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2019年9月2日付 2761号

20年度予算概算要求の内容を公表 手待ち時間改善懇談会で対象品目拡大へ トラック事業での働き方改革加速も  国交省

 国土交通省は8月28日、2020年度予算概算要求の内容を公表。自動車局関連では、トラック事業での働き方改革推進として19年度予算比29%増の2億円を要求している。

 国土交通省全体の一般会計要求額は、「防災・減災、国土強靭化3ヵ年緊急対策」や東京オリンピック・パラリンピック開催後の経済好循環の維持・拡大に向けた関連予算などにより、10年ぶりに7兆円台となる7兆101億円で、19年度予算比で18%の増額。

 自動車局関連は、19年度予算比18%増の24億1900万円で、ASV(先進安全自動車)やドライブレコーダー(ドラレコ)等の導入支援は12%増の11億1千万円、自動車運送事業者に対する監査体制の強化は37%増の7800万円、事業用自動車の重大事故に関する事故調査機能の強化は5%増の6700万円、健康起因事故防止のために運転者向けスクリーニング検査の普及促進は17%増の5400万円となっている。

 ASV導入支援では、これまでの衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱防止警報装置、車両安定性制御装置、ドライバー異常時対応システム、先進ライト、側方衝突警報装置に、可変式速度超過防止装置を新たに対象に加えた上で、導入費用の2分の1を補助。デジタル式運行記録計・ドラレコについては、導入費用の3分の1、過労運転防止のための先進機器の導入補助では「ITを活用した遠隔地における点呼機器」「運転者の疲労状態を測定する機器」「運転者の睡眠状態等を測定する機器」を対象に、費用の2分の1を補助する。

 また、ドラレコなどを活用した社内安全教育の実施に対しては費用の3分の1を補助する。

 事業用自動車に対する監査体制の強化では、民間指定機関による巡回指導との連携強化を進めるほか、監査業務の効率化を図るため、ICT(タブレット)を導入し、監査実施場所と本省・地方運輸局を通信で結び、情報の共有を図る。

 トラック事業での働き方改革推進では、19年度に加工食品、住宅用資材、紙・パルプで開催してきた手待ち時間改善に向けた懇談会を、その他の品目についても開催するとともに、荷待ち・荷役・労働時間などに関する実態調査を行う。

 環境関連では、電気・ハイブリッドトラックなどに補助を行う地域交通のグリーン化に向けた次世自動車の普及促進で50%増の7億9400万円を要求しているほか、大型車の低炭素化に向けた長期的な対策の推進としてICT技術活用によるソフト対策などの調査・検討として新規に3千万円を盛り込んでいる。

eVTOLシステムの機能実証実験に成功 20年代前半のサービス開始へ  ヤマトHD・ベル

「APT70」 「PUPA70XG」

 ヤマトホールディングス(長尾裕社長)とベル(ミッチ・スナイダーCEO)は8月27日、米国テキサス州フォートワース郊外で、ベルが開発した自律運航型ポッド輸送機「APT70」と、ヤマトHDが開発した荷物空輸ポッドユニット「PUPA70XG」(ピューパ)の機能実証実験に成功したと発表した。電動垂直離着陸(eVTOL)システムによる、2020年代前半のサービス開始に向けた取り組みの第一弾となるもの。

 「APT70」はテイルシッター型の電動垂直離着陸機で、32キログラム(70ポンド)の荷物を積載して時速160キロメートル以上で飛行できる。「PUPA70XG」は「APT70」などに結合して荷物を空輸できる貨物ユニットで、積載可能重量は32キログラム。空輸後は地上で台車として複数荷主への小口配達業務にそのまま利用できる点が特徴。

 実験は現地時間の26日朝に行われ、長尾社長とスナイダーCEOら約50人が参加。APTの飛行とPUPAの取り扱いの二つを別個に行い①APTの空力特性を最適化した姿勢での自律飛行②飛行中および地上での作業時の高い安全性と可用性③空輸からラストワンマイルへのシームレスな輸送形態の遷移④荷物の格納および取り出しに関する取り扱いの容易さ―が実証されたとしている。なお、今回はAPTの飛行実験にPUPAは搭載されていない。
 ヤマトHDは、都心部でのeVTOLシステムの運用を想定しており、今後PUPAの積載重量増大などを図りながら、具体的な荷主需要の掘り起こしにも着手し、APTの能力増強と併せて開発を進めていく方針。



△「APT70」飛行実験の模様


△「PUPA70XG」の稼働イメージ

今週掲載トピック一覧

  • ☆物流総合効率化法の認定一覧(2018年7月2日~19年8月8日)
    ☆アベノミクス物流にとって「吉」か「凶」か(130) 『ヤマトの業績は早晩改善へ向かうと予想する根拠(その2)』
    ☆物流応援歌(18)『東京オリパラと東京湾混雑問題について=海コン輸送事業者の視点から』
    ☆日中ビジネスワンポイント(190)『中国のことわざいろいろ』

  • ☆国交省物流部門概算要求、エネ特でドローン機材や庫内ロボットなど新規要求
    ☆日通が国内ブロック188支店を74支店削減し114支店に
    ☆日通が国内輸送ネットワーク強化に向けて開発した「NEX-NETプロテクトBOX」の運用開始
    ☆JADMA、18年度通販売上高は8兆円市場に拡大
    ☆日貨協連が2019年度第1回WebKIT実務担当者研修会、WebKIT2に改善望む意見も
    ☆日新、21年3月東京都大田区に平和島冷蔵物流センター開設へ
    ☆運輸労連東京が定期大会開催、トラック最賃確立し産業間格差是正へ
    ☆東京都が20年オリパラの首都高ロードプライシング案まとめる、物流車両など除外へ
    ☆金井国交省大臣官房審議官(公共交通・物流政策)が就任会見、異なる輸送モードを横断的に調整推進
    ☆吉田関運局長が就任会見で抱負、若年労働者の確保に向け物流の情報を発信
    ☆日通の第1四半期国際物流業績、米中摩擦で航空輸出が苦戦
    ☆日本包装技術協会が「2019日本パッケージングコンテスト」表彰式を開催
    ☆物流連がインターンシップ開催、学生約120人が参加
    ☆国交省自動車局新任課長級3氏(星企画室長、石田安全政策課長、早船旅客課長)、就任会見での発言要旨

今週のユソー編集室

  • ▼上欄記事のとおり、各省の来年度予算概算要求が締め切られた。物流に関連の深い国土交通省は、自然災害激甚化への対応などを背景に一般会計の要求額が10年ぶりに7兆円を超えた。
    ▼消費税引き上げで負担が増すタイミングではあるが、国民の生命・財産を守るために必要な予算は、丁寧な説明と国民からの理解を得た上で、しっかりと確保する必要がある。もちろん、前提となるのは、無駄のない要求と適正な執行だ。
    ▼自動車局や物流部門では、労働力不足対策で、新規や拡充要求が目立つ。自然災害と同列に考えることはできないが、国民生活と経済活動を支える物流が機能不全に陥らないための投資は不可欠だ。

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