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2016年8月22日付 2622号

荷役作業の料金などガイドライン作成 手荷役調査の最終報告書を公表  物流連

 日本物流団体連合会(工藤泰三会長)はこのほど、「トラック幹線輸送における手荷役の実態アンケート調査」の最終報告書を公表した。

 2015年7月に経営効率化委員会の傘下に「ユニットロードシステム検討小委員会」を設置し、トラック幹線輸送における人手不足への具体的な対応策の一つとしてユニットロードシステムの活用策を検討してきたが、最終報告書ではシステムの推進に向けて、荷役作業における料金設定の方法等をガイドラインで明示することなど、具体的な提案を行った。

 この調査については、本年4月に物流事業者に対するアンケート結果をまとめた中間報告を公表しているが(2607号6面参照)、最終報告書ではこれに加え①他の類似調査との比較検証②荷主、荷主業界団体へのヒアリング③提言にかえて(物流の真の効率化のために)―の各章を追加し、幅広い観点からより多面的な考察を加えた内容としている。

 物流連では今後、国交省・厚労省主導で進められている「トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会」などの場で、報告書の活用を訴えていく考え。

 最終報告書のうち「まとめ(問題提起)」では、今後取り組むべき課題として、物流事業者が手荷役作業の費用と労働実態を把握した上で、運転者が無償で手荷役作業を行うことが困難な実態を社会に発信していく必要があると指摘。発着荷主との共通理解を得るための対話を呼び掛けている。

 一方「提言にかえて(物流の真の効率化のために)」では、「『荷役作業』を輸送に伴う“付帯作業”としてではなく“主作業”として別途切り離して検討すべき」と強調。「荷主としては、できるだけ多く積むために手荷役での“ばら積み”を希望する傾向が強いが、これによってトラック運転者に過酷な作業を要求するとともに、荷積み、荷卸ろしに時間を要し、待ち時間を長くさせ、非効率になっていることも忘れてはならない」と訴えている。

 その上で「“長距離輸送”においては“輸送時間(コスト)”の比率が大きくなるため、積載効率を優先すべきである。一方、“短距離輸送”では“荷役時間(コスト)”の比率が大きくなるため、“荷役効率”を優先すべきである。この関係を、詳細に分析・把握し、その分岐点を見出すことが必要」と指摘。

 これらを踏まえ、パレタイズ化によるユニットロードシステム推進のため「過去における多くの実態調査などの資料を活用し、荷役作業の“作業要素”を抽出・整理するとともに、これらに要する工数(時間や費用)の代表値を提示することが必要と考える。公的機関や組織・団体、大手企業等が中心になって、『荷役標準作業』、『荷役標準時間』、『作業・責任分担方法の例示』、『荷役料金の設定方法』などのガイドラインを作成」することを提案している。

クールジャパン・川崎汽船と合弁で冷凍冷蔵倉庫事業を開始 ベトナムに倉庫建設  日本ロジテム

 日本ロジテム(中西弘毅社長)は、海外需要開拓支援機構(通称・クールジャパン機構)、川崎汽船とともにベトナムで冷凍冷蔵倉庫事業を行うことを目的に昨年4月合弁会社「CLKコールド・ストレージ」を設立し、ホーチミン郊外のビンズン省に多様な温度帯設備を有する倉庫を建設してきたが、このほど完成、事業を開始した。

 この合弁事業は、倉庫の設計、建設、冷却設備、運営までハード、ソフトすべてを日本企業が主導するオールジャパン体制のプロジェクトで、ベトナムでは初めてのマイナス50度の超低温を含む冷凍・冷蔵チルド・低温の多様な温度帯の設備を有する冷凍冷蔵倉庫の運営を特徴としている。

 CLKコールド・ストレージは資本金1500万USドルで、日本ロジテム26%、川崎汽船25%、クールジャパン機構49%の出資。

 冷凍冷蔵倉庫はホーチミン中心部から約22キロメートル、カトライ港から約25キロメートルのところに所在。敷地面積約1万9千平方メートル、平屋建て倉庫延べ床面積約7千平方メートルの規模。ドッグシェルター17基、ドッグレベラー4基、非常用発電機、高度な防熱対策設備、倉庫内の温度・気圧管理、外気の進入抑制機能を備え、警備員による24時間警備体制、防虫防鼠(そ)対策などをとっている。

 今後、日本ロジテムグループの22年に及ぶベトナムでの物流事業ノウハウ、川崎汽船のタイ・バンコクでの冷凍冷蔵倉庫事業ノウハウ、オールジャパン機構の海外需要開拓のための支援という3社の強みを生かし、日本の高度な技術と高品質なサービスによって、日本の食のベトナムでの需要・流通拡大に貢献していくとしている。

今週掲載トピック一覧

  • ☆四文字『悩むトラック「交通規制」』
    ☆運輸労連の夏季一時金妥結一覧
    ☆ウォッチ『新政権発足後のミャンマーの投資と物流展望』

  • ☆国交省・厚労省、事業用自動車の相互通報制度対象項目に「健康診断未受診」を追加
    ☆センコー・リアルエステート、センコーの新不動産会社が営業開始、ローコストな物件取得を図る
    ☆大阪府、ヤマト運輸・佐川急便と包括連携協定を締結、地域活性化など取り組みへ
    ☆日貨協連、ETC2.0車載器導入で連合会・協同組合を調査、27%が助成を実施
    ☆全ト協・日貨協連、WebKITの7月成約運賃指数を発表、3ヵ月連続減少に
    ☆東ト協、環境委員会で3副委員長を選任、佐久間委員長体制の始動へ
    ☆損保ジャパン日本興亜・SOMPOリスケアマネジメント、「自動車事故防止モニタリングサービス」開始、アンケート・専門コンサルタント利用など6メニューを提供へ
    ☆物流連、業界インターンシップ前に全体説明会を開催、プログラム詳細と追加・変更・留意点を説明
    ☆JEITA・JDRC、業界初のドライブレコーダー出荷統計・第1四半期調査を公表
    ☆多胡運輸が破産、首都高ローリー火災事故で負債総額約33億円
    ☆NASVA、業務説明会で報告、安全指導業務への民間参入74者・適性診断業務への民間参入59者

今週のユソー編集室

  • ▼とある物流コンサル会社の荷主調査によれば、一昨年から昨年にかけて物流事業者からの値上げ要請に対し、多くの事業者が交渉の結果一部の値上げを受け入れているという。
    ▼その値上げ幅はおおむね現行価格の1~10%で、物流事業者が提示する価格と現行価格のほぼ中間で妥結するケースが多かったようだ。値上げ提案と同時に物流改善の提案を行っているケースも、全体の4割ほどあるという。
    ▼調査報告書から透けて見えるのは、荷主事業者の負担力にも限界があるという事実と、物流コスト増加の影響を最小限に食い止めたいと願うその心情だ。と同時に、物流事業者が求める適正運賃に、一定の理解が示されているのも事実だろう。
    ▼現在の物流の労働環境が続けば、人手が足りず、事故も増え、荷主の希望どおりに荷物が運べない時代がくる。それは誰の得にもならない未来図だ。荷主側の理解をさらに得られるよう、粘り強く取り組んでいきたい。

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