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2018年6月18日付 2706号

ホワイト経営認証の制度創設へ検討スタート、来年度の運用開始目指す  国交省

 国土交通省は11日、東京都千代田区の同省で第1回「自動車運送事業のホワイト経営の『見える化』検討会」を開き、働き方改革に積極的に取り組む自動車運送事業者の認証制度創設に向けた議論をスタートさせた。

 認証制度は、運転者として就職を希望する求職者が就職を選ぶ際や、荷主が取引先を選ぶ際の参考となるよう、長時間労働の是正をはじめとする働き方改革を重視した「ホワイト経営」への自動車運送事業者の取り組み状況を「見える化」するため創設するもので、検討会は野尻俊明流通経済大学長を座長に、馬渡雅敏全日本トラック協会物流政策委員長、圓山博嗣交通エコロジー・モビリティ財団交通環境対策部長、世永正伸運輸労連中央副執行委員長、貫正和交通労連トラック部会事務局長、慶島譲治交運労協事務局次長、平嶋隆司国交省自動車局貨物課長らで構成されている。

 第1回会合では、認証制度の基本的な考え方として(1)「二つ星」「三つ星」などの段階を設ける(2)認証に当たっては業界標準よりも高い水準を要求する(3)中立的な民間団体による運営を想定する(4)書類作成に慣れていない事業者でも申請しやすいように分かりやすく、書類作成の負担が小さい制度設計に留意する―ことなどを盛り込んだ事務局案が示された。

 「三つ星」などの段階設定については、労働基準関係法令や貨物自動車運送事業法などの違反が認められず、業界標準より高いレベルで労働環境整備を行っていれば「一つ星」が取得できるよう間口を広げる方向性が示されたものの、制度開始段階で「二つ星」や「三つ星」の申請を受け付けるかについては、判断が持ち越された。

 認証の取得単位は「事業者」とするが、複数の都道府県に事業所を有する事業者は、申請者の選択により、都道府県単位でも申請を可能とする。

 認証の有効期間は、当面2年間とするが、制度の定着状況を踏まえ、2回目以降の認証については期間延長を検討する。

 認証取得については、「国土交通省による取得の推奨」とし、具体的なインセンティブについては、認証マークの車両・ホームページ・事業所への掲示や求人票への記載、荷主企業などに対する認証団体からの利用呼びかけなどが想定されている。

 制度創設に向けて、労働組合と事業者にアンケートを実施する。

 労働組合アンケートでは検討会の委員が所属する全国組織から参加単組に対し、事業者アンケートでは委員所属の協会・連合会から傘下事業者に対し、必要に応じてサンプル抽出の上、アンケート用紙を送付。トラック・乗り合いバス・貸切バス・タクシーそれぞれについて、労働組合・事業者各50件以上の回収を目指す。

 労働組合アンケートでは、53項目からなる認証項目案について、必須にすべき項目などを選択してもらうとともに、追加すべき項目があれば具体的に提案してもらう。

 事業者アンケートでは、必須項目の選択のほか、認証制度が創設された場合の申請の意向や審査手数料の限度額、要望などについて尋ねる。

 今月中にアンケートを送付し、7月に回収、8月上旬に開かれる第2回検討会で結果を報告する。

 第2回検討会では、認証制度とインセンティブについての素案を示し、8月下旬の第3回検討会で報告書案を提示。9月以降に制度の創設準備を行い、来年度の制度運用開始を目指す。

インドでの完成車鉄道輸送実現可能性調査が経産省事業に採択  JR貨物・鴻池運輸

 JR貨物(田村修二社長)と鴻池運輸(鴻池忠彦社長)はこのほど、経済産業省が公示した「平成30年度質の高いインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業」(わが国企業によるインフラの海外展開促進調査事業)に対して、「インド国・日本企業のインド進出に資する完成車における鉄道輸送技術の実現可能性調査」で応募し、採択されたと発表した。

 調査の目標は、インドにおいて日本の鉄道輸送技術等を導入した完成車輸送ネットワークを構築し、完成車輸送のモーダルシフトを実現することにより、カーキャリア不足・交通渋滞・交通事故・環境問題などの諸課題の問題解決を図るとともに、日系自動車製造企業に貢献すること。調査は6月から2019年3月まで行う予定。

 鴻池運輸は16年10月に、インドに合弁会社を設立し、日系企業として初めて、鉄道コンテナ輸送に本格参入している。一方でJR貨物は、国内で完成車輸送用の輸送ツールなどの開発と実輸送の経験を持っていることから、両社の強みと経験を合わせることで、日本の鉄道輸送技術をインドに導入し、効率的で利便性の高い完成車輸送ネットワークを構築できる可能性があると考え、調査に応募したとしている。

今週掲載トピック一覧

  • ☆物流応援歌(3)『宅配危機を考える((1)再配達問題)』
    ☆ウォッチ(85) 『サプライチェーンの視点から見る中国の18年物流施策』

  • ☆日本通運神戸支店、西播磨に飲料関係の保管・流通加工等に適した機能・構造を持つ新センター竣工
    ☆通運連盟が通常総会開催、新理事長に川勝氏選任
    ☆日倉協が通常総会開催、新会長に松井三菱倉庫会長
    ☆交通労連が中央委と政策討論集会開催、さらなる時短追求へ適正運賃収受求める
    ☆日本経団連18年度事業方針、スマートロジの推進など物流分野への期待示す
    ☆JIFFAが通常総会開催、18年度最重要事項に教育・研修海外調査
    ☆全通連が全国大会開く、JR貨物と連携して鉄道貨物運送発展へ
    ☆日貨協連が総会・全国大会開く、吉野体制2年目に
    ☆カンダHDが会社説明会、今秋に越境EC新サービス「ペガサスマイチョイス」発売
    ☆JR貨物田村社長が在任中振り返る、印象深かったことは鉄道事業の黒字化
    ☆YFC・ヤマト運輸が「クロネコペイ」発売、ネット通販利用時のカード情報入力不要に
    ☆佐川急便、愛知県と産業振興など含む7項目の包括連携協定を締結
    ☆国交省・環境省、中小事業者対象に低炭素ディーゼルトラック導入補助の公募開始
    ☆アート、引越大手で初の楽天ペイ導入
    ☆JR貨物の18年度広報キャンペーン、8イベントに出展へ
    ☆SBS即配サポート、水銀使用品廃棄物の破砕機設置で適正処理が可能に
    ☆日野自動車、ドライバー不足などの課題解決に向けて新会社「Next Logistics Japan」設立

今週のユソー編集室

  • ▼国土交通省は、自動車運送事業での「ホワイト経営の見える化」に向けた認証制度創設の検討をスタートさせた。
    ▼「ホワイト経営」の意味するところは、「ブラック企業」の対義であるから、あらためてそれを「見える化」しなければならないところに業界の実情が透けるようで悲しい。
    ▼改善基準告示を無視した長時間労働や貨物自動車運送事業法に沿わない輸送の実態が半ば「定着」しているかのように言われることもある業界だけに、当たり前の決まり事を守っていることがアドバンテージになるというのは笑い話に近い。
    ▼評価制度がまずは「当たり前」を定着させた上で、新たな取り組みの契機となることを期待する。

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