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2013年12月2日付 2499号

新たな高速料金割引案公表、大口多頻度割引は最大約40%に拡充  高速各社

 東日本・中日本・西日本の各高速会社は11月29日、来年度以降の新たな高速料金割引案を公表。国の緊急経済対策による割引財源が今年度いっぱいで無くなることを踏まえ、これまでの割引制度を見直して通勤時間帯割引や休日割引を縮小する一方、「物流対策」として大口・多頻度割引は最大割引を現行の約30%から約40%に引き上げる方針を示した。

 高速道路の料金割引は、2005年の道路公団民営化前後に導入された大口・多頻度割引などと、08年に国の緊急経済対策として導入された休日割引、深夜割引などで構成されている。このうち、緊急経済対策の財源(年間約4千億円)が今年度で切れるため、国土交通省は高速会社に対し、今月中に新たな料金案を示すよう求めていた。

 これまでの割引制度では、目的の異なる割引が上乗せで実施されているなど、効果の発揮が不十分なことに加え、利用者からわかりにくいといった声があったことなどを踏まえ、新たな料金案では時間帯による割引などを整理。
 通勤時間帯割引は、土日祝日を除外し平日のみに限定。月当たり利用回数などの要件を設定し、割引原資を圧縮する。休日割引については割引率を5割から3割に縮小するとともに、大都市部を除外。マイレージ割引についても最大割引率を現行の13.8%から9.1%に縮小する。
 一方で、大口・多頻度割引については、最大割引率を現行の約30%(車両単位割引約20%+契約単位割引約10%)から約40%(車両単位割引を約30%に引き上げ)に拡充する。

 今後、補正予算による国の経済対策を加え、年末には新たな料金の「基本方針」を公表。その後具体的な料金案の公表とパブリックコメントなどを経て、来年4月から新たな料金制度をスタートさせる計画。

クール宅配便問題で大手3社が相次ぎ会見、再発防止策等示す

ヤマト運輸 システム、教育、リーダー配置、総量規制も検討へ

 ヤマト運輸は山内雅喜社長が出席し、11月28日に国交省で会見。冒頭に謝罪した後、調査結果と対策を説明した。調査は10月26日から11月15日まで、全国3924の拠点および70のベースに対して、クール宅急便の輸送全工程の社内ルール遵守状況について、ヒアリングおよび電話等で実施。さらに社内の仕分ルールおよび配達時ルールの妥当性を、東京家政大学の藤井建夫教授に検証を依頼した。

 その結果、仕分ルールが徹底できていなかった拠点が全体の6.4%にあたる253ヵ所、配達ルールが徹底できていなかった拠点が13.0%にあたる5100稼働(集荷・配達コース)あることがわかった。一方でルールの妥当性については、これを保証した。

 その上で同社は、ルールが徹底できなかった要因を、◎各拠点の指導者不在◎日常点検やモニタリングなど品質維持の仕組みが不十分◎繁忙期の抜本的対策が不十分◎顧客の声、拠点の声に耳を傾ける姿勢が不十分―と分析、次のとおり再発防止策を打ち出した。
 ①拠点の声に耳を傾け経営が一体となって品質の維持、向上に取り組む体制づくり=◎本社「クール宅急便品質管理対策推進室」の設置◎各主管支店長の下に、品質に特化した専任者として157人の「品質指導長」職を新設◎各拠点での「クール宅急便作業リーダー」の任命◎社内教育の充実。
 ②「クール宅急便」の取扱量の増加に対応するための体制強化=◎各拠点が「クール宅急便」の到着量を事前に端末で見ることができるクール宅急便「到着量見える化」システムの導入◎新しい機材、可変式車載保冷スペースを備えた車両の開発・導入。
 ③品質を維持するための定期的なモニタリングと、ルールの見直し=◎月間800件のモニタリング、3061台のモニターカメラ設置、年間千件の第三者による定期的立ち入り調査実施◎拠点における作業のIT化◎仕分け、配達ルールを分かりやすく見直し。

 また、来年7月を目途にクール宅急便の「総量管理制度」を導入し、特に繁忙期における「クール宅急便」の1日ごとの取り扱い可能総量を事前に見極め、総量の範囲内で荷物を受ける体制を整える。

 これらの対策の一部は、今月の繁忙期にも導入していく考え。さらに一連の事態を受けて、社長以下執行役員まで、減棒の処分を行った。

 会見で山内社長は、「残念で申し訳ない。重大な責任を感じている。サービス第一でやってきたつもりだが、現場第一線とのコミュニケーションが不足していた」と述べ、品質改善に全力で臨む姿勢を強調した。一方で総量規制については、「大口法人荷主を中心に、配達日変更などのお願いをする形になる」との見通しを示しつつ、「取扱数量を増やす投資も強化していく」と述べ、荷受拒否といった事態に陥らないよう進めていく考えを示した。さらに「クール宅急便」の取扱個数への影響については、「荷主との取り引きは継続しており、個数は依然前年実績を上回っている」とした。


佐川急便 機材を大幅拡充

 佐川急便は11月29日、鈴木喜一常務取締役らが会見で謝罪し、調査結果と対策を説明した。調査は、2013年度上半期の飛脚クール便の温度上昇による賠償891件を対象に行った。

 その原因は、運用未徹底や人為的ミスが603件、顧客への商品案内不十分が101件、車両・機材の不足が31件、詳細不明が156件となった。

 この結果を踏まえ同社では、次のとおり対策を打ち出している。

 ①備品の増強=◎保冷12時間の新型ボックスを約1万個導入し、全1万9千個をすべて代替◎冷凍倉庫62台、冷蔵倉庫57台を85ヵ所の営業店に配備し、保管・仕分スペースを拡大◎保冷ショルダーバッグを5500個追加補充◎サービスセンター65ヵ所、営業所9ヵ所に冷凍・冷蔵庫を導入。
 ②運用面の見直し=◎ケアマークシール(冷凍、冷蔵区分を表示するシール)の刷新◎飛脚クール便の管理温度帯に適さない荷物の案内強化◎大型や異型梱包など保冷が難しい荷物の取り扱い禁止の徹底◎車両帰庫時の残荷確認徹底◎社員教育強化◎営業店での自主点検継続実施。
 ③体制面の見直し=各営業店の飛脚クール便責任者の役割再確認・見直し。
 このうち備品増強については、最繁忙期の今月20日ごろまでに整備していきたいとしている。


日本郵便 月1回の自主点検や繁忙期前の立ち入り点検等

 日本郵便は11月27日、東京・霞が関の同本社で記者会見を開き、適切な取り扱いに向けた今後の対応策等について説明した。会見には、諌山親専務執行役員郵便事業総本部長、上沼雄治常務執行役オペレーション本部長が出席し、不備があった点、調査に時間を要した点についてまず謝罪し、全国一斉点検の結果と、今後の対応策を発表した。
 一斉点検では全国4835局を対象に実施し、「蓄冷剤用冷凍庫の温度が規定温度を超えていた」「保冷バッグへの納入前放置」など取り扱い方法の不備・保冷機材の不足を確認した局が52、保冷バッグの点検用温度計が不足していた局が412局あったと説明。また、過去にも取り扱い不備があったかをヒアリング調査したところ、255局で不備・不足に関する報告があったことを明らかにした。
 不備があった郵便局には即時に指導し、2014年1月までに保冷取り扱い方法の研修を行うとともに、月1回の自主点検と繁忙期前の立ち入り点検を実施して、社内体制の構築を図ると述べた。
 

今週掲載トピック一覧

  • ☆特集、日本通運中部警送支店年末防犯訓練
    ☆物流にとってアベノミクス『吉』か『凶』か⑪
    ☆連載企画、『通販~トレンドと近未来予測~』(2)「ネット通販が伸びたわけ」
    ☆四文字『輸送史に残る「馬力輸送」』
    ☆道『規制緩和時代の幕開け(22)』

  • ☆全ト協燃料高騰対策本部、今月から冬季のアイドリングストップで特別キャンペーン
    ☆秋闘妥結状況
    ☆SBSフレック、茨城・阿見町に同社初の低温物流全国車両基地が竣工
    ☆JR貨物、東タ構内施設起工式「新時代の始まりに」 
    ☆東ト協出版・印刷・製本・取次部会が出版関係懇談会開く
    ☆カンダ子会社のペガサスグローバルエクスプレスがジャカルタに駐在員事務所
    ☆西濃運輸、手作りカレンダーを被災中学校へ発送
    ☆日立物流、シナジー最大化狙い香港と台湾で海外子会社を再編
    ☆日通総研ロジゼミ、ネット通販物流の市場分析など解説

今週のユソー編集室

  • ▼とある印刷会社の関係者が、セキュリティへの配慮について語る。「印刷物の内容が発売前にネットに流失したら信用に関わる。私物の持ち込みに神経をとがらせている」。
    ▼そう言えば、近年の高度化しつつある物流施設の売り文句には、環境保全や災害時の事業継続性とともに、情報面まで含めたセキュリティ体制の整備が加わっているケースが多い。
    ▼確かに心ない社員やアルバイトらがネットにアップした画像や動画から、その企業が批判にさらされるケースが激増している。そうした先進的な物流施設内に設けられている監視カメラの数の多さが、そのまま企業側の危機意識の高さを表しているとも言えるのかもしれない。
    ▼ただ、いくら設備や制度を整えても、そこに人間が関係する以上、リスクはなくならない。そういう意味で、セキュリティというものは、どこか交通事故に似ているように思う。どちらも最終的には教育が重要という意味でも。

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