物流・輸送の専門紙、輸送新聞はこれからも輸送産業の発展に貢献してまいります。

文字サイズ

2022年11月28日付 2912号

貨物専用機の運航で路線・便数など発表 運航会社の変更も ヤマトHD、JAL

写真はいずれも機体改修後のイメージ

 ヤマトホールディングスと日本航空(JAL)は22日、この1月に発表した両社共同による貨物専用機の運航について、路線や便数などを公表するとともに、当初ジェットスター・ジャパンとしていた運航会社をスプリング・ジャパンに変更するなど、プロジェクトの進捗(しんちょく)状況を発表した。

 ヤマト運輸は2024年問題などを背景として、特に長距離トラックドライバーの不足が懸念される中、ドライバーにとって負担の大きい長距離輸送を鉄道や船舶・航空機にモーダルシフトする計画としており、貨物専用機の運航はその一環となる。同社ではそのほか、災害など緊急時の輸送チャネル確保等による持続的な物流ネットワークの構築なども目的に掲げている。

 両社は本年1月、プロジェクトの内容について、次のとおり発表していた。

 ①ヤマトグループが機体をリース導入し、JALグループのジェットスター・ジャパンが運航②導入機材はエアバス「A321ceo P2F」型機で中古旅客機3機を改修③最大搭載重量は1機当たり28トンで、現状の車両積載量から判断して10トン車5~6台分の搭載量④対象貨物は宅急便を想定⑤搭載コンテナはメインデッキにAAYコンテナ14台、ロワーデッキにAKHコンテナ10台⑥運航路線は羽田・成田から新千歳・北九州・那覇。

 今回発表した具体的な運航路線・便数は次の4路線で、1日当たり21便、24時間運航としており、一部では東京↓沖縄↓北九州↓東京の三角運航も行う。24年4月の3機稼働時を想定したもので、関係当局の許可を前提としている。
 ◎東京(日中は成田、深夜は羽田)⇔北九州、4・5往復、9便
 ◎東京(日中は成田、深夜は羽田)⇔札幌(新千歳)、5往復、10便
 ◎東京(成田)→沖縄(那覇)、0・5往復、1便
 ◎沖縄(那覇)→北九州、0・5往復、1便

 機材については、導入予定の3機のうちすでに2機は受領済みとなっており、残る1機は23年2月に受領の予定。受領済みの2機はスペインとフランスに保管している。旅客機から貨物機への改修は、シンガポールで23年3月から順次開始する。改修作業はエアバス機の貨物機改修を専門的に行っている独EFW社と契約した。

 運航会社については、JALの連結子会社であるスプリング・ジャパンに変更した。この理由についてJALでは、スプリング・ジャパン社が旅客機6機を保有し、中国からのインバウンドをメインターゲットとして事業を展開しているが、コロナ禍の影響などもあり今後の動向が不透明なことから、貨物専用機の運航を新たな事業の柱とするためと説明。現状ではエアバス機は保有していないが、グループ内で円滑な意思疎通を図りながら、運航・整備両面で問題なく対応できる見込みとしている。

 そのほか、就航予定の各空港で貨物専用機の運航に必要となる地上車両などの機材、上屋スペースの確保などの施設関連の整備を進めており、今後運航乗務員や貨物のハンドリング要員などについて、新規採用を進めていく予定とした。

日立物流株公開買付けに応募し保有全株式を譲渡へ 通期予想を修正 SGHD

 SGホールディングスは24日、同社が保有する日立物流の全株式について、HTSK社が実施する株式公開買付けに応募することを決定、特別利益の計上により2023年3月期の通期業績予想を上方修正した。佐川急便と日立物流の業務提携に関しては、今後も継続するとしている。

 同社は日立物流株式について、自己株式を除く発行済み株式総数比で約6.1%に当たる511万600株を保有しているが、今回の公開買付けに応じて全株式を譲渡し、資本提携を解消することとした。買付け予定価格は1株につき8913円。これについて同社では「買付けの内容について検討した結果、買付価格等の条件が妥当であると判断できること、日立物流の取締役会が賛同の意を表明し、同社株主に対して公開買付けへの応募を推奨していること」などを踏まえて応募を決定したとしている。

 佐川急便と日立物流の業務提携契約については、全株式を譲渡した後も継続するとしており、今後も両社の物流機能を相互に活用することなどを通じて、両社が提供するサービスの付加価値向上を図るなど、協業を推進していくとした。

 買付けへの応募決定に伴い、投資有価証券売却益316億円を特別利益に計上する見込みとなったため、23年3月期通期業績予想について、10月発表時と比較して親会社株主に帰属する当期純利益を220億円上方修正し1300億円とした。

 そのほかの予想数値である売上高1兆6千億円、営業利益1420億円、経常利益1430億円については、修正はない。

 同社はここで得られた資金に関して、中期経営計画「SGH Story 2024」の基本方針「持続可能な成長を実現する次世代の競争優位性の創出」に基づく成長投資や株主還元等に充当することを検討。特に宅配ネットワークの拡充や、国際輸送機能の拡充を含めたグローバルでの事業展開等に投資することで、持続的な成長と企業価値の向上を図る。

 また、特別利益は通常の配当原資の考え方から除外するものの、機動的・弾力的な追加的還元の実施など、株主還元策も検討していく考えとしている。

今週掲載トピック一覧

  • ☆経済と物流の表裏分析(48) 『政府・日銀が円買いの為替介入を実施(その3)』
    ☆ウオッチ(138) 『中国の「6大経済回廊」構築を考える』
    ☆列島の外に目を向けると 『英国の個人配送業から見たロンドン交通事情』

  • ☆NXHD・日本通運の新役員陣容一覧
    ☆国交省が本年3月末現在のトラック事業者数を公表、3年連続で増加し過去最高の6万3251者に
    ☆NXHD海外・航空・海運事業の第3四半期業績、いずれも2桁の増収で推移
    ☆ヤマトHDがTCFD提言への賛同を表明、同社サイトで影響額の試算値など公表
    ☆日倉協が第19回物流フォーラム開催、「技術進化がもたらす変化」テーマに
    ☆埼玉ト協が交通安全・環境フェア開催、業界の取り組みPRや児童絵画コンクール入賞作品のラッピングトラック出発式など行う
    ☆東ト協出版・印刷・製本・取次専門部会が第44回懇談会開く、出版物輸送に関する現状や課題を共有
    ☆神奈川臨海鉄道が横浜本牧駅で見学会開催、13社25人が参加し冷凍を含む各種鉄道コンテナや荷役デモンストレーションなどを見学
    ☆西久大運輸倉庫ら4者がうきは市でドローン配送の実証実験を実施、社会課題解決や新産業創出を目指す
    ☆日本郵便が熊本県八代市で実証実験開始へ、郵便局等の端末で注文した日用品をゆうパックで配達

今週のユソー編集室

  • ▼先日、さいたま市内で開かれた埼玉県トラック協会主催の交通安全・環境フェアを訪れた。
    ▼あいにくの雨予報だったが、当日は時折雨粒が落ちてくる程度の空模様で、多くの来場者が展示やイベントを楽しむことができたのは、開催に向けた準備と当日の運営に尽力した関係者の熱意のたまものだろう。
    ▼会場では、普段は触れるどころか近づくことも難しい大きなトラックなどが展示され、運転席で記念撮影をする子供たちの笑顔が印象に残った。
    ▼日常では、意識されることのない「縁の下の力持ち」であるトラックを身近に感じてもらい、その中から少しでもこの国の物流を支える人材が生まれてくれることを願う。

戻る