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2016年6月27日付 2615号

わが国物流の国際展開 16年度物流パイロット事業の一環としてミャンマー~タイ間で農産品の輸送実験を開始  国交省

 国土交通省は23日、2016年度物流パイロット事業の一環として、ミャンマーでの農産品輸送の物流近代化に関する実証実験を開始した。

 多くの人口と低廉な労働力、豊富な天然資源を擁するミャンマーは、民主化後の経済制裁緩和や外国企業の進出などにより高い経済成長を続けており、物流の拠点としても注目を浴びている。

 一方で、電力不足により製造業の発展が遅れていることや、道路をはじめとするインフラ整備が進んでいないことなど、荷主とともに海外に進出することの多い日本の物流企業にとって、ミャンマーへの進出には課題が多いとされる。

 こうした中、新たな市場開拓のために日本の物流企業がミャンマーに進出するには、物流企業が主体となって、自社で扱う貨物を創り出すことも手段として考えられる。

 特に、ミャンマーの主要産業である農業は、農産品の品質管理体制や輸送技術の改善により規模の拡大が望めるため、物流企業進出の際の有力な貨物になる可能性を秘めている。

 こうした状況を踏まえ、国交省はミャンマーで日本の高品質な物流システムを展開するため、農産品の出荷・輸送に関する実証実験を行うことにしたもの。

 「物流機器を用いた野菜の輸送実験」と「マンゴーの高付加価値化実験」を通じて、効果や課題を具体的に調査・分析して、物流システムの形成・促進を図る。

 「物流機器を用いた野菜の輸送実験」は、農産品産地のシャン高原からヤンゴンを経て、タイのバンコクまで、荒れた道路にも対応する「防振パレット」や、通気性に優れた「折り畳みコンテナ」などの物流機器を用いてキャベツやトマトなどを輸送する。

 これにより、輸送時の衝撃に関する環境調査や、クロスボーダー輸送時の問題点などを把握の上、品質が保持されているかを確認する。きょう27日にシャン高原を出発し、国道1号を経て30日にヤンゴンに到着。7月10~13日には、ヤンゴン~バンコク間のクロスボーダー輸送を行う。

 「マンゴーの高付加価値化実験」については、マンゴーの集荷を行うマンダレーで出荷・輸送前に「選果機」を用いた選別により内部障害や糖度を検出して品質を安定化させるとともに、「蒸熱処理装置」により農産品の高付加価値化を図る。実験は23日に始まり、7月5日まで実施の予定。

シンガポールに重機の新会社「NEXグローバルエンジニアリング」を設立  日通

新会社の外観

 南アジア・オセアニア日本通運(高橋康紀社長)は22日、シンガポールに海外の重量品輸送・各種プラント事業を総括する「NEXグローバルエンジニアリング」を設立したと発表した。7月1日から営業を開始する。東南アジア地域での重機建設事業の強化を目指す。

 東南アジア諸国ではインフラ整備や工場の建設が増加しており、風力発電設備・工場設備や機器の据付・組立工事の需要が今後ますます高まっていくと見込まれ、新会社では重量物の運搬・据付工事やプラントエンジニアリング事業を通じて、顧客の海外進出に寄与するとともに、工場設置後の資材や製品の輸出入・通関業務、倉庫、国内配送など物流のあらゆるニーズにワンストップで対応していく。スタッフは120人。

 日通ではこれまでもベトナム・ニソンの製油所建設やマレーシア・ビンツルのLNGプラント建設プロジェクトなど、海外で多くの重量物運搬・据付工事を実施しており、新会社の設立により、中期経営計画に掲げる重量品建設事業のグローバル展開を一層強化する方針。

今週掲載トピック一覧

  • ☆物流にとってアベノミクス『吉』か『凶』か(61)「消費税増税は再延期に」
    ☆日中ビジネスワンポイント『「和室熱」と「大阪熱」』

  • ☆日通商事が食材探しマガジン『鮮』夏号の取り扱い開始、巻頭は新橋玉木屋 田巻社長
    ☆国交省・エネ庁、新型シャシーの導入に1台100万円を補助 EMS機器導入補助などの受け付けを開始
    ☆濱前関東運輸局長、東京オリンピック・パラリンピック見据えて関東交通観光戦略の策定を発表 物流効率化盛り込む
    ☆トナミ運輸、富山・石川・福井えりすぐり北陸3県の旬の味を取りそろえた中元ギフトを販売
    ☆運輸労連・交通労連の16春闘中間まとめ、大手組合と中小組合の規模間格差縮少へ
    ☆首都圏キット、組合員数が過去最大の250社に拡大 通常総会の役員改選で橋場理事長ら再任
    ☆厚労省が1~5月陸運業労災(速報)を発表、死傷災害は3.7%の増加 墜落・転落3割占める
    ☆国交省、「物流システムの国際標準化の推進に関する連絡検討会」の第2回を開催 現地の言葉で浸透を図り戦略的展開へ
    ☆セイノー商事、朝日大学とコラボ 商品の発表報告
    ☆関運局、管内自動車運送事業者の許可取り消し処分は12者 全て所在不明事業者
    ☆ヤマト運輸、「らくらくメルカリ便」SDの集荷開始 自宅から発送可能に
    ☆国際物流戦略チーム、7月6日大阪市で関西総合活性化モデルのPRセミナーを開催
    ☆省エネ省庁連絡会議、6~9月の4ヵ月間に夏季の省エネキャンペーンを呼び掛け
    ☆陸災防、夏期労災防止強調運動を7月1~31日に実施
    ☆日通、舞鶴発ウラジオストク向け少量貨物海混サービスを開始 輸送日数を7~10日短縮
    ☆JILSが定時総会を開催、新会長に遠藤日本電気社長が就任
    ☆日通総研、16年度経済・貨物輸送見通し改訂版を発表 国内貨物総輸送量は引き続き水面下で推移する予測
    ☆「日本ものづくりワールド2016」開催、物流ソリューションも展示
    ☆福通、広島県警と協定締結 特殊詐欺被害の防止へ向け宅配便に注意喚起シールを貼付する取り組みを開始

今週のユソー編集室

  • ▼選挙の夏がやって来た。第24回参議院議員通常選挙が22日に公示日を迎え、7月10日の投開票日までの18日間にわたり、各政党が熱い選挙戦線を繰り広げる。
    ▼選挙の争点の一つにアベノミクスが挙げられ、野党候補は「格差は拡大した」として政策転換を訴えている。格差と言えば、英国のEU離脱を問う国民投票が23日に行われたが、こちらでも離脱派の主張には格差拡大が挙げられていた。
    ▼連合の中間まとめによれば、2016春闘では大手組合と中小組合の妥結額の格差は縮小したようだ。「中小組合がより主体的に取り組みを行った成果であり、中小組合の頑張りで規模間格差の是正が進展した」と評価している。
    ▼物流業界でも本紙6面記事のとおり同様の傾向がみられるようだが、肝心の産業間格差は依然として大きく、ドライバー職の魅力が向上しているとは言い難い。格差是正への取り組みは、洋の東西を問わず重要な課題となっている。

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