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2018年10月15日付 2720号

人材確保対策の推進など、10項目の決議採択 第23回全国事業者大会  全ト協

坂本会長 全国大会の模様

 全日本トラック協会(坂本克己会長)は10日、高松市のサンポートホール高松で第23回全国トラック運送事業者大会を開催。全国から会員ら約1200人が参集し、パネルディスカッションを通じて交通事故対策としての健康管理のあり方や、トラック運送事業における働き方改革について学ぶとともに、人材不足対策やドライバー確保への環境整備に向けた適正運賃・料金収受に取り組むことなどを盛り込んだ大会決議を採択した。

 主催者あいさつの冒頭で坂本会長は、相次いで発生した自然災害の被災者に哀悼とお見舞いの言葉を述べた上で、緊急物資輸送に対するトラック協会会員の協力に感謝の意を示した。3月に成立した改正道路法については、重要物流道路制度創設など「トラックファースト」の考えに基づいており、災害時への対応強化にもなると説明。全ト協では本年を「道路改革元年」と位置付け、ミッシングリンクの解消やサービスエリア・パーキングエリアの有効活用などに向けた運動を展開し、トラックの社会への貢献度をさらに高めていく姿勢を示した。

 トラック運送業における労働力不足対策については、「以前からドライバーは“日本の財産”と申し上げている」とし、他産業並みの待遇を実現するための原資確保に向け、「トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン」の浸透・実施を進めるとともに、規制の適切な運用を図るため、議員立法による貨物自動車運送事業法の一部改正を実現させるとの考えをあらためて強調した。

 さらに、AIやIoTなどの新技術の活用にも積極的に取り組んでいくとした。

 パネルディスカッションでは、第1分科会で「交通事故防止対策と健康管理の推進について」、第2分科会で「人材確保対策と働き方改革について」をテーマに、各3事業者の代表者が自社の取り組みなどについて発表した。コーディネーター、パネリストは次のとおり。

 【第1分科会】◎コーディネーター=高柳勝二プロデキューブ社長◎パネリスト=村上哲也西尾運送社長・内畑谷剛関空運輸社長・生田友見原口商事常務

 【第2分科会】◎コーディネーター=小坂真弘日本PMIコンサルティング社長◎パネリスト=吉田雅弘須賀川東部運送社長・菱木博一菱木運送社長・辻直樹マイシン社長

 パネルディスカッション後の記念講演会では、元プロ野球の中畑清・石毛宏典両氏が、「人を育て、人を活かす人材活用術」をテーマに、監督時代の選手起用についてのエピソードなどを披露した。

 記念講演会の後、全体会議を再開。管内都県トラック協会間で緊急物資輸送車両の確保を相互に行う協定を締結した関東トラック協会の浅井隆会長に、阪本会長からトラック輸送振興顕彰「鈴木賞」が贈られた。

 大会決議では、四国トラック青年協議会の西應輝彦会長が①「働き方改革」の実現に向けた対策の推進②標準貨物自動車運送約款の明確化などを踏まえた適正運賃・料金の収受③人材確保対策の推進④参入規制の厳格化など規制緩和の見直し⑤新技術を活用した物流効率化の推進⑥適正化事業推進による法令遵守の徹底―など10項目を掲げた案文を読み上げ、満場一致で採択された。

 大会の最後に、香川県トラック協会の松本英高副会長の音頭で「ガンバローコール」を行い、大会決議に盛り込まれた内容の実現に向けて業界一丸となって取り組むことを誓った。

 次回全国事業者大会は、2019年10月2日に千葉市の幕張メッセで開催される。

米ベル社と新たな空の輸送モード構築で合意 19年に試験機開発  ヤマトHD

APTのイメージ画像

 ヤマトホールディングス(山内雅喜社長)は12日、米国のベルヘリコプター社との間で、無人の自律運行型ポッド輸送機(APT)の共同開発など、新たな空の輸送モード構築に向けた基本合意書を締結した。

 APTは電動垂直離着陸型で、空中でプロペラと翼を上向きから横向きに変えるティルトウイングを採用することで、最大時速約160キロメートルの高速飛行を可能とする。積載量は約7キログラム~450キログラム程度を想定しており、ベル社はAPTを、ヤマトは輸送容器の開発を、それぞれ担当する。2019年8月までに、積載量30キログラム程度の試験機を開発し、2020年代半ばまでに実用化を目指す。

 ヤマトHDではこれについて「新たな空の輸送モードを構築することで、新しい輸送需要喚起の可能性を探るのが狙い」としており、具体的な利用法については、宅急便輸送に活用するかまで含め、現段階では未定。今後、試験飛行の動向なども踏まえながら、目標とする性能などを明確化していく。

今週掲載トピック一覧

  • ☆物流応援歌(7)『日本産農水産食品 輸出振興と物流』
    ☆ウォッチ(89) 『「氷上のシルクロード」北極海航路について』
    ☆四文字 『運賃ダンピング「業界悪行」』
    ☆人物ウィークリー、(一社)東京都トラック協会・飯田勇一副会長

  • ☆日通、北関東インランドデポの運用によるコンテナラウンドユースへ向けて吉田運送と業務提携
    ☆セイノーHD、新ビジネス展開で植物工場事業に進出
    ☆全ト協・日貨協連、9月のWebKIT成約運賃指数は136で2ヵ月連続過去最高更新
    ☆日通労連が第19回定期大会、入社から65歳までの働き方で加盟組合と情報共有
    ☆日立物流が10日にAITと資本業務提携を締結、国際物流でシナジー追求へ
    ☆ヤマト運輸が関東支社を分割、全国11支社体制に
    ☆日通、創立記念式典で齋藤社長があいさつ 安全・コンプライアンス徹底を
    ☆JR貨物、山陽線13日に運転再開で運転計画発表
    ☆国交省池田道路局長が会見、重要物流道路制度を年度内に一部指定
    ☆運輸労連がトラックドライバーアンケート結果まとめる、賃金は底上げ傾向も高齢化は一層進展
    ☆国交省が「女性ドライバー等が運転しやすいトラックのあり方検討会」開催、年内に取りまとめ
    ☆東京交運労協がトラックの日行動展開、ノベルティグッズなど配布
    ☆建交労東京・埼玉、大宮TSでトラックの日行動

今週のユソー編集室

  • ▼全ト協の坂本会長が提唱している、貨物自動車運送事業法の一部改正について、秋の臨時国会での成立を目指した活動が進められている。
    ▼坂本会長の言によれば、事業法の改正は、公正競争の確保や、適正運賃収受による賃金など労働条件の改善を企図したものと見られる。働き方改革関連法で、労働時間の短縮に伴う賃金の減少が不安視される中、大きな意味を持つものとなるだろう。
    ▼現在は、労働組合とも共同歩調を取りながら、さまざまな活動を展開していると思われる。法案の策定までは、なお曲折も予想されるが、業界を根本から変える可能性を秘めたこの取り組み、是が非でも成立を期待したい。

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