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2019年3月4日付 2738号

ASEAN 地域でのコールドチェーン展開でビジョン・戦略を策定、19年度から5年間対象  国交省

 国土交通省は2月27日、東京都港区のニューピア竹芝サウスタワーで第3回ASEANスマートコールドチェーン構想検討会を開き、わが国事業者がASEAN地域でコールドチェーン物流を展開するために関係機関が行うべき施策展開を盛り込んだビジョン・戦略を策定。2019年度からの5年間を対象期間として、ASEAN地域での食品温度管理の重要性に関する啓発やソフト・ハード両面での環境整備、現地法制度改善についての働きかけなどを行う。

 ビジョン・戦略は、①高付加価値な貨物需要創出②わが国事業者のための基盤整備③新たなコールドチェーンビジネスの創出④新技術の活用―の4本柱で構成(上表参照)。

 高付加価値な貨物需要創出では、消費者に対して食の安全確保の重要性などについての普及啓発を進めるとともに、ASEAN地域で約4割を占めるイスラム教徒に対応したハラル認証制度に関する情報取得・交換に努め、物流事業者の理解促進につなげる。

 基盤整備では、17年に英国規格協会が発行した「PAS1018」や、昨年日ASEAN交通大臣会合で正式承認された「日ASEANコールドチェーン物流ガイドライン」などをベースにした規格・基準の導入を通じて、わが国物流事業者の競争優位性を高める。また、現地政府への働きかけにより、わが国物流事業者がビジネス展開する際の障害となる法制度の改善を促す。

 新たなコールドチェーン創出では、商談会などを通じて、わが国物流事業者とASEAN荷主企業・物流事業者とのビジネス機会を創出するほか、モデル事業を実施してビジネス開発を支援する。

 モデル事業はこれまで、国土交通・農林水産・経済産業の各省が独自に行っていたが、19年度は連携して行い、流通各段階における課題抽出や解決方策の検討などを行う。

 新技術の活用では、RFIDによるトレーサビリティー機能強化や、IoT活用などによる効率化・最適化に向けて、わが国物流関連機器の導入を促進するとともに、グリーン化の観点から補助金制度をはじめとする環境負荷軽減機器購入を後押しする施策の導入を各国政府に推奨する。

 ビジョン・戦略で示された施策は、国交・農水・経産の3省のほか、JETRO(日本貿易振興機構)、JICA(国際協力機構)、JOIN(海外交通・都市開発事業支援機構)、JBIC(国際協力銀行)、DBJ(日本政策投資銀行)も連携して実施する。

 また、毎年度末にフォローアップ会議を開くほか、事業者のニーズ把握を目的に適宜アンケートを実施する。

インテルなどと共同で輸送状況可視化の新サービス発売  日通

 日本通運(齋藤充社長)は2月25日、インテル(鈴木国正社長)、日本ハネウェル(西巻宏社長)と協業し、最新のIoT技術を活用した「Global Cargo Watcher Advance(GCWA)」を発売した。

 医療品や精密機械など厳格な品質が要求される輸送の状況を可視化する新サービス。貨物に取り付けられたセンサータグ(子機)が、温度・湿度・衝撃・傾斜・照度・位置(センサータグとゲートウェイが通信した際のゲートウェイの位置情報)などのデータを計測し、トラックや倉庫内に設置されたゲートウェイ(親機)を通し、データをクラウド上にアップロードすることで、顧客と同社の双方で輸送状況をリアルタイムに把握できる。

 顧客は専用のウェブサイトを通じて貨物の所在把握や各項目の計測情報をグラフで閲覧でき、データの収集や分析にかかる時間などの手間を削減し、物流の省力化・効率化が図れる。

 このサービスは、インテルのテクノロジーを活用し、ハネウェルがセンサータグとゲートウェイ、ウェブサイトを用いたデバイスとシステムを構築、日通が物流サービスとして提供することで、物流におけるIoT活用を実現したもの。

 近年ますます厳格な温度管理が求められる医薬品や、わずかな衝撃も許されない精密機器、高度なセキュリティーが求められる高価値なコンシューマーデバイスの輸送等、輸送品質の担保が求められる顧客からの要望に応えるため開発したもので、三者は顧客の利便性向上と、生産性の改善や労働力不足といった物流業界が抱える課題の解決に向け、物流のIoT化推進について協業することに合意し、各社が提供する技術やサービスの成長・発展のため、相互協力の促進を目的とした覚書を締結した。この枠組みのもと、今後、蓄積した輸送情報をAI・機械学習を用いてビッグデータとして活用し、GCWAの機能強化を図っていく方針。

今週掲載トピック一覧

  • ☆引越特集(1)
     各社の施策
      日通
      サカイ引越センター
      セイノー引越
      アートコーポレーション
     全ト協「31年度引越繁忙期対策」
     国民生活センター「引越サービスの相談は18年度若干増加」
     エイチーム引越し侍「今繁忙期の料金は2割程度上昇」
    ☆アベノミクス物流にとって『吉』か『凶』か(119)『消費税増税はアベノミクス終焉の引き金に(その7)』

  • ☆SGHD、新社長に荒木佐川急便社長
    ☆全ト協青年部会が全国大会、全国の若手経営者が変革への挑戦誓う
    ☆日通、グループ経営計画2023セグメント別数値目標
    ☆日通、女子プロゴルファー原選手と所属契約
    ☆D.N.A、トラックドライバー甲子園でMVCにゴールド・スターとマイロジの2社を選出
    ☆SBSリコーロジ、マシン搬出入技能の特殊検修を実施
    ☆JR貨物・アサヒビール、線路直結倉庫利用したモーダルシフトで作業性と積載率向上を実現
    ☆運輸労連、大手要求が出揃い19春闘スタート
    ☆国交省、心臓疾患対策ガイドラインを年度内に取りまとめ

今週のユソー編集室

  • ▼花粉症の季節がやってきた。筆者も目のかゆみをこらえながら原稿を書いている。
    ▼物流を最前線で支えるトラックドライバーにも花粉は容赦なく降りかかる。くしゃみを連発しながらの運転やマスクを着用したままの荷役は、さぞかし辛いだろう。
    ▼花粉症で仕事を休むのは勇気がいるが、発熱や頭痛など風邪に似た症状を伴うこともあるようで侮れない。花粉症対策の薬もさまざま販売されているが、ハンドルを握るドライバーは眠気などの副作用にも注意が必要だ。
    ▼患者の多い花粉症だけに、人ぞれぞれの対処法があるだろう。安全運行の確保には、そうした対処法を講じることのできる環境と周囲の理解が不可欠だ。

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