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2017年6月19日付 2660号

次期物流施策大綱の検討最終案に意見多数、座長一任で取りまとめ “物流危機”の克服へ  国交省

 国土交通省は15日、東京都千代田区の同省で第7回物流施策大綱に関する有識者検討会を開き、提言の最終案について審議。

 1日に開かれた前回会合での意見を踏まえ①サプライチェーン全体の効率化・価値創造に資するとともにそれ自体が高い付加価値を生み出す物流への変革=「繋がる」②物流の透明化・効率化とそれを通じた働き方改革の実現=「見える」③ストック効果発現等のインフラの機能強化による効率的な物流の実現=「支える」④災害等のリスク・地球環境問題に対応するサステイナブルな物流の構築=「備える」⑤新技術(IoT、BD、AI等)の活用による“物流革命”=「革命的に変化する」⑥人材の育成・物流への理解を深めるための国民への啓発活動等=「育てる」―の6項目を提言案として示し、おおむね了承されたものの、複数の委員から意見が出され、最終的な取りまとめは座長に一任された。

 提言案のうち、「新技術(IoT、BD、AI等)の活用による“物流革命”=革命的に変化する」は、前回案の「飛躍的な効率化をもたらす新技術の活用等=進化する」から大幅に改められ①IoT(モノのインターネット)、BD(ビッグデータ)、AI(人工知能)等の活用によるサプライチェーン全体の最適化②隊列走行および自動運転による運送の飛躍的な効率化③ドローンの物流への導入による空の産業革命④物流施設での革新的な生産性向上と省力化⑤船舶のIoT化・自動運航船―について、具体的な活用方策や効果、必要な取り組みなどを盛り込んでいる。

 また、「ストック効果発現等のインフラの機能強化による効率的な物流の実現=支える」については、「ハードインフラ・ソフトインフラ一体となった社会インフラとしての機能向上」との副題を追加するとともに、内航海運での安定的輸送の確保・生産性向上に向けた方策や、鉄道輸送における幹線輸送力の強化に向けた検討の必要性などを加えた。

 大綱で示された方向性に基づく具体的な施策の進め方については、「政府が一体となって計画的に実施していくため、総合物流施策推進プログラムを策定し、PDCA方式により進捗管理を行うとともに、施策の検証を通して必要な修正を行うことにより、予定する効果が発揮されるようにしていくべき」と記述。

 また、「PDCAサイクルのC(Check)に当たるフォローアップにおいては十分な作業期間を確保するとともに、官民が一体となってその時点における施策の進捗状況と残されている課題を共有し、解決・改善の手法を検討することでより良い次のA(Act)につなげていくことが必要であり、こうした点を十分踏まえた上でより効果的なフォローアップの枠組みを検討する必要がある」としている。

 これらの提言案に対し委員からは、「情報の共通プラットフォーム構築が重要。データだけでなく、システムの共通化も必要」「ハードインフラ整備の必要性を強調してほしい」「データについては、標準化に加え、渡し方や順序なども重要」「標準化を進めないと高コスト物流になるということを冒頭で示すべき」「事業者数が多いトラック業界が全体最適を進めるには、行動変革が必要となるので、きめ細かな支援が必要。無理なく進めることができるよう配慮してほしい」などの意見が出された。

 これらの意見を踏まえ、最終的な取りまとめを座長一任で行い公表、今夏の閣議決定につなげる。

羽田空港を活用しインド・デリー向け業界最速のサービス  日通

 日本通運(齋藤充社長)は15日、日本発インド・デリー向け航空混載サービス「Indian Midnight Express」を発売した。航空貨物輸送では業界最速のサービス。

 特長として◎業界最速リードタイムの保証=羽田空港発深夜フライト活用により、出荷日の翌日早朝にデリー空港到着を保証◎日本全国どこからでも利用可能=羽田空港内の自社保税上屋に午後8時までに搬入された貨物は、当日フライトに搭載、翌日早朝にデリー空港に到着となる。国内航空ネットワークが充実している羽田空港の利用により、首都圏近郊だけではなく、全国各地から利用できる◎ハンドキャリーと比べ安価な運賃設定=空港間運賃でハンドキャリーの5分の1~10分の1程度―を挙げている。

 同社はフォワーダー業者として唯一、羽田空港内に国内・国際貨物の双方を取り扱う作業拠点を運営しており、国内線で到着した国際貨物を空港内で仕分し、そのまま国際線へ積み込むことが可能。

 この利点を最大限に活用し、国内各地から発送された荷物を当日深夜の羽田発デリー向けの便に積み込むことで、ハンドキャリーと同等のスピードをより低コストで実現した。

 デリー到着後も、インド日通デリー支店による自社輸入通関・国内配送手配が可能。

 緊急輸送では、自社社員または委託先のスタッフが荷物と同じ航空機に乗り、手荷物または預け入れ貨物として到着空港での通関を行うハンドキャリーと呼ばれる方法が一般的だが、インドへのハンドキャリーには、就労ビザを有した人員が必要で、費用が高額になるほか、コンプライアンスの面でも問題となるケースがあった。

今週掲載トピック一覧

  • ☆ウォッチ(73) 『最近の台湾の産業と物流』
    ☆日中ビジネスワンポイント(164) 『ゴールデンウィークの旅(1)』

  • ☆ロジネットジャパン、 空きスペース活用で鉄道貨物輸送拡大 トレーラーのスイッチ輸送も
    ☆通運連盟が通常総会、渡邉健二会長を新任「時代にあわせ物流変える」
    ☆全通連が国大会、JR貨物と連携して発展へ
    ☆日倉協が通常総会、新会長に木納裕三井倉庫社長「活動指針引き継ぎ業界の健全な発展に寄与」
    ☆SGホールディングスが東証に上場申請、「アジアを代表する総合物流企業グループ」のステータス確保へ
    ☆国交省が安全規則の解釈示す 乗務日報の待機時間30分未満は省略可
    ☆長距離フェリー協が定時総会、SOx規制対応やモーダルシフト推進など17年度事業計画承認
    ☆JR貨物の田村社長らが会見 モーダルシフトの実現に向けて集配部分のコスト削減や駅頭積替施設拡充を重要視
    ☆労政審が大臣建議、時間外労働の上限規制について
    ☆福山通運が広島県との間で包括的連携を締結、県民へのサービス向上と地域社会活性化へ
    ☆日本オイルターミナル、取扱数量増加で5年ぶり増収確保
    ☆テルウェルが第27回年次総会・研修会を開催、引越の成功・失敗談を披露
    ☆パナソニックが宅配ボックス実証実験の最終結果報告を発表、平均再配達率49%から8%に低減し労働時5間削減に寄与
    ☆鉄貨協が5年程度先の輸送動向見通しを荷主にアンケート トラック確保難懸念

今週のユソー編集室

  • ▼先々週から先週にかけて、全国通運連盟、全国通運業連合会が相次いで総会を開催しており、総会や懇親会の場で、国土交通省幹部が来賓あいさつを行っている。
    ▼そのうち重田雅史物流審議官は「モーダルシフトが提唱されて30年以上経過したが、“真芯で打ち返した”のはここ2~3年のこと」と面白い表現で、近年のモーダルシフト機運の盛り上がりを表現した。
    ▼その表現どおり、モーダルシフトが最初に提唱されたのは、36年前の1981年運輸政策審議会答申の中だとされている。当時は今のような環境対策や労働力不足対策としてではなく、省エネルギー対策として提唱されものだという。
    ▼だが、モーダルシフトは思うように進展せず、2006年にはモーダルシフト化率の数値も非公表となった。今モーダルシフトは再び脚光を浴び始めている。関係者の一体となった取り組みで“真芯で打った”ボールがホームランとなるよう、願ってやまない。

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