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2019年2月25日付 2737号

創立100周年に向けて、新たな長期ビジョンと新経営計画を策定  日通

会見する齋藤社長

 日本通運の齋藤充社長は22日、東京都港区の同本社で創立100周年に向けての新長期ビジョンと5ヵ年間の新経営計画「日通グループ経営計画2023~非連続な成長”Dynamic Growth”」の発表記者会見を開き、『グローバル市場で存在感を持つロジスティクスカンパニー』を目指す事業戦略等を説明した。

 新長期ビジョンは5年後に売上高2兆4千億円、ROE10%、10年後に営業利益率5%、創立100周年を迎える37年には売上高3兆5千~4兆円、海外売上高比率50%を目指すとし、新経営計画ではその実現に向けた「事業の成長戦略」と「長期ビジョン実現のための取り組み」の柱のもと、3年間の中間目標と最終年度の目標数値を設定した。

 事業の成長戦略では「日本事業の強靭化戦略」として収益性の向上に徹底的にこだわりグループ経営の基礎を固めるとしている。

 会見で齋藤社長は、営業利益が18年度見込みの770億円に対し、21年度目標数値が830億円と大きな伸びに設定していない点について、新経営計画期間は会社のあり方を変革するため一時的な大きなコストを要し、将来の飛躍に向けて「ジャンプの前にかがむ」期間と述べ、その要因の一つとして、働き方改革関連法施行を1年前倒し、この4月から実施する新人事・賃金制度を挙げ、その想定額19年度100億円、21年度180億円、23年度200億円となることを明らかにした。

 このほか、ホールディングス制への移行に関して「希望としてはある」と述べ、特に海外事業では決定スピードが重要となり、海外に権限を持たせた統括的機能などを含め、良い点・悪い点を検証しながら検討していきたとの考えを示した。

新社長に長尾氏内定、次の100年へ成長加速 喜ばれる企業へ  ヤマトHD

会見する山内社長(右)と長尾新社長(左)

 ヤマトホールディングスは21日に開いた取締役会で、新社長に長尾裕取締役執行役員兼ヤマト運輸社長を内定した。山内雅喜社長は代表権のない取締役会長に回り、ヤマト運輸社長には栗栖利蔵同代表取締役専務執行役員が就任する。いずれも4月1日付。

 同日都内で会見した山内社長は「当社は本年11月に創業100周年を迎えるが、現中期経営計画の最終年度であり、次期中計を策定する19年度に社長を交代し、次の100年に向け成長を加速化させることが狙い」と説明。長尾新社長を選んだ理由として「ヤマトのDNAをしっかりと受け継いでおり、新しい発想を生み出す構想力と、それを実行する統率力を持っている」ことを挙げた。

 また、社長交代の理由が、ヤマトホームコンビニエンス(YHC)の不適切請求によるものではないことも明言した。

 長尾新社長は「社長交代は2月初旬に告げられた。ヤマト運輸の社長として二人三脚で改革に取り組んでいる時でもあり、このタイミングかと正直驚いたが、山内の意思を理解し、引き継がなければならないと思った。現在行っているグループの経営構造改革を完結させ、次の100年に向けた新たな成長戦略を打ち出し、宅急便で培った経営資源を最適に配置し直して、お客さまに喜ばれる企業グループとしたい」と抱負を述べた。その上で、省人化・効率化の取り組み強化や、海外まで含めた法人顧客へのソリューション提供など、新たな領域に挑戦する姿勢も強調した。

 また「当社の最大の資源は21万人を超える社員」として「社員一人一人がお客さまの立場で考え行動できるよう、経営者として引き続き環境整備を行っていく」とも語った。

 長尾新社長はこのほか、現在取り組んでいるヤマト運輸の働き方改革がおおむね順調に進んでいるとの認識を示し、安全・CSR・働き方改革などの重要事項について、来年度から社長に直接報告が行くような体制を構築する考えとした上で、グループの他社にも広げていくとした。

 増大するEC荷物については「世の中のニーズに応えることは重要」と述べながら、宅急便以外の手段で配達する可能性を示唆。「あまり時間をかけてやる話ではない」として、早期に実現させたい意向をにじませた。

 YHCの案件では、国土交通省の指導に沿った業務改善に注力しながら、顧客ニーズに沿って引越商品のラインナップを再整備していく考えを示し、信頼回復に向けては「グループ全体で法人のお客さまに対するサービスレベルを上げていかなければならない。信頼回復は一朝一夕にはできない。日々、一社一社、まっとうなサービスを提供し、再び積み上げていくしかない」と強調した。

 【長尾裕(ながお・ゆたか)新社長略歴】1988年3月高崎経済大学経済学部卒業、同年4月ヤマト運輸入社、2004年4月山口主管支店長、06年4月埼玉主管支店長、09年4月TSS(Today Shopping Service)営業推進室長、10年4月執行役員関東支社長、13年4月常務執行役員、15年4月ヤマトHD執行役員兼ヤマト運輸社長。17年6月ヤマトHD取締役。1965年8月31日生まれ53歳。兵庫県出身。趣味は音楽鑑賞。洋楽・邦楽を問わずよく聞き、1人でコンサートにも行く。

今週掲載トピック一覧

  • ☆アベノミクス物流にとって『吉』か『凶』か(118)『消費税増税はアベノミクス終焉の引き金に(その6)』
    ☆四文字『自家用の台頭「輸送秩序」』
    ☆日中ビジネスワンポイント(184)『東西文化の十字路トルコへの旅』
    ☆人物ウィークリー、国土交通省総合政策局・宮島正悟国際物流課長

  • ☆全ト協が働き方改革実現に向けたアクションプランの解説書を公表、トラックが早急に取り組むべき事項について「概要版」と「詳細版」で解説
    ☆押入れ産業・黒川社長が会見、福岡を最重点エリアにマーケティング強化
    ☆中央協議会が3月下旬にホワイト物流国民運動の賛同企業・団体募集開始、10月に企業名公表
    ☆日通が国際物流の第3四半期業績発表、航空事業好調で輸出42%増に
    ☆SBSHD・鎌田社長が会見、過去最高売上高を達成し早期に3千億円目指す
    ☆山九の中国現地法人がグループ初の医療機器経営許可証を取得
    ☆三八五労組が定期大会を開催、春闘で昨年同等以上の妥結を目指す
    ☆埼玉ト協青年部会が20周年記念式典開催、ヒューマンネットワークの拡大を自負
    ☆埼玉県改善協議会、ガイドラインのブラッシュアップを図るため荷主団体に対してアンケート実施へ
    ☆国交省が「関係者の連携・協働による物流の生産性向上に資するシンポジウム」開催、新型パレット開発など効率化事例に学ぶ
    ☆ヤマト運輸など3者が福岡~由布院間で手ぶら観光を提供、5月まで試行
    ☆日倉協が「中小倉庫業経営セミナー」開催、働き方改革と人材確保など各社の取り組み事例披露
    ☆東ト協が船橋倉庫運用訓練実施、関係機関との協力体制確立へ

今週のユソー編集室

  • ▼最近のトラック運送業界は、やけに「ホワイト」が目に付く。事業者が従業員の働きやすさで認定を受ける「ホワイト経営」認証制度と、元請けトラック事業者を含む荷主企業や団体等が参加する「ホワイト物流推進運動」だ。
    ▼両者とも2019年度内には運営が開始されるようだが、前者の「ホワイト経営」については、後者と名前が紛らわしいことから、名称が変わる可能性が高いという。
    ▼「ホワイト」を連呼しなければならない理由は、おそらく「現状がブラックに近い」からだろう。改正貨物自動車運送事業と同様しっかりした運用を行ってもらい、いつか「ホワイトな物流」が当たり前になることを期待したい。

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