物流・輸送の専門紙、輸送新聞はこれからも輸送産業の発展に貢献してまいります。

文字サイズ

2020年11月9日付 2816号

物流のデジタル化などを加速度的に促進、次期大綱骨子案示す  国交省

 国土交通省は6日、東京都港区の赤坂インターシティコンファレンスで第5回「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」を開き、次期総合物流大綱の策定に向けた提言の骨子案について審議した。

 骨子案では冒頭、新型コロナウイルスにより物の動きが活発化したことで物流の社会インフラとしての重要性が高まっており、国民生活での存在感も飛躍的に高まることが予想されると指摘。劇的な社会的変化は、これまで遅れていた物流のデジタル化や構造変化を加速度的に促進させる誘因となる可能性があることから、「この機を逃さず、一気呵成に進める必要がある」としている。

 また、「エッセンシャル」という位置づけが再認識された物流の社会的価値を一層浸透させるとともに、SDGs(持続可能な開発目標)も踏まえながら、さまざまな主体を巻き込んで取り組みを進める必要があることから関係省庁が連携して施策の総合的・一体的な推進を図るため新たな大綱の策定が必要であるとしている。

 こうした視点を踏まえ①物流DX(デジタルトランスフォーメーション)や物流標準化によるサプライチェーン全体の徹底した最適化(簡素で滑らかな物流の実現)②トラックドライバーへの時間外労働規制も見据えた労働力不足対策の加速と物流構造改革の推進(担い手にやさしい物流の実現)③強靭性と持続可能性を確保した物流ネットワークの実現(強くてしなやかな物流の実現)―を次期大綱で見据えるべき物流施策の方向性として整理している。

 物流のデジタル化については、手続き書面の電子化徹底やサプライチェーン全体の最適化を見据えたデジタル化のほか、デジタル化を前提とした規制緩和や手続きの特例の検討などを挙げ、物流標準化については標準化のメリットを踏まえた荷主事業者等との連携・商慣行の見直しなどを例に挙げている。

 また、SIPをはじめとするデータ連携基盤の整備とメリット・将来像についての共有や「物流MaaS」の推進(トラックデータ連携の仕組みの確立、見える化による輸配送効率化)などを盛り込んでいる。

 トラックドライバーの時間外労働の上限規制遵守に向けては、リードタイムの改善や商慣行の見直し、検品レス推進などを例示。また、標準的な運賃の浸透や荷主・元請け事業者への働きかけ強化などを通じて、魅力的な労働環境の整備を進めるべきとしている。

 持続可能な物流ネットワークの構築については、自動配送ロボット・自動運転などの非接触・非対面推進やデジタル化に対応した物流インフラの整備などを挙げている。

 検討会は12月4日に次回会合を開いて取りまとめの本文案について審議、同22日の最終会合で取りまとめを行う計画。

中間決算はEC急拡大で利益増、データ経営「道半ば」 協業へも積極姿勢  ヤマトHD芝﨑副社長

 ヤマトホールディングス(長尾裕社長)の芝﨑健一副社長と樫本敦司執行役員は10月30日、電話会見で2021年3月期第2四半期連結決算の内容を説明した。

 新型コロナウイルスの感染拡大によりEC需要が急拡大したこともあって、宅急便の取扱個数が大幅に増加したことに加え、データ分析に基づく経営資源の最適配置による集配効率向上や、来年4月の経営統合に先立ち進めている幹線輸送の効率化推進などで費用を抑制した結果、前年同期は赤字だったデリバリー事業が黒字に転換するなど、大幅に業績を改善した。芝﨑副社長はこれについて「データを駆使した戦力の最適配置に取り組み、現場従業員の労働時間に反映させることなく、荷物取扱能力を拡大させたところに、ECの急拡大が重なり、大きく利益貢献した形」と説明する一方で「当社が最終的に求めているものに対しては、現状はまだまだ道半ば」であることも強調。「今後も必要な投資を行い、ある意味で実験も重ね、来年度から始まる次期中期経営計画の3年間で花を開かせたい」と述べ、引き続きデータに基づく経営効率向上に取り組む姿勢を示した。

 通期の宅急便取扱個数については、EC需要の継続的な拡大を背景に、7月に公表した19億9600万個をさらに上回る20億2100万個(前期実績は17億9992万個)を予想。第2四半期末の宅急便単価は小口化が進んだことなどにより前年同期を34円下回る639円とし、通期では36円減の640円を予想している。

 芝﨑副社長はまた、来年から一部地域でクロネコDM便の配達を日本郵便へ委託することについて「紙の配達需要は縮小しているものの、一定数は存在する。労働人口が減少する中、安定的なネットワークを構築し今後もしっかりとサービスを提供していくために、これまでのような自前主義にこだわるべきではないと判断した」と説明。今後もDM便に限らず、さまざまな分野で合理的な理由があれば、積極的に他社と協業していく考えを強調した。

今週掲載トピック一覧

  • ☆四文字『長尺化と「積載重量」』
    ☆ウォッチ(114) 『中国越境EC物流モデルへの考察』

  • ☆2020年秋の叙勲、岡本元三菱倉庫社長に旭日中綬章など
    ☆物流連がモーダルシフト取り組み優良事業者公表・表彰制度の受賞者発表、大賞にF-LINE
    ☆SGHDが決算会見、中間決算はEC拡大とロジ事業特需で大幅増益
    ☆鴻池運輸が米国・カリフォルニア州の冷凍倉庫が本格稼働
    ☆国交省がシベリア鉄道での1編成借り上げパイロット輸送開始、15案件で実施
    ☆国交省、JSA-S1004のASEANへの普及に向けた検討会の初会合
    ☆国交省主導の現存船CO2削減の国際ルール案が合意、IMO審議を経て23年発効の見込み
    ☆SIPスマート物流サービス管理法人が研究開発ガイドライン案のパブコメ募集
    ☆SBSゼンツウが大型車両で国内初の発電式冷凍装置搭載車を導入、パルシステム拠点に
    ☆センコーが沖縄のあんしん社と業務提携に向けた検討を開始
    ☆トナミ運輸のお歳暮、北陸3県の旬の味
    ☆佐川急便がドローンを活用して自治体と実証実験、本年度中にも開始
    ☆SBSHDが東芝ロジ株66.6%取得し来年1月付で「SBS東芝ロジスティクス」と商号変更
    ☆三菱倉庫が埼玉県に「三郷2号配送センター2期棟」竣工
    ☆メルカリ・日本郵便、「ゆうゆうメルカリ便」の一つとして専用箱で郵便ポストから発送できる「ゆうパケットポスト」の提供を開始
    ☆千葉ト協がスケアードストレート撮影を実施、教育用DVD作成へ
    ☆物流各社の第2四半期決算

今週のユソー編集室

  • ▼国土交通省は、タイヤ交換作業が増えるウインターシーズンを前に、「大型車の車輪脱落事故防止キャンペーン」を来年2月28日までの予定で開始した。
    ▼昨年度、大型車のホイール・ボルト折損などによる車輪脱落事故は112件と統計史上過去最多となり、人身事故も4件発生している。
    ▼112件のうち、車輪脱着作業後1ヵ月以内に発生したものが約6割を占めており、一定距離走行後の「増し締め」が重要であることを再認識する必要がある。
    ▼全日本トラック協会も自動車工業会作成の資料をホームページ上で公開するなど、会員に脱落事故防止対策を呼び掛けている。関係者一丸となり、「足元の安全」を守りたい。

戻る