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2019年2月11日付 2735号

自家用トラックの活用や外国人ドライバー解禁など物流改革で提言  経済同友会

会見する渡邉委員長

 経済同友会の物流改革を通じた成長戦略委員会(委員長=渡邉健二日本通運会長)は5日、「経済成長と競争力強化に資する物流改革」とする提言を発表し、自家用トラックの有償運送を可能とする規制緩和や、新幹線による貨物輸送、外国人トラックドライバーの解禁などを求めた。

 提言は、渡邉委員長をはじめ、山内雅喜ヤマトホールディング社長、田村修二JR貨物会長ら物流業界を含む50人超の経済界の有力者で構成する委員会が、約1年半をかけて議論を重ねまとめたもの。

 深刻な人手不足・人口減少によるインフラ危機・環境問題や災害リスクへの対応など課題が山積する中、物流のあるべき姿として◎先進技術の積極的活用◎自然災害への強さと地球環境配慮への意識◎既存インフラの最大限の有効活用◎省人化・無人化◎物流コスト高騰を招く要因の解消―による物流改革の必要性を指摘。

 その上で提言では、「物流版シェアリングエコノミー」「先進技術活用」「聖域のない国内制度改革」の三つの視点と、「すぐに実現するもの」「20年~30年までに実現するもの」の二つの時間軸で、左表のとおり①自家用トラックの活用②新幹線貨物の実現③輸送容器や都市部施設の共同使用④規格の統一とプラットフォーム構築⑤自動倉庫・ロボットスーツの導入⑦ドローン・隊列走行等の実現⑧外国人ドライバーの活用⑨自動運転専用軌道など高速道路の新たな活用⑩荷役機械の自動化など港湾物流改革―等の具体的施策を盛り込んだ。

 自家用トラック活用では、輸配送が困難な地域に限定し、安全システムを導入するなど営業用と同等の安全水準が保たれる場合、自家用トラックによる有償貨物運送を認めるべきとし、新幹線貨物では、ダイヤに余力がある九州新幹線や北海道・東北新幹線の仙台以北の区間で、旧型の車両を改造して貨客混載輸送等を行うよう検討すべきと主張。

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通運連盟が全国大会を開催、モーダルシフトの事例紹介や連携・協働の重要性指摘

全国大会の模様

 全国通運連盟(渡邉健二会長)は6日、東京都千代田区のパレスホテル東京で、第14回鉄道利用運送推進全国大会を開催し、新たなモーダルシフトの事例紹介などを行うとともに、2019年度事業計画に反映させる重点取り組み事項を決議の形で採択した。

 大会には行政・JR貨物・鉄道利用運送(通運)事業者・荷主企業関係者らが出席。冒頭あいさつした渡邉会長は「通運連盟の最大の使命は鉄道コンテナ輸送へのモーダルシフトの推進」と語り、会員事業者相互の連携を元に生産性向上を進めながら、働き方改革にも取り組む必要があると指摘。定時大量性や環境優位性などの”強み”の発揮と、輸送障害などの”弱み”の克服による高品質な輸送サービスの提供に、一層力を入れていく考えを示した。

 来賓からは、国土交通省の松本年弘物流審議官とJR貨物の真貝康一社長があいさつ。

 松本物流審は、さらなる生産性向上のために、物流事業者側からの非効率解消の提案を求めるとともに、改正物効法のモーダルシフトに関する計画認定件数の拡大について、引き続き注力していく構えを強調。自然災害に関連して、インフラ強靭化に取り組む考えも示した。

 真貝社長は、トラックドライバーの労働力不足、環境対応、技術革新などを踏まえ、より合理的な輸送体系が求められているとの認識を示した上で、通運事業者とともにニーズの変化に対応していくと語り、輸送力の増強など商品力の向上にも取り組むとした。

 大会では引き続き、国土交通省の多田浩人大臣官房参事官(物流政策)が「最近の物流政策について」、JR貨物の犬飼新取締役鉄道ロジスティクス本部長が「JR貨物の将来に向けた取り組み」について、それぞれ説明。

 このうち犬飼取締役は、近未来の貨物駅の姿として、コンテナの移送・フォークリフト荷役・入換用機関車などの自動化・遠隔操縦化の実現を目指すことを明らかにした。

 事例紹介では、クリモトロジスティクス物流部の丸井義之積送管理グループ長と日本通運大阪コンテナ支店の唐谷吉哉営業センター所長が、「フォールドデッキ」と呼ばれる日本パレットプール製の鉄道コンテナに積載する折り畳み式の棚を活用して、31フィートコンテナ内で段積みを実現し、積載率効率向上と物流コスト削減に結び付けた事例を紹介。

 このほか、中越運送の五十嵐隆雄執行役員長岡ブロック長が、断熱パネルを用いた日本石油輸送の31フィートスーパーURコンテナにより、ブルボンの食品輸送をモーダルシフト化した事例について、大牟田運送の北原薫社長とニシム電子工業営業統括本部の菰方重広部長が、スマートフォンを活用してコンテナ内の荷物の挙動を確認する取り組みについて、内容を説明した。

 通運連盟の大和隆人常任理事の朗読により採択された大会決議では◎「鉄道コンテナお試しキャンペーン」の積極的活用◎大型高規格コンテナのラウンドユース支援◎トラック代行輸送等の強化など輸送障害時の迅速対応―などに取り組んでいくとした。

 大会後の交流会であいさつした渡邉会長は、発表事例を引用しながら、複数の関係者による連携・協働の取り組みが重要であることを指摘した。

今週掲載トピック一覧

  • ☆アベノミクス物流にとって『吉』か『凶』か(117)『消費税増税はアベノミクス終焉の引き金に(その5)』
    ☆四文字『鉄道と自動車「競争時代」』

  • ☆日貨協連が5月13日から「WebKIT2」を供用開始、最新のIT技術活用
    ☆全日通が春闘方針等決定、新社員・賃金制度へのスムーズな移行に取り組む
    ☆運輸労連の難波委員長が会見、2019春闘では先を見据え交渉を
    ☆全ト協・日貨協連、1月のWebKIT成約運賃指数は前年比で20ヵ月連続の増加、1月の最高値更新
    ☆社整審道路分科会物流小委員会、特車通行許可の期間を優良事業者は現行2年から4年に延長へ
    ☆SGHDが通期業績予想を上方修正、取扱個数も増加へ
    ☆安田倉庫が次の100年目指し長期ビジョン策定、新3ヵ年計画も発表
    ☆日新が東京都大田区に冷蔵物流センター新設、21年3月開業予定
    ☆国交省が「荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたセミナー」の好評受け追加開催、広島など4都市で
    ☆国交省が「プロドライバーの健康管理・労務管理の向上による事故防止に関するセミナー」を開催、200人超参加
    ☆国交省が国際港湾周辺の物流拠点高度化に関する補助事業の公募を開始、民間の整備を支援
    ☆国交省が「スワップボディコンテナ車両利活用促進に向けた検討会」、年度内に策定・公表
    ☆日倉協が記者説明会開催、災害備え全地区倉庫協会でIP無線機を配備
    ☆千葉県改善協議会、荷主の好事例PRし協力促進へ
    ☆丸運物流天津、市内で新倉庫の契約締結
    ☆NTTロジスコ、大阪府に新拠点・茨木物流センター開設
    ☆物流各社の第3四半期連結決算

今週のユソー編集室

  • ▼経済同友会は5日に発表した物流改革に関する提言で、外国人トラックドライバーの解禁を訴えた。
    ▼人手不足にあえぐトラック運送業界から見れば、社会や荷主の理解を前提に、日本語能力を持ち交通法規を遵守できる人材であれば、すぐにでも受け入れたいと考える事業者は多いはずだ。
    ▼アジアから見た日本の労働市場は、一部で劣悪な就労環境が放置されていることもあって、タイなどと比較して相対的に地位を下げているという話も聞く。
    ▼現時点では、先ほど挙げた前提条件をクリアするのは難しい。だが、解禁したのに誰も来ないという悲劇を防ぐために、まずは日本人ドライバーの就労環境改善が急務だ。

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