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2022年12月20日付 2915号

類似法令等参考に着荷主の物流改善へ 実効ある措置検討を 持続可能な物流検討会

 国土交通省・農林水産省・経済産業省は7日、対面・オンライン併用で第4回「持続可能な物流の実現に向けた検討会」を開催し、関係者ヒアリングを行うとともに、中間とりまとめに向けた骨子案について審議。骨子案では、着荷主に対して物流改善の取り組みを直接義務付ける法律が存在しないことを踏まえ、類似の法令を参考にした規制的措置など、実効性ある措置について検討すべきとの内容が盛り込まれた。

 会合ではまず、佐川急便やヤマト運輸などからヒアリングを行い、佐川急便の笹森公彰取締役は、宅配での課題点や過疎地でのネットワーク確保の取り組みなどについて紹介。タワーマンションへの宅配では、高いセキュリティーにより、1個の配達に30分以上を要する場合があることや、台車禁止マンションも東京23区だけで325棟存在し、重量のある水の配達などでは1本ごとに配送車両と届け先を往復する必要があることから、生産性が著しく劣る現状を訴えた。

 ヤマト運輸の上野公シニアマネージャーは、再配達削減のためのマンション内置き配利用の増加に対しスマートデジタルキーの導入をマンションデベロッパーに提案しているものの、思うように導入が進んでおらず、管理組合の規約も壁になっていることなどを報告した上で、ドライバーと車両を柔軟に配置できる環境整備や大型車の速度規制上限の引き上げなどを行政に要望した。

 中間取りまとめの骨子については、「現状と課題」「課題を踏まえた政策の方向性」「今後の検討の進め方」などからなる事務局案を審議。「現状と課題」は①労働時間規制による物流への影響②物流の危機的状況に対する消費者や荷主企業の理解不十分③物流プロセスの課題(非効率な商習慣・構造是正、取引の適正化、着荷主の協力の重要性)④物流標準化・効率化(省力化・省エネ化・脱炭素化)の推進に向けた環境整備―で構成されており、「課題を踏まえた政策の方向性」では、類似の法令を参考にした規制的措置など、より実効性のある措置の検討や物流事業者が提供価値に応じた適正対価を収受するとともに、物流事業者と消費者を含む発着荷主がWin―Winの関係となるよう次のとおり検討を行うべき事項を示している。

 【荷主企業や消費者の意識改革】

 ◎物流の関する広報推進◎物流改善の取り組みが評価されるような仕組みづくり◎経営者層の意識改革を促す措置◎消費者に求められる役割。

 【物流プロセスの課題】

 ◎待機時間、荷役時間などの労働時間削減に資する措置および納品回数の減少、リードタイムの延長など物流の平準化を図る措置◎契約条件の明確化、多重下請構造の是正などの運賃の適正収受に資する措置◎物流コスト可視化◎貨物自動車運送事業法に基づく荷主への働きかけなど、および標準的な運賃に係る延長など所要の対応。

 【物流標準化・効率化(省力化・省エネ化・脱炭素化)の推進に向けた環境整備】

 ◎デジタル技術を活用した共同輸配送・帰り荷確保など◎官民連携による物流標準化の推進◎物流拠点ネットワークの形成の支援◎モーダルシフトの推進のための環境整備◎省エネ化・脱炭素化の推進に向けた環境整備◎その他生産性向上を図るための措置。

 次回会合は1月に開催し、中間とりまとめに向けた最終的な議論を行う。

センコー、西鉄、JR貨物が協働 鉄道輸送を活用して航空貨物を保税運送

 センコー、西日本鉄道国際物流事業本部、JR貨物関西支社は13日、大阪府泉佐野市の西鉄りんくう貨物センターから、成田・羽田空港国際貨物地区への航空貨物の保税運送における鉄道輸送を開始すると発表した。昨年9月からテスト輸送を開始しており、来年4月本格稼働を予定している。

 増加する地域間の航空貨物の保税運送で、3社はCO2排出量削減やトラックドライバー不足の解消に向き合った新たなルートによる輸送サービスを提供していく。

 西鉄りんくうから百済タまでトラック輸送し、東京タまで鉄道輸送。成田・羽田空港の国際貨物地区までトラックで直送する。

 西鉄は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で航空便が減少し始めた当初から、比較的便数の多い成田・羽田発の国際線に着目し、関空発を補強する形で、関空対岸の西鉄りんくうで税関から輸出許可を受けた外国貨物を長距離トラックで保税運送して保税運送して成田・羽田空港国際貨物地区に搬入するフローを実施してきた。

 顧客のサプライチェーン維持への貢献を図ると同時に、2024年問題や、長距離トラック運送時に排出されるCO2排出量の増加という複合的な課題を解決するため、3社の協働を開始することになった。

 西鉄りんくうから成田・羽田空港国際貨物地区への全行程をトラックで輸送する場合のCO2排出量と比較して、約60%程度削減されるとし、今後、西鉄手配により西鉄りんくうから成田・羽田空港国際貨物地区へ保税運送している貨物の約半分を、将来的にこの新たなルートへ切り替えることを目標としている。

今週掲載トピック一覧

  • ☆物流界のトップトピック『ゆく年2022』
    ☆経済と物流の表裏分析(50)『コスト上昇分の賃金への転嫁率(その2)』

  • ☆国交省のトラック適正取引推進会議、元請け事業者に価格転嫁への理解要請
    ☆NXHD、有望なスタートアップ企業を投資対象とするファンド設立し共創、専門部署も新設
    ☆新田関東運輸局長が関東ト協に要請文書、標準的な運賃普及に向けて傘下会員への周知求める
    ☆全ト協が22年度Gマークを7990事業所に認定と発表、累計は2万8696事業所に
    ☆佐川急便、Xフロンティア内に2社の自動走行搬送ロボット(AMR)を導入、不定形貨物搬送の大規模自動化に本格的に着手
    ☆ヤマト運輸、全農オンラインショップのD2C(消費者直接取引)流通スキームを構築、最短翌日出荷可能に
    ☆日本物流記者会選定、第8回物流人間大賞に野尻俊明氏
    ☆全ト協22年度引越安心マーク、41事業者・129事業所を認定
    ☆経産省の自動走行ロボットを活用した配送の実現に向けた官民協議会、コスト削減でWGを設置
    ☆西濃運輸、CEIV Pharma(医薬品航空輸送品質認証)に関する認証を成田空港で取得、顧客ニーズに対応
    ☆NECとソニーSSが日通NECロジの協力でエッジAIセンシングソリューションの実証実験を開始
    ☆SGムービングリネットジャパンが適正リサイクル促進で2自治体と連携協定、家電を自宅から回収
    ☆埼玉、千葉両県、貨物運送事業者対象に燃料価格高騰対策で支援制度
    ☆日本通運、近海郵船と連携し日本海ルートの海上輸送と鉄道輸送を組み合わせた新サービスを開始
    ☆JR貨物の犬飼社長が2023年の展望「総合力で発展目指す」
    ☆センコーが千葉県市原市に一般・危険物倉庫3棟からなる「京葉PDセンター」開設、拠点集約で効率化図る
    ☆NXHD、日本通運野球部と侍ジャパンの野球教室を開催、特別講師に栗山英樹監督ら
    ☆セイノーHDが石川県小松市などと新スマート物流の構築に向け連携協定、ドローン活用も
    ☆JR貨物、貨物鉄道論文賞と住田物流奨励賞の表彰式を開催

今週のユソー編集室

  • ▼一向に収まる気配のない新型コロナウイルスに燃油などの諸物価高騰。今年はこれらに戦争と円安も加わり、新年をことほぐ気持ちも薄らいでしまいそうだ。
    ▼物流業界では、大手各社が相次いでロボットやドローンなど効率化・省人化の取り組みを進め、カーボンニュートラルに向けたロードマップも明らかにするなど、「持続可能」に向けた動きが盛んだ。
    ▼そうした中で注目すべきなのは、激論の末に合意にたどりついた改正改善基準告示だろう。来年はこの告示が施行され、時間外割増率引き上げの中小企業への適用もはじまる。物流業界を「持続可能」とするために必要なものは何か。業界の挑戦は待ったなしである。

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