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2021年9月13日付 2855号

官民物流懇談会パレット標準化推進分科会の初会合開催 標準化の検討は平パレットを優先 国交省

 国土交通省は7日、ウェブ会議形式で「官民物流懇談会パレット標準化推進分科会」(味水祐毅座長)の初会合を開催。物流の生産性向上に高い効果が期待されるパレットの標準化に向け、国内外のパレット標準化の進捗状況などに関する実態調査を行うことや、幹線輸送で広く使用されている平パレットを優先的に標準化検討の対象とすることを決めた。

 初会合では、分科会の今後の進め方について、「第1段階」として①実態調査②検討対象パレットの優先順位決定③パレットサイズ・使用に関する標準化方針検討④パレットの運用方法にかかる標準化方針検討⑤パレット標準化実証等―などを行い、「第2段階」として第1段階の結果を踏まえた標準化の具体的推進方策の取りまとめを行うとの事務局案が示され了承された。

 検討期間は、現段階では厳密には決定しておらず、本年度を初年度とする総合物流施策大綱(2021~25年度)の期間である5年程度を想定しているが、早期の標準化を実現するため、前倒しで最終的な取りまとめを行う可能性もある。

 実態調査では、国交省が荷主サイドのパレット利用実態や事例調査、効果・コストの試算などを行い、日本物流団体連合会の物流標準化小委員会が物流事業者サイドの実態を調査する。

 国交省が行う調査では、業種別の利用実態やパレット化が進まない理由、海外でのパレット標準化の背景・推進体制などを調べる(左表参照)。調査は早ければ年度内に開始し、半年から1年程度をかけて行う。

 物流連の小員会は、すでに調査を開始しており、物流連の会員約60社と倉庫協会会員110社にアンケート調査票を送付、回収している。

 検討対象パレットの優先順位については、平パレット、ロールボックスパレット、シートパレットのうち、幹線輸送で広く使用され、普及によりトラックドライバーの長時間労働是正に大きな効果の見込まれる平パレットを他のパレットに先駆けて標準化検討の対象とする。

 分科会は、4ヵ月に1回程度開催し、2022年度に第2回会合が開かれる物流標準化懇談会に分科会での議論の進捗を報告する。

 初会合では委員から「パレットの標準化は長い間課題となっていたが、物流クライシスが目前に迫る中、今回こそ″総論賛成各論反対″の壁を越えて、連携して取り組みたい」「荷主側の理解と協力が必要」「サイズに加え、品質についても決定しないと規格にはならない」「標準化が進まないボトルネックについて調べる必要がある」「パレットの使用によって積載率が下がることに対するメリットを示すことで課題を乗り越えることができる」「標準化に当たって″あきらめた部分″などについて海外の事例も参考にすべき」などの意見が出された。

 次回分科会は、年末から年明けにかけて開催の予定。

山陽線の長期不通等で年度計画を下方修正 グループ社長会議開く JR貨物

 JR貨物(真貝康一社長)は3日、ウェブ会議システムで2021年度第2回JR貨物グループ社長会議を開催。同社役員やグループ33社の社長らが参加した。

 真貝社長は冒頭あいさつで、7月から8月にかけて発生した豪雨災害による山陽線の不通などの影響を踏まえ、10月からスタートする21年度改定計画において、コンテナの年度収入を7月改定計画比33億円減の1141億円とし、連結経常利益についても7月改定計画で52億円としていたものを、45億円に下方修正したことを明らかにした。連結経常利益は当初、新型コロナウイルス感染症からの回復が進むと見て100億円の計画を掲げていたが、コロナ禍の長期化に豪雨災害が重なり、2度目の下方修正となった。

 山陽線の不通は8月14日から9月4日までの3週間続き、この間平常時の約3割の収入減になったとしており、ほぼ同時期に発生した中央線の不通を加えた減収額は23億円に上るという。10月改定計画は、これらの減収分に、7月改定計画で盛り込んだ11億円の収支改善策を加えて策定した。

 真貝社長は10月改定計画について「不要・不急な投資の見直しや調達単価の引き下げを行うが、成長・戦略投資は内容を見極めスピード感をもって実現していく」として、当初方針どおり投資を行っていく姿勢を強調。一方、グループ各社に対しては「災害による代行輸送への対応など顧客対応に尽力していただいた」と謝意を示し、各社の現場社員にも伝えるよう要請した。

 真貝社長はこのほかあいさつで、「グループ会社のトップには、“プレイイングリーダー”としての役割、何事にも立ち向かう“打破力”“推進力”を期待している」と述べ、同社の新聞広告のキャッチコピーである『鉄の使命。』『鉄の意思。』『鉄の道。』を引用しながら「強い使命感を持ち、強い意志で、社会からの強い期待に応える道を進むことが求められている」と呼び掛けるとともに、長期ビジョンで掲げた◎物流生産性の向上◎安全・安心な物流サービス◎グリーン社会の実現◎地域の活性化―の四つの価値提供により、グループの事業基盤を強固なものにしていくとした。

 会議では引き続き、「JR貨物グループ内での人事交流・採用」について意見交換。社会に価値を提供する総合物流企業グループとなるために、人材育成・確保の観点からグループ内の人事交流をどのように行うべきか、グループにおける採用をどのように行うべきかについて、チームに分かれて意見を交換した。

今週掲載トピック一覧

  • ☆経済と物流の表裏分析(21)『新政権の政策はどうなるか(その1)』
    ☆ウォッチ(124) 『2021年上半期のベトナムの貿易と物流』

  • ☆日通が台湾北部の桃園市にNEXT3倉庫新設、医薬品等に対応へ
    ☆明治が粉末プロテインの物流の一部を鉄道にモーダルシフト、全国通運のオートフロアコンテナ使用
    ☆物流連が物流業界インターンシップを東京会場でも開始、学生191人が参加
    ☆国交省が20年の国内港湾のコンテナ取扱貨物物量を発表、19年比7.3%減で2年連続前年割れに
    ☆公取委が最低賃金の引き上げ等に伴う不当なしわ寄せ防止に向けた中小事業者等取引公正化推進アクションプラン公表、物流特殊指定掲げる
    ☆JR貨物がタイ・バンコクに同社初の海外駐在員事務所を開設、事業参入の調査など
    ☆日立物流がパッケージングコンテストで経済産業大臣賞を受賞、大型装置の梱包材で
    ☆Hacobu、秋田ト協が11月に実施する「首都圏市場向け青果物の物流効率化実証実験」に参加
    ☆丸運物流ベトナムがホーチミン市郊外に新たな営業所開設、業務範囲の拡大も
    ☆物流連、経営効率化委員会で運輸防災マネジメントの講演会などを開催
    ☆JILSが20年度物流システム機器生産出荷統計調査結果を公表、売上高は3年連続5千億円超

今週のユソー編集室

  • ▼国土交通省でパレットの標準化に向けた検討が始まった。パレットの普及・標準化は、昭和の時代から必要性が認識されていたが、いざ実施となると、物流の各段階のプレイヤーによる「総論賛成各論反対」の壁に押し返され、令和の世を迎えても実現は限定的な範囲にとどまっている。
    ▼パレット化率は、韓国で50%、ユーロ圏で90%、オーストラリアでは99%に達しているが、日本ではその数字すら把握されていない。
    ▼「10トントラックに段ボール数百個を手積み」などという、およそ現代とは思えない労働環境に貴重なトラックドライバーを従事させている現状を早く改善するため、早期の普及・標準化が求められる。

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