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2014年9月1日付 2532号

国交省の15年度予算概算要求、物流・自動車分野での労働力不足対策盛り込む

 国土交通省は8月27日、2015年度予算概算要求の内容を公表。自動車局や総合政策局では、物流業界で深刻化する労働力不足に対応するため、先駆的モデル事業の実施や解決策の検討などに関する要求を新たに盛り込んでいる。国土交通省関係の概算要求は一般会計で6兆6870億円となっており前年度比16%増。このうち、「新しい日本のための優先課題推進枠」は1兆4181億円。

 自動車局では、優先課題推進枠を活用し、「自動車運送事業等における人材の確保・育成に向けた取り組みの推進」で新規に1億5千万円を要求。「女性・若年者雇用の先駆的モデル事業等」「ITを活用した中継輸送実証実験」「整備業での外国人技能実習制度に係るマニュアル作成等」を3本柱に、人流・物流のネットワーク確保に努める。
 「女性・若年者雇用の先駆的モデル事業等」では、モデルケースの創出のほか、ガイドライン作成やシンポジウムを通じた普及啓発などを実施。
 「ITを活用した中継輸送実証実験」では、複数人で1つの運送を分担し、不規則・長時間労働の解消につなげるとともに、女性向けの短時間勤務などを可能とするための実験を行う。
 このほか、優先課題推進枠を活用して、「地域のグリーン化を通じた電気自動車の加速度的普及促進」で5億円を要求。電気トラックの場合、車体本体と充電施設の導入費用の3分の1を補助する。
 ドラレコ補助などを行う「自動車運送事業の安全総合対策事業(事故防止対策支援推進事業)」では、14年度予算額比20%増となる11億700万円を要求し、引き続きトラック事業者などに対しASV(先進安全自動車)やドラレコ、ヘルスケア機器等の導入を後押しする。

 また、事業用自動車の安全対策の新メニューとして、「総合安全情報の分析機能強化による事故の未然防止」を、新規に1億1500万円要求。監査情報や事故情報、検査登録情報を分析して、要監視事業者リストの作成や事業者格付け情報の提供などを行い、事故防止の強化を図る。

 CNG・ハイブリッドトラックなどの導入支援を行う「環境対応車普及対策」では、14年度予算比で2%減の5億2100万円を要求。

 他省庁との連携事業では、経済産業省との連携で、「省エネルギー型ロジスティクス等推進事業費補助金」「国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業」、環境省との連携で、「物流の低炭素化促進事業」「中小トラックにおける低炭素化推進事業」などを継続案件として要求している。

 組織・定員関係では、本省10人、地方運輸局48人の合計58人の増員を要求しており、地方運輸局ではこのうち29人を監査体制強化に充てることとしている。

 税制改正要望では、14年度与党税制改正大綱に沿って、自動車税については消費税10%段階で、環境性能課税や技術開発動向などを踏まえ、環境面に優れた事業用自動車への軽減措置などを講じることなどが盛り込まれた。

 また、ASVの自動車重量税・取得税の特例措置をトラックでは3.5トン超8トン以下を対象に加えた上で、3年間延長することを求めている。

宅配の再配達削減でも要求

 総合政策局のうち、物流審議官が担当する分野では、新規として、「地域物流の新たな仕組みの構築」と「労働力不足対策」を盛り込んだ。これに、継続案件である、「国際物流のシームレス化」を加え、「物流産業イノベーション」として、1億3500万円を要求。

 「地域物流の新たな仕組みの構築」では、経済産業省との連携で過疎地などの宅配サービスの維持・改善に役立つ輸送システム構築に向けモデル事業を実施するとともに、農林水産省との連携で、農水産物の輸出促進に向けた調査や資機材の要件に関する検討などを行う。物流産業イノベーションの要求額1億3500万円のうち、過疎地対策に5千万円、農水産物輸出対策に1千万円の配分を想定。

 「労働力不足対策」では、物流事業者と求職者の意向把握や就業促進策を検討するほか、長時間待機や事前合意のない荷役作業の要求などの商慣行の実態把握を行うとともに、体力のない女性や高齢者の就業拡大に向けた環境整備を進める。配分想定額は1千万円。

 また、宅配便の再配達削減に向け、消費者の属性別の傾向把握などを行う。配分想定額は2千万円。さらに、空コンテナを削減し、ラウンドユース(往復輸送)するための課題検討で1700万円を想定している。

 「国際物流のシームレス化」では、物流情報サービスネットワーク「NEAL―NET」のASEAN諸国などへの拡大の検討で1千万円、パレットなど物流機材のリターナブルユース(反復利用)の促進で1800万円を想定している。

 物流のグリーン化では、モーダルシフト等推進事業で14年度と同額の3800万円を要求したほか、環境省との連携で設備導入補助を行う。環境省との連携ではこのほか、31フィートコンテナ導入補助、低床貨車の鉄道輸送実験、地域内輸送の共同化促進、異業種間共同輸配送促進に向けた検討などを盛り込んだ。

 さらに、倉庫等における省エネ設備・機器導入やCNGトラックへの転換、先進技術を利用した省エネ型自然冷媒機器の普及促進も環境省との連携事業として要求。

 災害に強い物流システムの構築では2億2700万円を要求し、広域連携体制の構築や訓練の実施、民間物資拠点に関する位置・設備情報の地理情報システム上への掲載などを行う。

 税制改正要望については、物流効率化法認定施設の割増償却、課税標準特例が期限を迎えることから、要件を普通倉庫3千平方メートル以上(現在は1500平方メートル以上)、冷蔵倉庫6千平方メートル以上(同3千平方メートル以上)に引き上げた上で、2年間の延長を求めている。

千葉支店を規模拡張しリニューアル、首都圏の体制整う  第一貨物

千葉支店の建物外観 鏡開きのもよう

 第一貨物(武藤幸規社長)はきょう1日、千葉・四街道市に建設していた千葉支店をリニューアルオープンする。

 同社では従来、千葉県内に1事業所(千葉支店)と1物流センターを配置し、協力会社への委託を行いながら県内全域の配送を行ってきたが、1971年に千葉市若葉区で営業を開始した旧千葉支店は、老朽化が進み手狭ともなっていたため、移転した上で施設規模を拡大したもの。

 所在地は四街道市大日字大作岡1112。敷地面積は3万8千平方メートル、建物は鉄骨造一部2階建て延べ床面積6582平方メートル。旧施設との比較では、敷地面積で約5.8倍、延べ床面積で約3.7倍となり、それぞれ大幅に拡大した。大型車は30台、小型車は36台の同時着車が可能。車両台数は、集配用の2トン車が13台、4トン車が35台、7トン車が1台、大型車が19台、トラクタ3台、トレーラ3台。

 荷捌スペースと車庫面積を拡大したことで、ターミナル運営や集配業務の効率化など品質向上を実現するほか、近隣事業所との集配エリアの見直しを行い、あわせて集中的な営業展開による新規顧客獲得や既存顧客の拡販による増収を目指していく。1日当たりの取扱貨物量は、新規顧客分を含め到着で330トン、発送で340トンを見込んでいる。

 小型車バースを屋内に入れるインドア方式を採用し、風雨によって作業環境が悪化しないよう配慮しているほか、照明に長寿命LEDを採用するなど省エネも実現。監視カメラを39台設置するなどセキュリティも確保し、敷地周囲に緑地帯や調整池を配して周辺環境との調和も意識しており、災害時には近隣の避難場所としても機能する。土地は賃借、建物は第一貨物の所有。

 新施設の稼働により、旧千葉支店で自社集配を行っていた千葉市周辺の6市町に加え、市原市と八千代市および印西市、成田市、栄町のそれぞれ一部を自社集配エリアとした。また、東京支店から協力会社に配送を委託していた船橋市、木更津市、君津市、館山市など9市1郡1町について、千葉支店から委託するよう見直す。

 同社では、すでに開設した大宮、入間、厚木第一、厚木第二の各拠点とあわせ、順次整備が進む圏央道沿いの拠点間で、中継の効率化など高品質な輸送サービスの提供が可能になるとしており、さらに東京オリンピック・パラリンピック開催時には、東京支店をカバーすることも可能としている。

 開業前の8月28日には、現地で披露パーティーを開催。主催者あいさつした武藤社長は、「当社の千葉支店は1968年に開設し、71年に現在の千葉支店に移転したが、その後多くの顧客の支持で、当社における中堅店舗に成長した。施設の老朽化と狭あい化が進み、以前から移転を考えていた」と移転の経緯を述べた上で、地主、設計、施工関係者に対して感謝の意を示した。施設については、「少し規模が大きいが、これからの発展を計算したもので、よりよいサービスが提供できるようになる。圏央道沿いの5拠点が完成したことで、首都圏のサービス体制は完璧になった。今後東北と中京・関西間で中継効率を改善し、画期的なサービスが提供できるようになる」と展望を示すとともに、「労働力不足や燃油高騰の問題など、物流業界にはアゲインストが吹いているが、いついかなる時も継続して輸送を実施できるよう、従業員が一致団結する」と強調した。

 来賓からは、四街道市の佐渡斉市長、日本食研ホールディングスの越智保夫専務執行役員、日本ペイントの中村治彦千葉工場長がそれぞれ祝辞を述べ、丸運建設の小田等社長も加え5人で鏡開きを行った。

今週掲載トピック一覧

  • ☆人物ウィークリー、公益社団法人全国通運連盟・飯塚裕理事長

  • ☆日貨協連、全国から120人が参加しWebKIT実務担当者研修会(東地区)開く
    ☆運輸労連山浦委員長が会見、燃油高騰問題で11月に全国行動展開
    ☆佐川急便の全国安全パトロール、今回も18ヵ所で一般貨物自動車向けの点検実施
    ☆日通NECロジ、海外輸送状況をスマホでも見える化
    ☆佐川急便、福岡市内で宅配車両利用したラッピング広告
    ☆日中韓物流大臣会合、日韓間シャシ相互通行の実験ルート拡大へ
    ☆国交省、エコタイヤ導入補助の2次公募実施へ
    ☆運輸労連東京都連、第47回定期大会開く
    ☆厚労省の1~7月労災速報、陸運事業の死傷災害は墜落・転落が突出
    ☆佐川急便、リコール対応マニュアル作成サポートを開始
    ☆三井倉庫、中堅・中小企業対象にクラウド型書類保管サービス開始
    ☆経産省、13年の国内BtoC-EC市場は11兆2千億円の規模に
    ☆日通、原木BILT-2で医療機器製造業の許可取得
    ☆日本郵便、通販ソリューションをワンストップで提供へ
    ☆日通、トラック貸切運賃24年ぶり値上げ改定
    ☆全ト協、交付金事業の評価で9項目中7項目でA評価
    ☆警察庁の中型免許見直し報告書、6日まで意見募集

今週のユソー編集室

  • ▼遠くの空に見えていた雲が、どんどん大きくなりながら、刻一刻と近づいてくる。景気に対する現段階の見通しを何かに例えるとしたら、そんな感じではないだろうか。
    ▼全ト協がこのほどまとめた4~6月の景況感が、大幅に悪化しマイナスに転じた。7~8月の見通しは、そこからさらに悪化している。各種の指標や企業トップの発言をみても、消費税増税が確実に景気の足を引っ張っている現状がうかがえる。
    ▼ドライバー不足や駆け込み需要を背景とした今年の春闘の妥結額は、平均すればおおむね前年を上回っているものの、他産業との格差はさらに拡大したという懸念もある。そのとおりだとすれば、物流業の社会的地位は相対的に低下したわけだ。
    ▼政府は消費税再増税を進めようとしているが、それどころではあるまいという気がする。燃油高騰にあえぐ物流業界から見て、理不尽極まりない軽油引取税旧暫定税率の廃止こそが正しい道だろう。

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