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2015年10月12日付 2582号

労働力不足でシンポジウム、連携の重要性確認 通運連盟

パネルディスカッションでは省力化の重要性を確認した

 全国通運連盟(川合正矩会長)は8日、東京都中央区の時事通信ホールで、日本物流団体連合会・鉄道貨物協会の協賛、国土交通省の後援による「労働力不足に対応した物流のあり方に関するシンポジウム2015」を開催した。昨年度に引き続き2回目の開催で、本年度は手荷役の改善など省力化をメーンテーマとして取り上げた。
 冒頭あいさつした川合会長は「昨年度のシンポジウムでは、物流事業者による労働環境整備、業界イメージの改善、省力化・モーダルシフトの推進の重要性などを確認した。本年度はそれらを踏まえ、物流現場での改善事例などを通じて、喫緊の課題にどのように取り組んでいくかを明らかにしたい」と述べた。

 引き続き運輸政策研究機構の杉山武彦副会長をコーディネーターとするパネルディスカッションが行われ、センコーの上田良範通運事業管理部部長、リクルートジョブズの宇佐川邦子ジョブズリサーチセンター長、日通総合研究所の大島弘明経済研究部主席研究員、国交省の羽尾一郎物流審議官、ブリヂストン物流の久野雅人取締役、カルビーの松元久志物流部長、日本パレットレンタルの五十嵐誠事業開発部営業開発グループ長の7人が意見や自社の取り組みを語った。
 大島主席研究員は通運連盟の委託事業として行った、通運業界における労働力不足の現状調査の結果を報告。トラック運送事業全体と比較して高齢化が進み、手待ち時間と荷役に時間がかかっていること、特に12フィートコンテナで手荷役率が高いことなどを説明した。
 上田部長はセンコーにおけるモーダルシフトの事例を紹介しつつ「人手不足が深刻化してモノが運べない状態が日常化すれば、真っ先に影響を受けるのが手荷役の荷主。荷主もモーダルシフトの目標を設定し取り組んでほしい」と訴える一方、「モーダルシフトを単純に輸送機関を変えることと捉えずに、輸送体系を再構築することだと理解しないと、早い段階でプランは行き詰まる」と注意を促した。

 松元部長はカルビーにおけるパレット化の推進により、トラック輸送で30%の積載効率低下がみられたものの、荷役時間の大幅な短縮から回転率でこれをカバーする取り組みを進め、レンタルパレットの活用などで回収コストを抑えていることを説明。久野取締役はブリヂストンが進めている「選ばれる荷主活動」の一環として、トラックを待たせない取り組みを進めていることを紹介。トラック運送事業者の収益改善を念頭に置いて活動していることを強調した。
 羽尾審議官は国交省のさまざまな施策を紹介しながら、先日審議会から「モーダルシフト政策は十分な効果を発現していない」と厳しく指摘されたことに触れ、国交省としても取り組みを強化する一方「関係者の連携がなければ財務当局の理解を得られない」と語り、連携していくことの重要性を訴えた。
 杉山副会長はまとめとして、人口減少社会における経済成長実現のためには、生産性向上が不可欠であることを指摘。生産性向上のポイントとして省力化、インフラ整備、共通化・標準化の3点を挙げ、その推進に当たっては適正なコスト負担と関係者全体の連携がカギになることを強調した。

5月実施の調査結果公表、東京港コンテナターミナルで約6時間の待機も  東ト協海コン専門部会

 東京都トラック協会海上コンテナ専門部会はこのほど、5月に実施した東京港各コンテナターミナルでの海上コンテナ車両待機時間調査(第6回)の結果を発表。並び始めからゲートアウトまでの平均待機時間は、ほぼ全ての作業内容で2時間以内となり、一時期に比べ減少傾向にあるとみられるものの、ターミナルによっては調査期間中に4時間を超える待機時間が発生した車両も複数あり、中には5時間48分と約6時間にわたる待機を強いられた車両があったこともわかった。

 調査は、年2回実施しており、5月11~30日に行った第6回調査では、東京都・神奈川県・茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県の各トラック協会海上コンテナ部会に所属する事業者のうち、29店社を対象に東京港でコンテナ搬出入業務を行う頻度の高い車両を1店社当たり5台を目安に選定し、各コンテナターミナルでの並び始めとゲートアウトの時刻をトラック運転者が所定の調査票に記入する方式で実施した。
 調査結果は、「ターミナル」「輸出・輸入」「作業内容=空コンテナ搬出・実入りコンテナ搬入・実入りコンテナ搬出・空コンテナ搬入」「日付」などにより分類・整理している。
 青海地区での平均待機時間は、259本が調査対象となった「A―1ターミナル」の「輸出実入りコンテナ搬入」が29分で最も短く、そのほかも多くが1時間前後の待機時間となっている。最も長かったのは、「中央防波堤内側外貿雑貨埠頭」の「輸入実入りコンテナ搬出」で2時間5分。

 調査期間中、長時間待機が顕著だったのが、5月11日の大井4号コンテナターミナルで、午前7時半に並び始めた「空コンテナ搬入」の車両がゲートアウトしたのは5時間48分後の午後1時18分だった。同じく午前7時半に並び始めた「実入りコンテナ搬入」の車両もゲートアウトまで5時間27分かかっている。
 混雑傾向はしばらく続き、同ターミナルに午前10時までに並び始めた調査対象車両は全て3時間を超える長時間待機となった。

今週掲載トピック一覧

  • ☆四文字『珍しい逆春闘「企業防衛」』
    ☆道『国際化に至る道半世紀』(9)

  • ☆石井国交大臣が就任会見、トラック運転者不足対策で中継輸送など促進
    ☆全ト協・日貨協連、9月のWebKIT速報を発表 求車の荷物情報が2桁増に 本年度初の10万件超
    ☆建交労首都圏労使協、脳MRI健診学ぶ秋定例会と勉強会を開催
    ☆国交省、パイロットプロジェクトの一環で自動車部品輸送シャシーの日中間を相互通行を開始
    ☆国交省の毛利総合政策局長が会見、社会資本整備重点計画に基づきストック効果最大化を図る
    ☆埼ト協・陸災防埼玉支部共催で労災撲滅大会開催
    ☆センコー、技能コンテスト「チャンピオンシップ2015」を開催 日本・米国・中国・タイから参加
    ☆日通総研ロジゼミシリーズ ~セブンイレブンの物流 小売り物流の成功要因を探る~を開催
    ☆総務省、改定案に意見募集 特定信書便標準約款を制定 3号役務「800円」超に
    ☆トナミHD、再編後の概要発表 連結子会社10社を5社に 1日付で手続き完了
    ☆SGムービング、ネット通販で購入の家電製品に2タイプの延長保証サービスを開始
    ☆丸運物流(天津)、中国国内で3番目の拠点 現地で開業式を開催
    ☆日通労連定期大会 難波会長あいさつ 「人を大切にする企業 人件費はバリュー」
    ☆東京交運労協、トラックの日行動を展開 課題解決へ理解を
    ☆物流連、海外物流戦略WTでカンボジアの概況等課題の情報共有を図る
    ☆交運労協定期総会、住野敏彦議長らを再任 事務局長に松伸幸氏
    ☆日通、日中ダブルライセンスシャシー登録の完了
    ☆日本ロジテム、埼玉県比企郡に物流センター吉見営業所を開設 延べ床6万平方規模
    ☆日本郵便、365日・24時間受け取りサービス 全国のファミマで
    ☆物流連、ユニットロードシステム小委を開催 アンケート調査の内容を検討 手荷役の実態把握へ
    ☆国交省、手続き簡素化でパブリックコメントの募集を開始 トラック法に基づく信書便標準約款を公示へ
    ☆全ト協・日貨協連、WebKITの成約数を発表 9月の成約運賃指数は引き続き高い傾向

今週のユソー編集室

  • ▼米国・アトランタで行われていた環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉は5日、5年半に及ぶ長い協議の時を経て、参加12ヵ国の大筋合意に達した。
    ▼協定の発効にはなお曲折が予想されているものの、まずは世界最大の自由貿易圏誕生に向けて、大きな一歩を踏み出した。経済界は一様に歓迎の意を表しているのに対し、特に国内農業関係者は安価な農作物の流入に対する懸念を隠さない。
    ▼6日に記者会見した安倍首相はそうした情勢を踏まえ、農業分野における国内対策に万全を期す考えを示した。農水省の試算によれば、TPP参加により現状40%程度の食料自給率が14%程度まで落ち込むというのだから、確かに無視はできない。
    ▼物流業界では米国UPS社が合意を歓迎するコメントを発した。貿易の円滑化や不透明な商慣行の是正が進めば、国際物流は急加速していくに違いない。日本の物流企業の次の一手にも、大きな注目が集まっている。

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