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2015年3月2日付 2555号

鉄道貨物の輸送障害で代替輸送の検討会発足、荷主などからヒアリング  国交省

 国土交通省は、環境対策や労働力不足対策の観点からモーダルシフトの受け皿として重要性が高まる鉄道貨物について、輸送障害時の代替輸送に関する課題抽出や解決方策を検討するため「モーダルシフト促進のための貨物鉄道の輸送障害時の代替輸送に係る諸課題に関する検討会」を設置。2月25日に東京都千代田区の同省で第1回会合を開き、JR貨物と荷主3社から輸送障害時の対応などについてヒアリングを行った。

 鉄道による貨物輸送は、トラックに比べトンキロ当たりのCO2排出量が少なく環境対策として有効なことに加え、大量輸送により近年深刻化するトラックドライバー不足対策の“切り札”として期待が高まっている。一方、自然災害や事故などで路線が不通となる輸送障害時には、荷扱い可能な駅以外でコンテナを取り降ろせないことや代替輸送のトラックの手配が困難であることなどが、荷主の鉄道へのモーダルシフトを妨げる大きな要因となっている。

 特に、昨年10月に台風の影響で鉄道貨物の約半数が通過する東海道線静岡県内区間が11日間にわたり不通となった際には、積極的にモーダルシフトを進めていた荷主企業が代替輸送のトラック確保に苦労するなど、輸送障害時の鉄道貨物輸送の弱点が浮き彫りになった。こうした状況を踏まえ、6月までに計4回の会合を開き、輸送障害時の代替輸送での課題点を荷主からのヒアリングなどを通じて吸い上げるとともに、関係者間のルール作りや行政による支援のあり方などを検討することを決めたもの。

 委員は、杉山武彦成城大教授を座長に、全国通運連盟、全国通運、JR貨物、ヤマト運輸、佐川急便、日本通運など物流企業関係者のほか、味の素、パナソニック、トヨタ自動車、住友化学など荷主企業関係者や学識経験者らで構成。

 第1回会合ではまず、国交省の担当官が鉄道モーダルシフトについての現状や輸送障害時に関する問題意識について説明。トンキロベースでは、鉄道の輸送分担率は約5%前後で推移しているものの、輸送距離500キロメートル以上では2003年の7.7%から07年には10.2%に向上するなど、荷主の環境意識向上や行政による支援の効果が表れている。また、物流事業者ではトレーラ確保が困難になっていることにより海上コンテナの鉄道による国内輸送への関心が高まっていることなどが紹介された。

 一方で、13、14年度の輸送障害時の代行輸送リカバリー率は約14%にとどまっており、物流事業者に対して行ったアンケートでも「災害に弱く、輸送の確実性に不安がある」「輸送状況に関する情報が入手しにくい」「災害時に他モードの確保を行わなければならない不安がある」などの意見が上位を占めた。

荷主からの要望は多岐に

 JR貨物からは玉木良知総括執行役員がトラック代行輸送を想定して大型コンテナの通行許可申請をあらかじめ行うよう利用運送事業者に働きかけを行っていることなどを説明するとともに、土砂崩れなどのリスクが分かっている場所については、行政の砂防・道路関係部署などとの連携により予防措置を行う必要があると訴えた。

 荷主からは、住友化学、トヨタ自動車、パナソニックの各担当者が説明を行い、住友化学の藤永剛史物流部長は、デリケートな温度管理が必要な化学製品が鉄道輸送中に運行中止などになった場合には、できるだけ早くコンテナを取り降ろさなければ製品劣化が発生しかねないとして、最寄り駅での代行トラックへの積み替えが円滑に行えるように要望した。

 トヨタ自動車の熊沢洋一生産部品物流部部長は、名古屋~盛岡間で専用列車「トヨタ号」を使って輸送を行っているが、輸送障害時には大型車の通行許可申請の関係から通常の31フィートコンテナに代えて10トントラックで代行輸送を行ったことなどを紹介。その上で、JR貨物は輸送障害時には12フィートコンテナを使ってでも鉄道で輸送する体制を構築すべきとした。

 パナソニックの金城佐和子モノづくり本部物流強化グループ企画チーム主幹は、列車発車後以外の代替トラック確保によるコストアップ分は荷主が負担していることなど問題点を指摘したほか、31フィートコンテナの不足が発生しないよう“輸送インフラ”の整備を要望した。

 次回検討会は、4月13日に開催し、ヤマト運輸、佐川急便、日本通運などからヒアリングを行う予定。

北米向けシーアンドエアの新商品「エアさっと!」発売  日通

 日本通運(渡邉健二社長)は2月23日、北米西海岸の港湾混雑回避に対応する日本発ホノルル経由ロサンゼルス向けシーアンドエアサービスを開始したと発表した。「NEX―MULTIMODALエアさっと!北米」は、海上コンテナ1本分を満たす貨物(FCL貨物)を対象とし、横浜港からホノルルまで海上輸送し、ホノルルからロサンゼルスまでを貨物専用機で航空輸送する。

 現在、ロサンゼルスをはじめとした北米西海岸の港湾では、荷役作業の遅延や港湾ターミナル内のコンテナシャーシ不足等により、大幅な混雑が続き、労使紛争は2月20日に暫定合意したが、正常化するまでには、しばらくかかる見込み。港湾混雑のリスクに対応するとともに、米国西海岸向けの新たな輸送サービスとして、現在の混雑が解消した後も提供していく。経由地のホノルルでは、米国日通ハワイ営業所が保税転送手続きを行い、船舶から航空機へのスムーズな接続が可能。

今週掲載トピック一覧

  • ☆引越特集(2)
     全ト協の引越繁忙期対策
     各社の引越施策
      ヤマトホームコンビニエンス
      押入れ産業
      トナミ運輸
      セイノー引越
    ☆物流にとってアベノミクス『吉』か『凶』か(34)

  • ☆国交省の物流政策アドバイザリー会議、内航海運の利用促進へ荷主にヒアリング
    ☆国交省の調査会、荷主の海上コンテナ鉄道利用は関心あるが可能性は低い
    ☆東ト協が事故防止大会、安全を外部に発信へ
    ☆全ト協の景況感調査、10~12月期は各規模で改善
    ☆押入れ産業が全国大会、本部主体でレンタル収納サービス事業を強化
    ☆全ト協青年部会が全国大会、子供たちが入りたい業界に
    ☆千葉ト協が物流セミナー、労働力不足問題などとりあげ
    ☆東京トラック同友会が通常総会、原島会長らを再任
    ☆日通東京航空支店、業界初の出荷・仕向地一覧表示で輸送状況検索を「見える化」
    ☆全ト協と日貨協連が一般道での大型車対距離課金に「断固反対」の意見表明
    ☆セイノーHD、グループ6社を完全子会社化
    ☆日通商事、インドネシアに2番目の新センター開設へ
    ☆国交省の検討委、過疎地での物流維持でまとめの骨子案を審議
    ☆ヤマト運輸、メール便代替新商品「クロネコDM便」のサービス内容発表
    ☆日通、スロベニア・コペル港経由の中東欧ダイレクト混載商品発売
    ☆国交省、タイ・ラオス・ベトナム間で国際宅配のトライアル実施
    ☆日通がビジネスフェア開催、東京会場には800人が来場

今週のユソー編集室

  • ▼国土交通省は現在、過疎地での物流ネットワーク維持に関する検討を進めている。貨客混載や共同配送などの仕組みで物流を効率化し、あわせて生活支援サービスの向上も図っていく考えだ。
    ▼総務省が2006年と10年に実施した集落の実態調査によると、全国に約6万5千ある集落のうち、その4年間で93の集落が消滅した。いずれ消滅するおそれがある集落は約2800にのぼる。
    ▼10年の調査からさらに4年が経過し、状態はさらに悪化しているものと思われる。宅配物流ネットワークの維持が困難になってきているのは自明で、貨客混載やNPO等による共配など、新しいネットワークの形が検討されている。
    ▼同時に進めてほしいのは、やはり子どもを産み・育てやすい社会の実現だ。集落の維持・活性化を目指すにしても、人口が減少局面にあるようでは、満足な効果を得ることは難しいだろう。政治が大きな力を発揮するよう、期待したい。

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