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2019年3月25日付 2741号

後続有人隊列走行、ドライバーの休憩扱い望む意見 検討会でヒアリング調査の中間報告  国交省

 国土交通省は22日、東京都千代田区の同省で第3回「新しい物流システムに対応した高速道路インフラの活用に関する検討会」を開き、1~2月に実施した後続車無人状態でのトラック隊列走行実験の結果を報告するとともに、検討会の取りまとめに向けた骨子の「たたき台案」について審議した。

 後続無人隊列走行実験は、1月22日~2月26日にかけて、静岡県内の新東名高速浜松サービスエリア(SA)~遠州森町パーキングエリア(PA)間15キロメートルの区間で実施。先頭の有人運転車両と後続無人状態車両2台の合計3台で143回、2145キロメートルの本線走行を行った。

 SA・PAから本線への合流は84回行い、すべて後続車の自動合流が成功したが、走行中にGPS受信異常により3回ドライバーがハンドル操作を行った。また、外部要因によるものとして、一般車接近によるハンドル操作が3回、SA内での歩行車接近などで3回のブレーキ操作が発生した。大半の区間で、GPSによる制御を行ったが、道路の上空にネットが張られている区間については瞬間的に受信が途切れるため、「3Dライダー」と呼ばれる車載装置による制御が行われた。

 走行速度は、70キロメートルで車間10メートルだったが、来年度は80キロメートルでの実験を行う計画。また、今年度は荷台に積載の無い状態で実験を行ったが、今後はさまざまな積載パターンでの走行実験を行う。

 コストについては、現行の車両プラス1千万円程度に収まれば商業ベースでの運用が可能になると見込まれているが、幹線輸送で一定程度のボリュームがあり、投資余力のある大手事業者に限られる可能性が高い。

 検討会ではこのほか、日本自動車工業会によるトラック運送事業者へのヒアリング調査の中間報告が行われ、後続有人での隊列走行については、「後続車ドライバーの負担軽減により『みなし休憩』となれば運用上のメリットが大きい」などの意見が紹介された。

 また、後続無人での隊列走行には、インフラ整備などで時間を要すると見ている事業者が多いことや、隊列走行の技術を活用した物流センター内でのバースへの自動発着実現に期待を示す事業者の意見などが報告された。

 取りまとめに向けては①物流を取り巻く課題②高速道路を取り巻く課題③新しい物流システム④高速道路インフラの整備・活用の方向性⑤今後の課題―からなる骨子の「たたき台案」が事務局から示され、委員からは、隊列走行の先を見据えた内容を盛り込むべきとの指摘やビジネスの視点を反映させるべきなどの意見が出された。

 取りまとめは、年度内に行われる予定だったが、たたき台案に対する委員の意見などを反映させた上で、6月ごろまでに公表する。

県産品流通の仕向け地を大幅に拡大、新たな協定締結  ヤマト運輸・青森県・YGL

締結式の模様、左から長尾社長、三村知事、梅津会長

 ヤマト運輸(長尾裕社長)、青森県(三村申吾知事)、ヤマトグローバルロジスティクスジャパン(YGL、金井宏芳社長)の三者は19日、新青森県総合流通プラットフォーム構築に係る連携協定を締結した。

 ヤマト運輸と青森県は14年に連携協定を締結し、青森県総合流通プラットフォーム「A!Premium」を構築。航空機によるスピード輸送と保冷一貫輸送で、青森県産農林水産品の取引拡大に向けた取り組みを展開したほか、パリでのフェア実施、シンガポール・香港での食材試食提案会の開催など、販路拡大の支援も行っていた。新たな協定では、「A!Premium」を拡充し、ビジネスに即した柔軟な輸送方法や仕向地の拡大など、利用者の声を反映させることが目的としている。

 新協定の内容は①海外向け中ロット以上の輸送ニーズに対応した柔軟性の高いサービスの提供②青森空港の活用による輸出空港の拡大③海外輸送に係る通関等関連手続きをサポート―の3点。

 ①ではYGLが協定に加わったことで、販売ルート確立後の中ロット以上の生鮮品輸送ニーズにも応えられる体制を整備。②では、従来の仙台空港や沖縄国際物流ハブを活用した輸送方法に加え、青森空港から羽田空港や成田空港を経由し海外へ輸送するルートを確立。仕向地や搭載可能フライトを大幅に拡大するほか、締切時間の延長や県内サービス対象エリアの拡大なども実現していく。

 また、③では仕向地拡大に伴う新たな展開国への輸出手続きについて引き続きサポートしていくほか、貿易自由化に伴う手続き改正の情報についても、迅速に提供していく。

 三者は今後、青森県産品のさらなる輸出拡大に向け、物流・商流のサポートを強化するとともに、新たに加わったフォワーディングサービスについて、5月に青森県内4ヵ所で説明会を実施する考えとしている。

 同日青森県庁で行われた協定締結式には、長尾社長・三村知事・梅津克彦YGL会長らが出席した。

今週掲載トピック一覧

  • ☆アベノミクス物流にとって『吉』か『凶』か(120)『足元の日本経済は堅調なのか(その1)』
    ☆四文字『本来の原点「政策目標」』
    ☆人物ウィークリー、(一社)東京都トラック協会・岸澤武春副会長

  • ☆日通が4月15日付で本社組織を7本部に再編成、秋田取締役が副社長に昇格
    ☆保利佐川物流が4月から大連~北京~深圳間の鉄道輸送サービス開始
    ☆国交省、「国際海上コンテナの陸上における安全輸送ガイドライン・マニュアル」のドライバー認知度37%にとどまる
    ☆国交省、「重要物流道路」の年度内第一次指定が調整最終段階に
    ☆全日通の春闘妥結判断、新賃金制度を踏まえ一時金は前年実績確保
    ☆ヤマト運輸労組の春闘妥結判断、正社員・パート組合員とも時短・賃上げ実現へ
    ☆ヤマト運輸が春闘合意内容を発表、労働時間短縮しベア5599円に
    ☆ヤマト運輸が4月1日付で本社組織改正、構造改革を促進させ新たな価値創出へ
    ☆トナミ運輸信越が燕物流センターを新設、同社初の営業倉庫に
    ☆西濃運輸がグループ企業と貨客混載、タクシーによる荷物配達は中部初
    ☆押入れ産業が茨城・群馬・宮城県の3店舗を新規オープンで全国加盟店77店舗に
    ☆コラボデリバリーが18年度業績まとめる、売上高5億円を維持
    ☆東ト協連の運賃動向アンケート、約款届出状況8割も「交渉した」は4割
    ☆東京都改善協議会、コンサルティング事業の内容など確認
    ☆千葉県適正化実施機関が評議会を開催、AB評価6割切る
    ☆国交省が第4回「女性ドライバー等が運転しやすいトラックのあり方検討会」開催、年度内とりまとめへ
    ☆建交労東京・埼玉支部がトラックパレード開催、労働環境改善訴え約50台が参加

今週のユソー編集室

  • ▼先日行われた物流関係の会合で、トラック協会関係者が発言した。「商品が値上げされる際、物流費の高騰が理由に挙げられるが、物流事業者が法外な要求をしていると受け取られないか心配だ」。
    ▼今年の3月から5月にかけて、食料・飲料品を中心に、およそ30の商品が値上げされた、あるいは値上げされる予定だが、それらの理由には必ずと言っていいほど物流費の高騰が挙げられている。
    ▼物流業界の人手不足は周知されつつあるとは言え、食料品の値上げは生活を直撃する。だが、サービスに応じた適正なコストを負担し合う社会こそが理想なのであり、事業者はひるむことなく適正運賃を求めていくべきだと考える。

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