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2017年9月18日付 2671号

トラック総合安全プラン2020策定、1万台当たりの死亡事故1.5件以下目標に  全ト協

 全日本トラック協会(坂本克己会長)は13日、「トラック事業における総合安全プラン2020」を公表。「事業用トラックを第一当事者とする死亡事故件数を車両台数1万台当たり1.5件以下」とする新たな目標の達成に向け、事業用トラック重点事故対策マニュアルに基づく各種セミナーの開催や、ドライブレコーダー・デジタルタコグラフをはじめとする安全管理機器の積極的な導入促進などの対策を盛り込んでいる。

 事業用自動車の安全計画については、国土交通省が2009年に総合安全プランを策定。これを受け全ト協でも「トラック事業における総合安全プラン2009」を策定し、14年の中間見直しでは「事業用トラックを第一当事者とする死亡事故件数を車両台数1万台当たり2.0件以下」とする目標を掲げて各種の取り組みを進めた結果、12年には3.1件だった1万台当たりの死亡事故件数が16年には2.1件となるなど、取り組みの成果が表れた。

 このほど公表された「トラック事業における総合安全プラン2020」は、国交省が今年の6月30日に策定した「事業用自動車総合安全プラン2020」を受け、9月11日に開かれた第109回交通対策委員会で決定されたもので、「20年に死者数を200人以下」の目標を達成するため、事業用トラック1万台当たりの死亡件数を1.5件以下とする新たな重点削減目標が設定されている。

 重点削減目標の具体的な促進策については、「事業用トラック重点事故対策マニュアルに基づいた各種セミナーの開催・受講の促進」「飲酒運転撲滅運動の推進」「ドラレコ・デジタコ等安全管理機器のより積極的な導入の促進」を掲げ、さらに目標達成に向けた取り組みとして国交省プランのメニューに従って①行政・事業者の安全対策の一層の推進と利用者を含めた関係者の連携強化による安全トライアングルの構築②飲酒運転等悪質な法令違反の根絶③自動運転、ICT等新技術の開発・利用・普及の推進④超高齢化社会を踏まえた高齢者事故の防止対策⑤事故関連情報の分析等に基づく特徴的な事故等への対応―について詳細な実施項目を盛り込んでいる。

 「行政・事業者の安全対策の一層の推進と利用者を含めた関係者の連携強化による安全トライアングルの構築」では、運輸安全マネジメントについて官民一体となって普及・啓発を推進することや「トラック追突事故防止マニュアル活用セミナー」などの全国各地での開催、Gマーク・引越安心マークの普及促進などを実施。

 「自動運転、ICT等新技術の開発・利用・普及の推進」では、衝突被害軽減ブレーキをはじめとするASV(先進安全自動車)関連機器やデジタルタコグラフ・ドライブレコーダーなどの運行管理・支援機器の普及拡大などを推進する。

 「超高齢化社会を踏まえた高齢者事故の防止対策」では、高齢歩行者特有の行動(昼間の交差点および夜間の道路横断)の啓発を行うとともに、交差点通過時における車両周辺歩行者の安全確認励行などを呼び掛ける。

 「事故関連情報の分析等に基づく特徴的な事故等への対応」については、ドラレコ映像などを活用した運転特性の確認や指導監督の徹底などを行う。

ビール4社共同物流、札タで出発式開催 日通とJR貨物が混載輸送

記念撮影するビール4社の営業関係者、左から門田高明アサヒビール北海道統括本部長、濱本伸一郎キリンビール北海道統括本部長、住吉徳文サッポロビール北海道本社副代表、神田和明サントリー酒類執行役員北海道支社長 混載列車を背景にしたテープカット

 アサヒビール(平野伸一社長)・キリンビール(布施孝之社長)・サッポロビール(髙島英也社長)・サントリービール(山田賢治社長)の4社は 12日、札幌市白石区のJR貨物札幌貨物ターミナル駅で、日本通運(齋藤充社長)・JR貨物(田村修二社長)と共に、釧路や根室など道東エリア向け共同物流の出発式を開催した。

 1社1届け先でトラック単位(約10トン)にまとまらない酒類や飲料を対象に、日本通運が4社の荷物を配送先ごとに混載、今まで空回送となっていた鉄道コンテナを利用(一部で日通のトレーラーによる混載輸送を併用)して配送する。鉄道輸送区間は札幌貨タ駅~釧路貨タ駅間の約330キロメートル。月曜から金曜までの週5日、日発10個の規模。

 すでに北陸や首都圏でビール関係複数社による共同配送の事例はあるが、4社による共同物流や、JR汎用12フィートコンテナの混載輸送は、いずれも初の試み。改正物流総合効率化法に基づく計画認定事業となっている。

 出発式には、主催した4社の北海道地区の責任者に加え、アサヒビールの児玉徹夫執行役員物流システム部長、キリングループロジスティクスの戸叶弘常務執行役員本社物流管理部長、サッポロビールの田島一孝サプライチェーンマネジメント部長、サントリーMONOZUKURIエキスパートの小栗章敬物流部長らが出席。そのほか共催者として日本通運の青山陽一常務執行役員北海道ブロック地域総括札幌支店長とJR貨物の内山健北海道支社長、来賓として国土交通省北海道運輸局の齊藤敬一郎交通政策部長、北海道の平野正明知事室長らも出席し、総合効率化計画認定通知書授与式や、テープカットを行った。

 主催者を代表してあいさつしたサッポロビールの田島部長は「4社の共同物流が本日初めて実現した。ここ数年各社の物流部門で情報交換を進めていたが、少し前まではこのような対応はできなかったことを思うと、大変感慨深く、喜ばしい」と述べ、「物流を取り巻く環境が厳しい中、必要な製品を必要な量だけ届けるという使命を、環境に優しく、安定的・持続的に実現していくことが4社共通の喫緊の課題であり、その課題を解決するため日本通運とJR貨物にも参画していただき、今回の北海道における新たな共同物流スキームの構築に至った」と経緯を説明。鉄道輸送をメインに一部で日本通運のトレーラーによる混載輸送を併用し、バランスのとれた輸送体系を構築した点を強調するとともに、実運用段階で発生する課題を解決し、他地域への展開も検討していく考えを示した。

 共催者としてあいさつした日通の青山常務執行役員は、「昨年12月にプロジェクトへの参画を要請された時には、ビール各社の英断に驚き、要請を光栄に思った」と振り返り、「総合効率化計画の認定を受けたことで、事業の重要性について認識を新たにし、社会貢献など各社共通の使命を忘れず邁進していく」と力を込めた。

 また、JR貨物の内山支社長は「今回の取り組みはまさに画期的で、コンテナ内に各社の荷物を混載する輸送は、JR貨物にとっても全く新しいこと」と今回のスキームの先進性を強調。同社が改善を図っている空コンテナ回送の減少にもつながることから、「鉄道貨物輸送の新たな展開を切り開く取り組みになる」と胸を張り、安全・安定輸送の確保に全力を尽くす決意を示した。

 式典後に取材に応じた日通の青山常務執行役員は、共同物流の実現に当たって配送先の納品時間の調整に留意したことを明らかにした。また、JR貨物の内山支社長は、他の業種でも同様のスキームを導入することで、さらなる空コンテナ回送の減少など、効率的輸送の実現を目指していく考えを示した。

今週掲載トピック一覧

  • ☆ウォッチ(76) 『現代版シルクロード「一帯一路」は構想から具体的展開へ(その2)~資金調達プラットフォームAIIBの現状~』
    ☆日中ビジネスワンポイント(167) 『中国人の買い物の新動向』
    ☆人物ウィークリー、関東運輸局・森高龍平自動車交通部長

  • ☆関東ト協が事業者大会と関東ブロック事故防止大会開催、災害時等の1都7県の各トラック協会による相互応援に関する協定を全会一致で締結
    ☆交通労連が第55回定期大会を開催、運賃値上げは必要要件
    ☆ヤマト運輸労組が第72回定期中央大会開催、秋闘で中長期的労働時間明確化求める 森下委員長が働き方改革実現に全力で取り組む姿勢を強調
    ☆佐川急便がトヨタ専用列車を活用し異業種共同モーダルシフトへ、31フィートコンテナ1個分を輸送
    ☆ブリヂストンタイヤジャパンが技能グランプリ全国大会と生産財セールスマンコンテストを開催、作業品質のさらなる向上へ
    ☆JA-LPAが10月19日に物流不動産セミナー開催
    ☆全ト協が福岡ト協とともに麻生財務大臣に2019年度税制改正・予算に関する要望を提出、高速道路料金の大口・多額度割引最大50%の継続や働き方改革実現に向けた諸施策に関する補助・助成など
    ☆ヤマト運輸が自動認識システム大賞を受賞、スポーツ大会の事例評価
    ☆カンダグループがダッシュ21中央発表大会開催、庫内・管理部門最優秀賞は小山協働センターに
    ☆JR貨物が全国通運連盟と鉄道貨物協会とコンテナ輸送品質向上キャンペーンを共催、フォークリフト振動抑制装置集中導入など
    ☆日本郵便が10月1日から国際eパケットライトを全国展開、取扱国・地域も拡大
    ☆LEVOが物流分野におけるCO2削減対策促進事業の第3次公募を開始、オープン型宅配ボックス・電動フォークリフト導入補助 受付は29日まで
    ☆国交省自動車局の吉永安政安全政策課長が秋の全国交通安全運動の取り組み概要語る、運転者の体調急変による事故の防止など
    ☆全日通商事労組が第37回定期全国大会開催、「労使による意識改革が必要」と木村委員長
    ☆埼玉ト協が交通安全大会を開催、「目指せ!事故撲滅」と参加者全員がシュプレヒコール
    ☆日通総研がデータベース化や分析のための無料アドバイスサービスを開始、紙の日報を自動変換

今週のユソー編集室

  • ▼国土交通省は本年7月、貨物自動車運送事業法の荷主勧告制度における荷主勧告書発出の判断基準明確化などを盛り込んだ、新たな運用に関する通達を施行した。
    ▼これに関連して同省自動車局の平嶋隆司貨物課長は、今まで勧告書の発出実績はなかったが、今後は勧告の前段階に当たる協力要請書の発出後にも改善が見られない場合「慎重に考えすぎることはない」と語り、勧告という“伝家の宝刀”を抜く可能性を示唆した。
    ▼とある取引環境・労働時間改善地方協議会では、協力要請書の発出が業界内の元請け・下請け関係内にとどまっていることを指摘し、真荷主に対して改善努力を促す方向に進んでいないことを訴える委員もいた。
    ▼業界元請けの遵法意識が必要なことは当然だが、勧告制度が単なる業界大手たたきに陥る可能性も否定できない。果たして“伝家の宝刀”は抜かれるのか、それは誰に対して抜かれるのか、事業者は固唾をのんで見守っている。

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