物流・輸送の専門紙、輸送新聞はこれからも輸送産業の発展に貢献してまいります。

文字サイズ

2019年10月21日付 2767号

台風19号の被災地へ支援物資輸送を展開、国はプッシュ型実施  全ト協・地方ト協

 12日夜から翌13日朝にかけて日本列島を南北に縦断した台風19号は、関東・甲信越・東北の各地方に甚大な被害をもたらした。国土交通省によれば18日午前5時現在、高速道路4路線4区間、直轄国道3路線7区間、補助国道28路線44区間などの被災・通行止めが発生している。

 トラック関係では、73事業者で営業所、車両等の浸水被害があったほか、宅配4事業者で東日本を中心に集配遅延等が発生している。

 鉄道も一部区間が不通となり、JR貨物と鉄道利用運送(通運)事業者が代行輸送を展開している。

 そうした中、内閣府は支援物資のプッシュ型輸送を行うため、長野・栃木・茨城・福島・宮城の各県の1次集積拠点向けに、食料品・水・毛布・段ボールベッドなどの輸送手配を実施するとともに、リエゾン(物流専門家)を派遣し、受け入れのための連絡調整を実施している。

 全日本トラック協会や各県トラック協会は被災地に向け、緊急物資輸送を実施している(左表参照)。

 国土交通省は17日、台風19号の被災地域に関係する貨物の運搬等について、特殊車両通行許可の処理を最優先に行い、迅速な許可証交付につなげる運用を開始した。

 また、16日には各運輸支局等と全日本トラック協会に対し、水没等により車両が使用不能となった場合や不通区間における鉄道コンテナシャシーによる代替輸送を実施する場合は、一時的かつ緊急的な措置として①自社営業所間の車両移動に伴う事業計画変更の手続等について事後手続 (事後届出等)によることを可能とする②使用不能となった車両に代替する車両について、事前に事業計画変更届出を行うことによりレンタカーによる増車を可能とする―など、貨物自動車運送事業法の柔軟な運用を含め最大限の支援を行うとする通達を発出した。

台風19号による物流企業への影響、関東・東北・甲信越で集配停止や遅延も

 12日から13日にかけて日本を襲った台風19号は、物流企業各社にも大きな影響を及ぼした。

 JR貨物は、東海・関東・東北地区を通過・発着する貨物列車について11~17日の間にコンテナ列車512本、車扱28本が運休した。

 18日午前の時点で、東北線新白河~岩沼間、中央線四方津~梁川間・高尾~相模湖間などで貨物列車が運行できない状況となっているため、今後も運休列車が増加する見込み。武蔵野線府中本町~梶ヶ谷タ間も土砂流入により運転を見合わせているが、今週中には運転が再開できる見通しとなっている。

 中央線については、一部区間で土砂流入により運転を見合わせていたが、18日に旅客列車が運転を再開。貨物列車については、今月末の運転再開を見込んでいる。

 こうした状況に対しJR貨物では、列車の迂回やトラックによる代行輸送を実施。迂回列車は東北線の不通区間を避ける形で、名古屋タ~札幌タ間、隅田川~札幌タ間で各1往復(各列車片道当たりコンテナ100個)を運転。

 トラック代行輸送については17日から実施している。

 また、21日にコンテナ輸送品質向上キャンペーンの一環として開催を予定していた、全国荷役作業競技会を中止した。

 日本通運は18日午前9時現在、アロー便で岩手県、宮城県、茨城県、栃木県、群馬県、神奈川県、長野県の一部地域で集配不能となっており、宮城県・福島県・茨城県・埼玉県・東京都・神奈川県・長野県の一部、山梨県全域で配達遅延が生じている。

 国内航空便についても東北・関東甲信地方の一部集配に遅延が発生している。

 ヤマト運輸は18日午後2時現在、東京都奥多摩町日原宛てと長野市の一部地域宛ての全ての荷物の受付を停止。また、長野県北部地域宛てのクール宅急便の受付を停止している。

 このほか宮城県・福島県・長野県の一部地域においても遅延が発生している。

 佐川急便は18日午後2時現在、長野市穂保で荷物の集荷・配達を中止していたが、同日中に再開。

 また、東北地方で発生したJR貨物の輸送障害により、関東地方から北海道向け荷物に大幅な遅延が発生している。

 西濃運輸は18日午前9時現在、岩手県宮古市・釜石市、宮城県伊具郡、茨城県久慈郡、埼玉県川越市・東松山市、東京都西多摩郡、長野県長野市・上田市などの一部で集荷・配達を見合わせている。

 また、宮城県・福島県・栃木県・群馬県・神奈川県・長野県の一部で遅延が発生している。

 トナミ運輸は17日午前10時現在、関東と信越で一部配達の見合わせや遅延が発生しているとしており、その他のエリアでも交通規制等の状況により、幹線輸送や集荷・配達に支障が生じる可能性を示唆している。

 福山通運は18日午前9時現在、宮城県・福島県・茨城県・埼玉県・東京都・神奈川県・山梨県・長野県のそれぞれ一部で集荷・配達を見合わせているほか、東北・関東・甲信越の各地域で配送が遅延する可能性があるとしている。

 第一貨物は18日越午前9時現在、宮城県・神奈川県・山梨県・長野県の一部で配送の見合わせや半日~1日の配送遅延が発生。また、それらに加えて福島県・埼玉県・千葉県で半日~1日の配送遅延が発生している。

今週掲載トピック一覧

  • ☆特集、全ト協第51回全国トラックドライバー・コンテスト
      26~27日に学科・実技競技、151人の選手が出場
      坂本会長あいさつ「100回大会に向けて折り返しの第一歩」
      出場選手の平均年齢は40.0歳
      出場予定選手名簿
    ☆聖火が初めてやってきた東京1964(2)『悩みはブッツケ本番 一応の計画は作るものの来てみなければ分からぬ数量(2)』

  • ☆JR貨物の真貝社長が会見、台風19号で迂回輸送の実施やトラック代行に注力 トラックの手配などに課題も
    ☆運輸労連が運輸問題研究集会、労働条件の改善へ2~3年が正念場
    ☆日通が3分割の定温空調完備の北上3号倉庫を竣工、半導体関連に対応
    ☆名鉄運輸が奈良県生駒郡に奈良大和支店を開設
    ☆アデコがドライバーの働き方調査、体を休める時間の確保は4割超が『不十分』
    ☆日本郵便が「ゆうゆうメルカリ便」で『ゆうパケットプラス』の提供を開始
    ☆東京商工リサーチが発表した4~9月の道路貨物運送業の倒産件数は100件超に
    ☆国交省が側方衝突警報装置の要件に国際基準導入、保安基準等を一部改正
    ☆JR貨物が振興奨励賞と住田賞の受賞論文など発表、11月15日に表彰式
    ☆インド日通が社員参加型の社会貢献活動を推進

今週のユソー編集室

  • ▼台風19号は記録的な大雨と、それに伴う甚大な被害をもたらした。
    ▼こうした中、複数のトラック協会が、自治体との協定などに基づき、支援物資輸送を実施しているのは上欄記事のとおりである。
    ▼東日本大震災以降、その重要性があらためて注目され、数次にわたり実施されてきた支援物資輸送。課題の抽出や対応方策の積み上げで、ノウハウが蓄積されてきてはいるが、被災地域や被害の程度、被災者の数、必要とされる物資、集積拠点の状況、自治体のスキルなどが、その都度異なり、対応に当たる方々の苦労がしのばれる。
    ▼支援物資輸送に携わる多くの関係者に感謝しながら、被災地の1日も早い復旧・復興を願う。

戻る