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2021年10月25日付 2861号

「生産空間」の維持を目的に北海道開発局と連携協力協定 ヤマト運輸

締結式の模様、松井執行役員(左)と 橋本局長(右)

 ヤマト運輸(長尾裕社長)と国土交通省北海道開発局は20日、北海道の戦略的産業である食と観光を担う地方部の「生産空間」を支えることを目的に、連携協力協定を締結した。

 北海道開発局は、農業・漁業を通じて食料供給に大きく貢献するとともに、観光その他の多面的・公益的機能を提供する地域を生産空間と位置付け、発展に向けた支援を行っている。一方で、特に地方部の生産空間では人口の減少傾向が著しく、散居型集落が多いため公共交通の運営が困難なことなど、住み続けられる環境の整備が急務となっていることから◎所得・雇用の確保◎生活機能・集落機能の確保◎地域の魅力向上◎安全・安心な社会基盤の形成―に向けた取り組みを進めてきた。

 今回の協定締結はこうしたことを背景に、北海道の地域社会への貢献という共通の目標の下、ヤマト運輸の強みである全国のラストワンマイルネットワーク、地域に密着したSD、あらゆる課題に対する輸送にとどまらないソリューション提案力を活用し、より効果的な取り組みを進めることを目的としている。

 協定では①物流の確保に関する取り組み②道路交通の安全性の確保に関する取り組み③災害等に伴い広域的に影響がおよぶ国道の通行止め時の情報共有に関する取り組み④その他生産空間の維持・発展に向け両者が連携・協力することができる取り組み―の四つを連携する項目として掲げており、当面、次の内容に取り組むこととしている。

 ◎物流効率化の推進=物流サービスの維持に向けて、北海道開発局とヤマト運輸が連携して物流効率化を検討する。具体的には、道北の物流システムの効率化と道の駅の交通拠点機能の強化のため、道の駅「もち米の里なよろ」で、道の駅を拠点とした中継輸送の実証実験を実施する。

 ◎道路の異常等の情報共有=ヤマト運輸と協力企業のトラックドライバーが道路の異常や破損等を発見した際に「道路緊急ダイヤル」に通報する。

 ◎災害等に伴う広域的な国道の通行止め時の情報共有=災害等に伴う広域的な国道の通行止めが発生した場合に、物流を支えるヤマト運輸と道路インフラを管理する北海道開発局が情報共有することにより、地方部の生産空間の物流の円滑化に貢献する。

 このうち物流効率化については、枝幸町~札幌市間の片道約300キロメートルの冷凍ホタテ・冷凍イクラ輸送の場合、現在ドライバーの拘束時間が往復約10時間半となっていることから、中間地点で枝幸町から約100キロメートルの名寄市内に所在する道の駅「もち米の里なよろ」を拠点とし、トレーラーヘッドを交換する中継輸送を行うことで、枝幸町発のドライバーの拘束時間を往復約5時間に、札幌市発のドライバーの拘束時間を往復約7時間に、それぞれ短縮させることを見込むなど、道北地域における道の駅の中継拠点化の可能性を探っていく。実験は11月上旬から中旬にかけて複数回行う予定としており、輸送品目などの詳細は決まり次第発表する予定。

 実験はヤマト運輸と北海道開発局旭川開発建設部を主体として行われ、ヤマト運輸は実験に参加する物流事業者の調整や効果検証への協力などコンサルタント的な業務を担い、旭川開発建設は実験・調査計画の検討や実験スペース確保、とりまとめなどを担当する。

 20日に札幌市内の合同庁舎で行われた協定書締結式には、ヤマト運輸の松井克弘執行役員北海道地域担当、北海道開発局の橋本幸局長らが出席した。

NLJの高効率幹線輸送スキームがグッドデザイン金賞を受賞

 日野自動車(小木曽聡社長)の子会社であるNEXT Logistics Japan(NLJ、梅村幸生社長)は20日、構築を進めている「高効率幹線輸送シェアリングスキーム」が、日本デザイン振興会(川上元美会長)主催の2021年度グッドデザイン賞で「グッドデザイン・ベスト100」に選出され、その中から20件が選出された「グッドデザイン金賞」を受賞したと発表した。

 NEXT Logistics Japanは、「ドライバー不足によりモノが運べなくなる」という社会課題の解決を目的に2018年6月に設立。特にドライバー不足が深刻な幹線輸送に着目して、当初6社がノウハウを持ち寄り、東京~名古屋~大阪間で25メートルダブル連結トラックを使用した業種を超えた混載輸送スキームを構築した。

 今年2月には新たに6社が参画し、15社(アサヒグループホールディングス、江崎グリコ、ギオン、鴻池運輸、鈴与、千代田運輸、トランコム、ニチレイロジグループ本社、日清食品ホールディングス、日本梱包運輸倉庫、日本製紙物流、日野自動車、ブリヂストン、三菱HCキャピタル、ユーネットランス=50音順)体制でスキームのブラッシュアップを進めている。

 同スキームのグッドデザイン金賞受賞について審査員は、「ドライバー不足や積載率低下といった物流業界の課題に対応すべく、車両を作って売ることが本業であるトラックメーカーが新会社を立ち上げ、荷主や運送事業者に協働を呼びかけ、1台のトラックに異なる種類の荷物を混載することでドライバーの労働環境を改善していくという取り組みは、事業者間の関係を競争から共存にシフトするものであり、きっかけを作ったという点で好感が持てる」とコメントしている。

今週掲載トピック一覧

  • ☆経済と物流の表裏分析(25)『トラック運賃の足元の動向と見通し(その3)』
    ☆日通NXグループ伊豆研修センター竣工

  • ☆日倉協が11月19日に名古屋で物流フォーラム、2年ぶりリアル開催
    ☆管理法人、SIPスマート物流のシンポジウム開催し開発状況など報告
    ☆JR貨物真貝社長が定例記者会見でコメント、カーボンニュートラルなど潜在的なモーダルシフト需要の多さ指摘
    ☆物流連が第19回物流連懇談会を開催し石井日通副社長が講演、医薬品物流テーマに
    ☆日本郵便が厚さ7センチメートル以内の郵便物等が投函可能な新型郵便ポストを8都道県15局に設置へ
    ☆ヤマトHD、新クロネコマークがグッドデザイン賞に
    ☆JR貨物が再生ブレーキを採用した九州向けEF510形式交直流電気機関車の量産先行車製作へ、車体に銀色の塗装行うと発表
    ☆JR貨物が通運連盟と鉄貨協と共催で「コンテナ輸送品質向上キャンペーン」展開
    ☆国交省が「全国貨物純流動調査」を6年ぶりに実施へ
    ☆JR貨物が21年度上半期実績を発表、コロナ禍に災害も重なり19年比で2桁減に
    ☆佐川急便がニュースレターで自社のモーダルシフトの取り組みを紹介、新幹線の貨客混載も
    ☆ヤマト運輸が岡山・徳島両自治体とドローンを活用した医薬品輸送の実現可能性を検証へ
    ☆国際物流総合展で会期中1万8千人が来場

今週のユソー編集室

  • ▼20日に開かれたSIPスマート物流サービスシンポジウムで特別講演を行った東京大学先端科学技術センターの西成活裕教授は、物流DXのリーダーには高度な理系の知識が不可欠であることを強調した上で、昨年4月に東大理系大学院で先端物流科学の特別講義が開講したことを紹介した。
    ▼受講した学生に行ったアンケートでは、「物流に科学が貢献できる余地が多くあることが分かった」との回答が8割に達した。
    ▼日本トップレベルの理系知識を持つ学生が、講義を通じてこうした認識に至ったことは、物流業界にとって意義深い。
    ▼学生に、その知識を物流業界に役立てもらえるよう魅力ある業界にすることが重要だ。

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