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2019年11月25日付 2772号

今後20年の道路政策についてビジョン素案審議「LaaS実現目指す」 物流への対応盛り込む  社整審道路分科会基本政策部会

基本政策部会の模様

 社会資本整備審議会道路分科会基本政策部会は20日、東京都千代田区の国土交通省で第72回会合を開き、今後おおむね20年間の道路政策の方向性を提案するビジョンの素案について審議。物流への対応については、最適な搬送手段の選択が可能となる「Logistics as a Service」(LaaS)を実現するとしている。旅客輸送の分野では、スマートフォンなどから検索~予約~支払いを一度に行えるようにして、ユーザーの利便性を高めたり、移動の効率化により都市部での交通渋滞や環境問題、地方での交通弱者対策などの問題の解決に役立てようとする考え方「Mobility as a Service」(MaaS)の展開が進んでいるが、LaaSもIoTやAIなどの新技術の進展による「物流のインターネット化」を念頭に、あらゆる施設や手段を共有した最適ルートでの輸送を実現するものとして期待される。

 「人口減少時代に交流と交易により持続的な発展を遂げる日本」との仮称が付けられたビジョンの素案は、おおむね20年後の日本社会を見据え、人・社会と道路の関係を見直すことを念頭に構成。道路政策に関するビジョンの策定作業は2002年以来となる。

 物流関連については、「幹線道路ネットワークにおけるトラック隊列走行やラストマイルにおけるロボットやドローン配送等により物流システムの省人化を図るとともに、最適な搬送手段の選択が可能となるLogistics as a Serviceを実現する」としており、具体的なイメージとして①物流のインターネット化により、あらゆる施設や手段を共有して最適ルートで運ぶLaaSを実現②幹線物流を担う高速道路に専用走行空間とそれに直結するインフラ(連結・解除拠点、休憩スペース等)を整備し、トラック隊列走行を実現③ラストマイル輸送において、無人配送ビークル等の移動を可能とする道路空間を整備―を挙げている。

日本初の宅配特化型の小型商用EVを発表、来年1月導入開始  ヤマト運輸

EVを前に記念撮影をする(右から)長尾社長、栗栖社長、ゾマーCEO、オグリビー取締役

 ヤマト運輸(栗栖利蔵社長)は19日、DHLグループのストリートスクーター(STS、イエルグ・ゾマーCEO)と共同開発した、日本初となる宅配に特化した小型商用電気(EV)トラックの実車発表会を都内で開催し、栗栖社長が来年1月から首都圏で導入を開始すると発表した。

 STSの既存車両をベースに開発したもので、全長4.7メートル、全幅1.83メートル、車両総重量は2850キログラム、リチウムイオン電池を使用し6時間の普通充電で約100キロメートルを走行できる。冷凍冷蔵庫用の電源は別系統で用意され、充電口も別となっている。

 荷室は、最大積載量が軽ワゴン車の約2倍の600キログラム、ゴルフバッグを立てたまま積載できるよう130センチメートルの高さを確保し、全体の容積は3460リットル、うちドライ室が宅急便120サイズ45個分の2730リットル、冷凍冷蔵庫が合計730リットル。上段が冷蔵、下段が冷凍庫の2段構造で、積載量に応じて上下の仕切りを変更できる。

 温室効果ガスの削減のほか◎普通乗用車並みのシート高◎ドア側のシート側面をフラット化◎ドイツのオリジナル車両にはないエアコンを装備◎キーを操作せずに運転席や荷室の施錠開錠が可能◎積卸時に体に負担をかけない荷室床面地上高90センチメートルの設定◎車両の死角を解消するマルチビューモニターの装備―など、ドライバーの快適性・機能性・作業性・安全性に配慮した点が特長となっている。

 来年1月から4~5月ごろにかけて、東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県の大型店舗を中心に500台を順次導入。効果などの検証を重ね、30年度までに同社の全小型集配車両の半数に当たる約5千台の導入を目指していく。充電設備等まで含めた総投資額は約40億円で、500台が1日平均40キロメートル走行した場合のCO2削減効果は、年間約3500トンと試算している。

 実車発表会には栗栖社長、ゾマーCEOのほか、ヤマトホールディングスの長尾裕社長、DHLのトーマス・オグリビー取締役、国土交通省の福田守雄大臣官房審議官自動車局担当らが出席。冒頭あいさつした長尾社長は「この第一歩を大きなものにしていきたい」と語り、持続可能な社会の実現に向けて、今後もグループ一丸となって車両の環境負荷軽減等に取り組んでいく考えを強調。

 栗栖社長は、今回のEVトラック開発のポイントとして◎普通免許で運転可能◎荷台に乗り込まなくても積卸が可能◎身体的負担を軽減する設計で女性でも容易に使いこなせる―ことを挙げ、質疑応答でSTSをパートナーに選定した理由としては、日本のメーカーでは商用車のEVトラックがなかったことや、ドイツで試乗した際に非常に運転しやすい車両と感じたことなどと答えた。

今週掲載トピック一覧

  • ☆特集、日本通運関西警送支店が警送年末防犯訓練大会開催
    ☆アベノミクス物流にとって「吉」か「凶」か(135) 『駆け込み需要の規模は予想外に小さかった(その5)』
    ☆四文字 『中小の問題「荷役機械」』
    ☆聖火が初めてやってきた東京1964(5)『意欲的に取り組む五輪輸送に万全体制 日通航空 輸送本部を設置』
    ☆日中ビジネスワンポイント(193) 『ロシアの旅(その2)サンクトペテルブルク』
    ☆人物ウィークリー、千葉県トラック協会女子部会・水堀絹代幹事(キーラインエクセル社長)

  • ☆日通が東京・名古屋・大阪で「日通グローバルサポートセミナー」開催、海外引越をサポート
    ☆SGムービングが「2019年度品質選手権」を開催し東京営業所が優勝、11チームが出場
    ☆トナミHDが台風19号の被災者の救援と被災地の復興のための義援金に300万円寄付
    ☆東ト協紙・パルプ専門部会・日本製紙連合物流委員会・東京洋紙代理店物流委員会の3者合同の研修会
    ☆YSDが企業から個人への決済をキャッシュレス化、新サービス開始
    ☆日倉協が「第16回物流フォーラム~魅力のある倉庫業へ」を開催
    ☆日通が北京物資学院から「客員教授」を授与

今週のユソー編集室

  • ▼先日行われたSGモータースのメカニックコンテストでは、全国から選ばれた出場選手が日ごろ磨いた自動車診断・整備の腕前を競った。
    ▼やはりそうだろうなと感じたのは、出場選手の2割ほどが外国人選手だったことだ。自動車整備士への外国人の採用拡大は今後も続き、同社によれば2020年度には外国人整備士の割合は2割を超えるという。
    ▼一方で、同社の石部社長は、課題として定着率向上を挙げる。日本で手に入れた技術と資金を元に故国で一旗揚げたいと思う心情は、十分に理解できる。それを上回る何かを提供できなければ、外国人労働者は“補助戦力”の域にとどまり続けるということなのだろうか。

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