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2020年12月14日付 2820号

新型コロナの影響調査の概要速報版を公表、BCPの検査必要  物流連

 日本物流団体連合会(渡邉健二会長)は8日、会員企業に対して行った「物流企業における新型コロナウイルス感染症への対応動向調査」の概要速報版を公表し、多くの企業が既存BCP(事業継続計画)の検証・改善に加え、今後の荷姿標準化や商慣行見直しなど、物流の生産性向上への取り組みの加速化が必要と感じていることが明らかになった。

 調査は、新型コロナウイルス感染症への対応について、感染拡大期から今秋までの問題点や課題を把握し、今後の対応に資することを目的に、本年9月から11月にかけて実施。会員企業81社に対してアンケートとヒアリングを行い、29社のアンケート回答および10社のヒアリング結果をまとめた。

 感染拡大期の課題では、現場系がドライバー・庫内作業者の集団感染リスク対策や、移動制限下の業務遂行体制維持、貨物量の急増減による応援・自宅待機指示を挙げ、事務系が紙ベース作業や押印手続き、ノートPC等のツール不足、個別システムのアクセスを挙げた。

 新型コロナ対策では、全てのアンケート回答企業が「マスク着用の徹底」「手洗い・アルコール消毒の徹底」「ウェブ会議システムの導入」を実施しており、8割以上の企業が、出張制限、テレワーク、時差出勤、ビニールシート等による飛沫対策なども行っていた。

 一方で、これら各対策を既存のBCPマニュアルに従って指示した企業はおおむね10%台にとどまるなど、既存BCPの内容不足が明らかになったことから、すでに見直しの作業に着手している企業や、改定済みの企業が見られたほか、多くの企業で未知の感染症も視野に入れたBCPの早急な策定の必要性を感じていることが分かった。

 また、BCP以外の対策の反省点としては◎現場系における衛生用品等の確保・定期的な棚卸◎事務系におけるテレワーク体制整備不足―が挙げられた。

 現段階の物流に対する影響では◎輸送単価の下落◎車両等の固定費負担◎低稼働率―などの影響が長期化しており、これに対して一部では◎月末・月初納品等の分散化◎時間指定の緩和◎専用車両等の固定費の補填要求◎助成金活用などで対応している。

 今後の国内BtoB物流については、2019年度と比較して20年度に輸送量・取扱量・収入・利益が減少するとの回答が約7割に達する一方、21年度には回答企業の3分の1が、いずれも増加に転じると見ており、国内BtoC物流や倉庫部門でも、21年度には状況が改善すると見ている企業が多かった。

 ウィズコロナ・アフターコロナ下の物流経営に必要な対応としては、半数以上の回答企業が「非接触型・省人化・自動化など物流システムの見直し」「事務系従業員の出勤体制やテレワークの見直し」が必要と回答。「運賃・料金水準の見直し」「荷主企業に対する取引条件見直しの要求」「サプライチェーン全体での商慣習の見直し」を挙げる企業も3割に上った。

 調査ではまた、テレワークやウェブ会議システムの導入についても言及しており、テレワークに向く仕事と向かない仕事の整理に課題が見られた。メリットは◎電話対応の減少◎全国規模の社内会議の経費節減◎個人のやるべき仕事が定義されていれば生産性の確保が可能―などが挙がっており、デメリットでは◎会議の数・時間が増えた◎指示・進捗管理・評価が難しい◎仕事にそぐわないーなどが指摘された。

 物流連では今後も分析作業を進め、年明けを目途に最終報告書をとりまとめる予定としている。

東京レールゲートEASTの現地で起工式開催、ナンバー1施設に  JR貨物

東京レールゲートEASTの完成予想図 神事に臨む真貝社長

 JR貨物(真貝康一社長)は10日、東京都品川区の同社東京貨物ターミナル駅で、マルチテナント型大型物流施設「東京レールゲートEAST」の起工式を行った。

 中期経営計画で「鉄道を基軸とした総合物流企業グループ」を目指す同社の中心的な施設で、本年2月に竣工した「東京レールゲートWEST」に続くもの。敷地面積は7万6493平方メートル、建物は鉄骨造(一部コンクリート充填鋼管構造)地上5階建て、延べ床面積17万4405平方メートルの規模。うち専有部の賃貸面積は14万6887平方メートル。事業パートナーに国内外で40件の物流施設を展開する三井不動産を選定し、開発計画の企画立案やテナントの誘致、竣工後の施設運営・管理を委託する。竣工は2022年8月を予定している。

 1フロアを約2万9千平方メートルとする一方、最小約2300平方メートルからの利用も可能となっており、小規模の賃貸ニーズにもフレキシブルに対応できる。ワンウェイ動線のランプウェイを2ヵ所設け、各階でアクセス可能なトラックバースを設置。1階部分は両面バースで64台の着車が可能となっているほか、2区画分の約9600平方メートルが冷凍・冷蔵保管に対応できるよう設計されている。

 免震構造の採用や72時間対応の非常用発電機の導入など、BCP(事業継続計画)に配慮しているほか、事務所内照明のハイブリッド調光、倉庫内照明の点滅の自動化、CO2センサーによる換気量制御、屋上緑化、電気自動車充電スタンドの設置、雨水利用など、環境面にも最大限配慮しており、竣工時には建築環境総合性能評価システム(CASBEE)5段階の上位2番目となるAランク取得を予定している。

 起工式の神事にはJR貨物の真貝社長、三井不動産の三木孝行常務執行役員ロジスティクス本部長のほか、設計監理を担当する安井建築設計事務所の佐野吉彦社長、施工を担当するフジタの奥村洋治社長らが出席。神事後のあいさつで真貝社長は「(同施設は)当社が目指す姿を実現するための極めて重要な礎となる施設」と強調し、無事故無災害での竣工を願った。

 引き続き行われた記者会見で真貝社長は、先に竣工したWEST棟が満床となったことを明らかにするとともに、グループの総力を挙げて「東京レールゲートプロジェクト」に取り組み、物流の生産性向上等に貢献したいと強調。「三井不動産という強力なパートナーを得て、大変心強く思っている」と期待感をあらわにした。

 会見に同席した三井不動産の三木常務執行役員は「陸海空の結節点にこれだけ近い施設は世界的に見てもまれで、環境配慮などあらゆる面で見て、日本でナンバー1の施設」と強調。テナント誘致についても「年明けから本格的に開始するが、すでに日用品やEC関連から問い合わせが来ている。鉄道貨物ターミナル駅内の施設なので、モーダルシフト意向のある荷主対象を誘致し、CO2削減など社会的に貢献できる点をアピールしたい」と語る一方、賃料に関しては「満床で竣工を迎えたいが、霞ヶ関ビルと同程度の床面積であり、油断はできない。JR貨物とも相談してできるだけいい値段を設定したい。ただ、賃料が高ければどんなテナントでもいいというわけではなく、長期的に見て成長性があり、魅力のあるテナントに入ってもらう方がいいのではないかと思う」と述べた。

今週掲載トピック一覧

  • ☆経済と物流の表裏分析(5)『スガノミクスの行方は(その5)』
    ☆ウォッチ(115) 『RCEP締結および中国の国内環境整備に関する考察』

  • ☆トヨタ自動車・日野自動車、大手コンビニ3社と燃料電池小型トラックの普及等に向け合意
    ☆政府、閣議決定した総合経済対策に自動配送ロボットの制度整備盛り込む
    ☆日本GLP・佐川急便、迅速な支援物資輸送目的に災害時の協力協定を締結
    ☆国交省、次期大綱提言取りまとめ案では物流DXが目玉に
    ☆自民・公明両党、来年度税制改正大綱にトラック中小企業投資促進税制の2年延長盛り込む
    ☆SGHD・佐川急便、「全国エコメッセージ絵画コンクール2020」の環境大臣賞2作品をはじめ各賞受賞作品を発表
    ☆運輸労連の年末一時金妥結状況、解決率9割の段階で前年比増額を維持
    ☆ヤマトHDが自動配送ロボット手掛ける中国企業に出資へ、KIF1号案件
    ☆JR貨物真貝社長が21年の方針語る、カーボンニュートラルで環境特性の発揮へ
    ☆日通がシンガポールのチャンギ空港FTZ内の施設で航空輸入サービスに関するGDP認証取得
    ☆センコーGHDが家庭紙の卸売事業を行うアズフィットを子会社化へ、家庭紙卸売業で価格競争力向上と販路拡大等図る
    ☆東ト協が理事会でトラックフェスタのアンケート結果確認、開催に前向き多数も業界外へのPRに課題
    ☆韓国日通が医療機器品質規格認証「ISO13485」を取得
    ☆東ト協が「グリーン・エコプロジェクトトップランナーセミナー」で受賞者を表彰、取り組み成果アピール
    ☆NTTロジスコがウェブ形式で「第18回物流改善報告会」開催
    ☆日通、上海海事大学への第5回推奨金授与式を実施

今週のユソー編集室

  • ▼師走も中旬を迎え各地から雪の便りが届くようになってきた。本格的な冬の到来を前に、4日には国土交通省自動車局長名で、全日本トラック協会などの運送事業者団体に対して、降積雪期における輸送の安全確保徹底を求める文書が発出された。
    ▼実施が求められている項目を見ると、早期のスタッドレスタイヤ・チェーンの装着や、要注意箇所の把握、スリップにつながる急発進・急制動を行わないことなど、どれも当然にして重要な対策である。
    ▼新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される今シーズンは、事故を1件でも減らすことが、医療機関への負担を増加させないことにつながるということも胸に刻んでおきたい。

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