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2017年6月12日付 2659号

吉野新体制が始動、組織強化など推進へ 通常総会・全国大会開く  日貨協連

吉野新会長 全国大会の模様

 日本貨物運送協同組合連合会は8日、鹿児島市の「鹿児島サンロイヤルホテル」で第53回通常総会を開き、研修テキスト販売収入の増加などにより大幅増収となった2016年度損益計算書案などを承認。任期満了に伴う役員改選では、退任した古屋芳彦会長の後任に吉野雅山副会長(愛知県貨物運送協同組合連合会会長)を選任した。また、総会後には第13回全国大会を開き、原口泉志學館大学教授による講演「大河ドラマ西郷隆盛」で知識を深めるとともに、吉野新会長の下、協同組合組織の強化対策推進や燃料価格の地域差是正などに向け一致結束していくことを確認した。

 総会では、16年度事業報告の承認や17年度事業計画の決定、任期満了に伴う役員改選などを行い、16年度事業報告では「組合員事業者の事業コスト低減と協同組合の経営基盤強化に資する各種経済事業の推進」など7項目の重点施策を基本に各常任委員会で積極的な活動を実施したことを説明。組織見直し特別委員会からは、現行の7委員会を4委員会程度に再編・統廃合することなどを盛り込んだ最終答申案が示され承認された。

 16年度損益計算書案では、保険事業での安定的な収入確保や研修テキスト販売収入を1億2141万円計上するなど、事業収益が拡大していることが示された。

 17年度は、「連合会・協同組合組織の強化対策と政策的課題対策の推進」など、重点施策6項目を基本に「組織見直し特別委員会」の答申を踏まえた取り組みを推進する。

 役員改選では、吉野会長のほか、副会長、専務理事らを選出した。副会長、専務理事、名誉会長の氏名は次のとおり(敬称略)。

 【副会長】中川才助、奈良幹男、庄子清一、石川和夫、岩下勝美、西尾保幸、御手洗安、深田康氏【専務理事】村田省蔵【名誉会長】石川和昌、小笠原和俊、杉本守巧、古屋芳彦

 総会後に関係者約440人参加の下で開かれた第13回全国大会であいさつした吉野会長は、「手をこまねいていては生き残ることはできない」と述べ、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などを活用しながら人手不足への対応を行っていく必要があるとの考えを示す一方、実際に取り組みを進めることができるのは大企業などに限られると指摘。相互扶助の精神に基づき、全国の仲間とともに中小企業での課題解決に取り組んでいくとの姿勢を示すとともに、協同組合連合会が会員に役立つよう副会長をはじめとする役員らと「業界を盛り立てて頑張っていきたい」と抱負を述べた。

山内・長尾両社長が会見、大口荷主との交渉は 着地点見えつつあり  ヤマトHD・ヤマト運輸

山内社長 長尾社長

 ヤマトホールディングスの山内雅喜社長とヤマト運輸の長尾裕社長は8日、都内で専門紙誌記者団と会見し、4月に発表した改革の進捗状況を説明した。

 このうちデリバリー事業の構造改革について触れた長尾社長は、最優先で契約条件の見直しに取り組んだ大口荷主約千社との交渉に関して、全て交渉に入っており、7割程度で複数回の交渉を行っていることを明らかにしたほか、現場に過度な負担となっていた当日配達荷物がほぼ解消されたことを説明し、下半期から荷物量・運賃の両面で交渉の成果が反映されるとの見通しを示した。

 また約1万人の採用を打ち出している点について、特にパート社員の採用が進んでいるものの、同程度の離職者も発生しているなど「もがいている状況」と表現。関東地区での採用専門のセンター立ち上げやフォロー研修の実施など、採用方法の見直しと定着率向上の取り組みを進めていることを紹介した。

 このほか大口荷主との交渉で着地点が見えつつあることを踏まえ、荷物量と必要な労働力の計算を始めるタイミングにきていること、総量コントロールは12月のみ週ごと、その他は月ごとの出荷量の契約とすること、大口荷主の運賃算出の根拠とする法人顧客プライシングシステムはプロトタイプができあがりつつあり、完成次第大口契約を締結している約1万社全ての条件を精査すること、などの考えを示した。

 業務の効率化では、センターの負担を減少させるため、現在各センターで行っている集配車ごとの仕分作業をベースで行うよう変更する取り組みについて、マテハン機器の変更などを含め「新しい試み」と強調。年明けからトライアルに入るよう準備を進めていることを明らかにした。

 一方の山内社長は働き方改革に触れ、グループ各社でICT(情報通信技術)を活用した多様な働き方実現や業務の標準化に取り組む考えを示すとともに、ヤマト運輸の働き方改革では、自身を含む経営トップが各地域で直接現場の声を聞いていくとした。

 また、グループ全体の成長戦略として、企業間物流の強化・アジアの越境物流・欧米を含めた国際小口保冷物流の拡大に力を入れていく方針を掲げたほか、社会インフラとしてのオープン型宅配ロッカーの重要性を指摘した。

 その上で当面従業員の満足度を優先しながら、最終的に社会、顧客、従業員、株主の満足最大化を追求する今までの方針を堅持していく姿勢を強調した。

今週掲載トピック一覧

  • ☆特集・営業倉庫
     寄稿-国土交通省大臣官房参事官(物流産業)・川上泰司氏
      『物流への期待・要請 的確に把握し応える』
     インタビュー-日本倉庫協会常務理事・小笠原審氏
    ☆四文字 『石油危機の「業界状況」』

  • ☆JIFFAが第6回通常総会開催、目標に掲げた会員数500社を達成
    ☆交通労連が政策討論集会開催、時間外労働の上限規制に関して5年後の一般側適用や猶予期間中の年間総拘束時間短縮など求める
    ☆日倉協・日冷倉協が自民党物流倉庫振興推進議員連盟の総会で税制・予算を要望
    ☆セイノーHDが「小さな親切運動」でゴミ拾いなど実施、業務提携する福山通運も参加
    ☆埼玉ト協が通常総会開催、鳥居会長を再任 遠藤・瀬山副会長を新任
    ☆千葉ト協が通常総会開催、角田会長があいさつで事故防止対策に積極的に取り組む意向
    ☆佐川急便が働き方改革の一環で週休三日制の正社員ドライバーの募集を開始、トライアルを強調
    ☆日通がミャンマーにティワラ・ロジスティクス・センターを開設、高温多湿の現地気候に合わせて1千平方メートルの定温除湿庫を設置
    ☆カンダHDが17年3月期会社説明会、人材確保へ雇用形態見直しなど五つの施策
    ☆国交省が自動車運送事業の交通事故対策検討委開く、事業用自動車総合安全プランの数値目標例を示す
    ☆全ト協・日貨協連、5月WebKIT成約運賃指数は114と高い水準維持
    ☆物流連、9月4~8日に第4回インターンシップ開催 昨年より1社増の32社が参加

今週のユソー編集室

  • ▼昨年のリオ五輪において、日本は陸上男子4×100メートルリレーで銀メダルに輝いた。個々のスピードで劣る日本はバトンパスなど連携の技術を磨き、他国を上回ったという。
    ▼次期総合物流施策大綱の提言素案を見て、ふとリオ五輪のリレーが思い起こされた。素案では連携の重要性が再三指摘され、個々の努力が限界に達しつつある中で、連携を磨いて成長を目指す姿勢が、実によく似ていると思ったからだ。
    ▼ただ、一言で物流の連携と言っても、その意味するところは幅広い。事業者間の連携、輸送モード間の連携、情報の連携、さらには道路・物流施設・港湾・貨物駅・空港などといったインフラ間の連携も含まれるだろう。
    ▼先のリレーの件では、選手が共通理解を持って練習を重ねたという。連携の効率性を向上させるには、この共通理解が絶対条件だ。社会との共通理解を深め、物流面でも“メダル”という成果を挙げられるよう取り組みたい。

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