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2015年12月7日付 2589号

自動運転の記録機能、ドライブレコーダーの有効・必要性を提言  シンポジウム「ドラプリ2015」

 「車の自動運転社会が到来すると、航空機のフライトレコーダーに相当する機能が必要となり、その役割をドライブレコーダーが担うことになる」。
 
 自動走行の実現可能性が高まる中で、万一の事故に備えた記録システムとしてのドラレコの将来展望を探るシンポジウム『ドラプリ2015「ドライブレコーダーと自動運転(高度運転支援)」』(ドライブレコーダー協議会・神奈川大学工学研究所共催)が1日、東京都千代田区の日本大学駿河台校舎で開かれ会員事業者・産学官関係者など約160人が参加、「トラック隊列走行」の早期実現の可能性や、映像記録の有効性についての指摘・提言が行われた。

 シンポジウム冒頭にあいさつした松浦春樹神奈川大教授は、事故予防の「プロアクティブ」に対し、原因を究明する「リプロアクティブ」のミッションをドラレコは担っていると述べ、専門各分野で意見を交わし、議論を深堀りしてほしいと語った。
 
 国土交通省の久保田秀暢自動車局技術政策課国際業務室長による基調講演「自動運転に関する国内外の動向」に続き、ITS Japanの内村孝彦理事、NTTデータアイの宮嵜拓郎特別参与、審調社の森澤三郎課長代理、明治大学の中山幸二法科大学院教授がそれぞれ自動運転の最新動向や、事故発生時の立証責任の方向性などを講演。このうち、内村理事は「トラック隊列走行は、早期実現の可能性を感じる」との見解を述べ、トラックの幹線輸送分野での実現の可能性を示唆した。

 一方、宮嵜特別参与は自動運転により事故がなくなるとの「安全神話」に警鐘を鳴らし、運転者・所有者、自動車製作者に責任がどの程度になるかを確定させる必要性を指摘。交通事故解析士である森澤課長代理は、電子制御システムに起因する自動車事故事例を披露し、運転状況の記録の重要性を訴えた。中山教授は手動・自動が混在する段階を見据えた「未来の法構造」を提唱した。
 
 自動運転技術は、「一部自動」のレベルワンから「完全自動」のレベル4までのステップに区分され、政府では2020年前半までに「監視型自動」のレベル3実現を目指している。その実現性については、ASV(先進安全自動車)等ですでに実用化されている技術・システムや、近い将来に開発が見込まれる技術を積み上げていくことで可能と見込まれ、高速道路やルート走行など、一定の制約を設けた条件付きの場合は早い段階で技術的にはクリアできるものと見られている。国交省では16年度予算概算要求の新規項目「スマートモビリティシステム研究開発・実証事業」で複数台のトラックの縦列走行に向けた研究開発を要求している。

 一方で、無人走行であっても事故が発生した場合の所有者責任や製造者責任、対人事故を避けられない状況下での究極の選択等、新たな法的・道義的問題を整理・整備していく必要があるとされている。なお、ドラレコ専門の同シンポジウムは今回で7回目を数え、国交省はじめ5団体が協賛、今回から自動車事故対策機構が加わった。

マイナンバー一括支援サービスを来年1月から提供開始 収集から調書作成まで  YSD

 ヤマトシステム開発(YSD、星野芳彦社長)は来年1月から、「マイナンバー業務支援サービス」の提供を開始する。
 
 「マイナンバー業務支援サービス」は、企業が行う必要のある、対象者のマイナンバーの収集から提出状況の追跡、保管・管理、支払調書など法定調書の作成までを、高いセキュリティレベルを保った状態でアウトソースすることが可能なサービス。データ管理などの一部の業務のみのアウトソースも可能なため、顧客の状況や要望に合わせたプランニングが可能としている。
 
 また、委託を受けたマイナンバー情報については、YSDがこれまで宅急便やカード会員情報などの運用ノウハウで培った、高いレベルのセキュリティ環境で、安心安全に保管できることをアピールしている。
 
 YSDではサービスの導入により、企業は情報漏えいのリスクを抑えながら収集に関する業務や、収集した情報の保管・管理、それを活用した年末調整などの法定調書の作成など、業務負担を大幅に削減することが可能になるとしており、本年度末までに100社の導入を予定している。
 
 サービス料金は個別の見積もりとなるため、YSDまで問い合わせを求めている。問い合わせ電話番号は03(6333)0312。

今週掲載トピック一覧

  • ☆アベノミクス物流にとって「吉」か「凶」か(48)『設備投資 低迷の背景は』
    ☆四文字『発達とともに「事業法令」』
    ☆道『国際化に至る道半世紀』(13)
    ☆日中ビジネスワンポイント『「独身の日」&「ハロウィン」』
    ☆人物ウィークリー、ジェイアール貨物・不動産開発代表取締役社長 神立哲男氏

  • ☆社整審・交政審・物流関連部会、合同会議を開催 今後の物流政策の基本的な方向性に関する答申骨子案について審議
    ☆日通、「零担特快」サービス拡充 特快・一般便の二つの商品区分を設ける
    ☆全ト協・日貨協連、11月のWebKIT速報 求荷情報は前年同月比19%増となるも求車情報が下回る
    ☆トラック政治連盟、懇親パーティーを開催 自公衆参議員があいさつ「要望を真摯に受け止めその実現に全力をあげていきたい」
    ☆物流連、物流環境大賞の公募開始 部門表彰「日本物流記者会賞」を新設 来年2月29日まで受け付け
    ☆国交省、ETC2.0を活用した運行管理支援サービスの社会実験で参加事業者の公募開始
    ☆ブリヂストン、タイヤ内センサーで路面の状態を把握する新たな技術「CAIS」を実用化
    ☆あんサポ、第1回セミナー開催 ドライバーの「体調予報」の実用化 正式なサービスとして17年度リリースへ
    ☆千葉ト協・全ト協、物流セミナーを開催 深刻なドライバー不足への対応を訴え
    ☆全ト協、7~9月期トラック運送業界の景況感まとめ 軽油価格の下落で営業利益の改善効果
    ☆日通商事、インドネシアに現地で2番目となるサポートセンター開設
    ☆韓国研究機関一行、埼玉ト協へ「サイトくん」を視察
    ☆秋闘妥結状況
    ☆三井倉庫インターナショナル、米州統括会社を設立 ハンガリー、メキシコに拠点を開設
    ☆東ト協港支部、交通安全義士祭に参加 交通安全グッズなど通行人に配布
    ☆JR貨物、イオンとサッポロの物流を担う北長野~隅田川間で専用列車の運転開始
    ☆電話応対全国大会、濱田選手(佐川急便)が優勝 2年連続3回目の栄冠
    ☆SGHD、エコ絵画コンクールの環境大臣賞を発表
    ☆ヤマト福祉財団、第16回小倉昌男賞の贈呈式開催

今週のユソー編集室

  • ▼前号の小欄でも取り上げたが、国土交通省などによる「トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会」について、再度考えてみたい。
    ▼協議会設立の目的は、現在中小企業への適用が猶予されている時間外労働の割増賃金率の引き上げが、2019年に解除される予定であることから、長時間労働の解消に不可欠な荷主側の協力も得ながら改善を図っていくことだ。
    ▼ただ、トラック運送業界の賃金体系では、労働時間の短縮が収入の減少につながりかねないという現実がある。賃金が他産業に比べ低位に据え置かれていては労働力確保もおぼつかない。協議会の真の目的は、トラック運送業界の労働条件全般を改善することにある。
    ▼第2回中央協議会は、内閣府の生産性向上協議会との合同開催になった。生産性向上は重要な命題ではあろうが、それは手段であって目的ではない。トラック輸送産業の未来のために、真の目的を見失わないようにしてほしい。

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