小口輸送を展開する。

 サイズは60、80、100、120の4種類で、料金は60サイズ6050円から120サイズ2万6950円まで。

 発送締切時間は関東・大阪府・沖縄県が終日、その他の地域は午前中の集荷または持ち込み。ヤマト運輸と契約し、送り状発行システムを利用できる法人が対象。

今週掲載トピック一覧

  • ☆物流企業各社の入社式でのトップ訓示要旨
     日本通運・渡邉健二社長 新しい未来を創る
     ヤマトHD・山内雅喜社長 経営の中心に「人財」
     SGHD・栗和田榮一会長 グループ成長の原動力に
     JR貨物・田村修二社長 新たな風吹き込め
     西濃運輸・神谷正博社長 国家社会の貢献を
     トナミHD・綿貫勝介社長 明確な問題意識を
     近鉄エクスプレス・鳥居伸年社長 夢かなえる舞台用意
     日立物流・中谷康夫社長 新しい世界に挑戦
     SBSHD・鎌田正彦社長 「心の力」で夢実現
     第一貨物・武藤幸規社長 当社オヒーローに
     丸運・荒木社長 丸運イノベーションの実現へ
    ☆四文字 『交通規制の「基本理念」』

  • ☆厚労省が働き方改革で見解、トラック時間外960時間に休日労働含まれない
    ☆日通が5月1日付の役員人事発表、新社長に齋藤副社長
    ☆JR貨物が新中計発表、経常利益100億円以上の持続的な確保へ
    ☆JR貨物の17年度事業計画、鉄道の黒字継続へ
    ☆国交省、運輸安全規則の一部改正で運転者の常務記録に集荷地など追加へ
    ☆国交省が近畿圏の高速道路料金を許可、6月3日から料金水準統一した新制度に
    ☆全ト協・日貨協連、3月のWebKIT成約運賃指数は2番目に高い120に
    ☆JR貨物がグループ社長会議、「夢もって新しい時代へ」
    ☆日本郵便・楽天、不在再配達削減へEC物流で連携強化
    ☆日立物流、トルコの子会社社長がルクセンブルク功労勲章受章
    ☆SGHDが環境省とオフィシャルパートナーシップ締結、「手ぶら観光」の提供など国立公園の活性化へ
    ☆センコー、子会社の中国ピアノ運送が「ハーコブ」に社名変更
    ☆試験センター、16年度第2回運行管理者試験の合格率は過去3番目の低さに
    ☆国交省が第3回次期大綱検討会開催、物流効率化に向けた連携支援求める声あがる
    ☆佐川急便、「飛脚電報便」拡販へ新会社の営業開始

今週のユソー編集室

  • ▼「トラックドライバーは過労死しても仕方ない」。いささか大げさな表現になるが、政府の「働き方改革実行計画」の中身をみると、国はそう考えていると判断するしかない。
    ▼計画によればトラックドライバーの年間総拘束時間の上限は、猶予期間を過ぎてからも、現行改善基準告示と同じ3516時間のまま据え置かれることになり、月平均の残業時間は過労死認定基準の80時間を超過する。
    ▼石井国交大臣が全ト協幹部らに「思い切った取り組み」を要請したのは、計画決定からわずか20日前の話だ。唐突に出てきた「960時間」という数字と併せ、関係者も一様に驚きの表情を隠せない。
    ▼計画は「長時間労働を是正するための環境整備を強力に推進する」と言うが、盛り上がりつつあった機運に水を差してはいないだろうか。労働環境の格差がますます拡大する中、若者の目にトラックドライバーという職種は、果たして魅力あるものに映るのだろうか。

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