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2020年12月7日付 2819号

標準的な運賃の周知・浸透に注力、第188回理事会開く  全ト協

北側公明党懇話会会長(中央左)に要望書を手渡す坂本会長(中央右)

 全日本トラック協会(坂本克己会長)は3日、東京都港区の第一ホテル東京で第188回理事会を開き、高速道路料金の大口・多頻度割引実質50%実現や重要物流道路追加指定に関する要望活動の展開などを盛り込んだ2021年度事業計画骨子案を承認。理事会後には、坂本会長らが自民党トラック輸送振興議員連盟(細田博之会長)と公明党トラック議員懇話会(北側一雄会長)を訪問し、21年度予算・税制改正などに関する要望を行った。

 理事会の冒頭に来賓あいさつした国土交通省の秡川直也自動車局長は、4月に告示されたトラックの標準的な運賃について、届け出が10月中旬の時点で1%弱にとどまっていることを報告。「標準的な運賃の告示で、“みんながうまくいく”と思いがちだが、まずは自社の経営分析を行った上で標準的な運賃で示されている数値との違いを認識し、荷主との交渉を行ってから届け出てほしい」と述べ、荷主も新型コロナウイルスの影響などで苦しい状況にあるが、しっかりと時間を確保して必要なステップを踏むことが重要であるとの考えを示した。

 秡川局長に続いてあいさつした坂本会長は標準的な運賃について、荷主4万社超に周知用資料を12月中旬にも配布予定であることや日本経済新聞に意見広告を掲載する計画であることを説明。全ト協が荷主や社会に対して標準的な運賃の周知を進めるので、会員は「届け出という行為」をしっかり行うよう求めた。また、標準的な運賃と同様に改正事業法に盛り込まれている規制の適正化や事業者が厳守すべき事項の明確化に関する対応については、「進んでいないとの声が挙がっている」とし、地方運輸局・支局による取り組み強化に期待感を示した。

 さらに、新型コロナや自然災害への対応を含め、トラック輸送の確実な遂行には高速道路をはじめとした道路網の整備や、使いやすい料金制度が必要であるとの考えを強調。国土交通省は、道路整備が物流に果たす役割の重要性を見据えているが、予算確保に関して財務省のさらなる理解が必要であるとして、各地方の自治体などと足並みをそろえ、必要な予算の確保に努めていくとした。

 議事では、21年度事業計画骨子案の承認のほか、宮崎トラックステーションの用地売却案などについて承認。報告では、国交省自動車局の伊地知英己貨物課長が改正事業法施行1年の状況について、撤退事業者の再参入が大幅に減少し規制の適正化の効果が表れているとの認識を示す一方、標準的な運賃の届け出が少ないのでトラック協会と連携して浸透に努めるとした。

 理事会後の自民党議連、公明党懇話会への訪問では①新型コロナにかかる各種支援措置の継続等②高速道路料金等の引き下げ③道路整備の推進④自動車関係諸税の軽減・中小企業投資促進税制の延長⑤働き方改革実現のための諸対策の推進―を柱とする最重点要望事項について、説明・要望を行った。

日立製作所、日立キャピタルとSSCV外販で協業、幅広い業種対象に  日立物流

 日立製作所(東原敏昭社長)、日立物流(中谷康夫社長)、日立キャピタル(川部誠治社長)の3社は3日、日立物流が自社内で導入 している「SSCV Safety 安全運行管理」(「SSCV Safety」)の外販に向けた協業を開始したと発表。2021年4月以降、物流業や製造業、卸売業、小売業、バス、タクシーなど幅広い業界を対象にした輸送業務向け新サービス「SSCV Safety on Hitachi Digital Solution for Logistics」として提供を開始する。

 新サービスは、日立物流グループの事業用自社車両にすでに搭載している「SSCV Safety」を、日立製作所の物流分野向けソリューション「Hitachi Digital Solution for Logistics」と組み合わせてサービス化するもの。

 「SSCV Safety」は、日立物流が16 年から「事故ゼロ」の実現に向けてドライバーの疲労度に着目し、生体情報や運行記録などと、「ヒヤリハット」や事故との相関性の分析に着手。17 年に自社内でシステム開発をスタートし、18年には日立製作所や日立キャピタルグループなどとともに、「物流トラック運行管理における疲労科学に基づく事故リスク評価予測手法の開発」に向けた共同研究を開始。研究結果から得られた知見・データを生かして分析精度を向上し、自社車両に導入した。

 車両運行前後や運行中のドライバーの生体データ(体温、血中酸素濃度、血圧、自律神経など)やドライブレコーダーなどから取得した運転データ(前方車間距離、ブレーキ、加速度、運転時間)などを収集してクラウドに蓄積、AIを活用して分析した結果を見える化し、帰着後に効果的に振り返ることができるシステムで、ドライバーの安全運行や労務管理、技術指導などに活用してきた 。

 日立製作所は、物流 分野での、AI・IoTなどのデジタル技術 を活用したソリューション「Hitachi Digital Solution for Logistics」を有しており、配送計画を自動立案する「配送最適化サービス」などを提供している。

 両社の持つ技術・ノウハウを結集し、「Hitachi Digital Solution for Logistics」をサービス基盤に、「SSCV Safety」の機能を実装して、国内の物流業や製造業、卸売業、小売業など幅広い業界における輸送業務向けに提供する。

今週掲載トピック一覧

  • ☆経済と物流の表裏分析(4)『スガノミクスの行方は(その4)』
    ☆四文字『将来の課題「貨物輸送」』
    ☆物流応援歌(33)『2021年東京五輪の開催問題を考える=開催実施に向けての検討事項=』

  • ☆秡川国交省自動車局長が定例会見、白ナンバーの有償貨物運送でも運行管理は不可欠
    ☆全ト協・日貨協連、11月のWebKIT成約運賃指数の前年同月比は15ヵ月連続前年割れ
    ☆運輸労連が運輸セミナー開催、難波委員長は運賃・労働条件の改善を「継続して求める」考え示す
    ☆センコーがナガセ物流を子会社化、ケミカル物流を強化
    ☆物流連が物流環境大賞の募集開始、実態に合わせ部門賞見直しなど
    ☆ヤマト福祉財団が第21回小倉昌男賞の贈呈式開催
    ☆国交省・有識者検討会、次期総合物流施策大綱の提言案に意見多数
    ☆佐川急便が「2020年度気候変動アクション」の普及・促進部門緩和分野で環境大臣表彰受賞
    ☆社整審道路分科会物流小委員会、次期物流大綱に盛り込む道路施策など議論
    ☆日新、武漢経由の日中欧Sea&Rail輸送のトライアル開始
    ☆経団連が次期社会資本整備重点計画等に提言、物流ロボット実現など規制改革求める
    ☆国交省が「ASEANスマートコールドチェーン構想」検討会開く、物流事業者から課題等ヒアリング
    ☆JR貨物がグループ社長会議、真貝社長が地球環境保全の取り組みやDX人材の育成などに取り組む考え示す
    ☆東ト協が特車制度研修会開催、法改正で許可短縮化も「即時」の程度不明
    ☆トナミHDが愛知県に本社を置く御幸倉庫の株取得し完全子会社化へ
    ☆センコーGHDが会員制卸売・小売業の「寺内」をグループ化
    ☆日通所属のプロゴルファー・原英莉花選手が女子プロゴルフ国内メジャー連覇

今週のユソー編集室

  • ▼各高速道路会社はコロナ禍で大きく落ち込んだ料金収入を受けて、メンテナンス費用の増加が見込まれることなども踏まえ、割引制度の見直しが必要との認識を示している。
    ▼今後の動向が見極めづらい中で減収分を補うため、底堅い需要のあるトラックに狙いを定め、割引制度の見直しにより実質的な負担増を求めるということと受け止められる。
    ▼減収で苦境に立たされているのはトラック運送事業者も同じだ。労働力不足の解消に向けて、生産性向上と働き方改革が強く求められている状況下で、高速料金の実質値上げはおいそれとのめる話ではない。メンテナンスの重要性は理解しつつも、慎重な議論が必要だ。

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