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2018年3月19日付 2694号

女性ドライバー等が運転容易なトラックを検討、11月にガイドライン策定  全ト協・国交省

 全日本トラック協会(坂本克己会長)と国土交通省は、トラック運送業界で深刻化する労働力不足への対応の一つとして、女性や高齢者など多様な人材が乗務しやすい車両のあり方を検討するため「女性ドライバー等が運転しやすいトラックのあり方検討会」を設置。14日に東京都新宿区の東京都トラック総合会館で第1回会合を開き、5~8月にかけて自動車・車体メーカーやトラックユーザーにアンケート調査を行うことを決定するとともに、11月をめどにガイドラインを取りまとめる方針を固めた。

 トラック運送事業は、わが国の産業活動や国民生活の基盤を支える重要な産業であるものの、トラックドライバーの有効求人倍率は、2.76倍(1月時点、全産業平均は1.8倍)と、他の産業に比べ人手不足が深刻な状況にある。

 また、女性トラックドライバーは2.5%と全産業の約43%に比べ女性の就業割合が著しく低い一方で、高齢層の割合が高く、若年層の割合が少ない状況にあり、平均年齢も上昇している状況にある。

 わが国物流サービスの継続的な提供には、女性をはじめとする多様な人材の確保のための環境整備が不可欠な状況となっているが、女性トラックドライバーが運転する場合には、運転席への昇降や座席ポジション調整、安全運転支援技術などの配慮すべき項目が多いことから、女性ドライバーが運転しやすい車両の開発が関係者から強く望まれている。

 検討会は、こうした状況を踏まえ、全ト協と国交省が共同で設置したもので、女性や高齢者のトラックドライバーの視点に立った車両のあり方に関する議論を進め、最終的にはガイドラインを取りまとめて幅広い関係者に浸透を図ることで、働きやすい労働環境を整備し、女性・高齢者ドライバーの確保・育成を推進していく。

 座長は東京大学の鎌田実教授が務め、委員は学識経験者、モータージャーナリスト、日本自動車工業会、日本自動車車体工業会、陸上貨物運送事業労働災害防止協会、運輸労連、全ト協、行政の担当者らで構成されている。

 検討会では今後、トラック・車体メーカーやユーザーなどへのアンケート・ヒアリングを行うため、調査計画案を取りまとめて5月の第2回会合に提示、5~8月かけて調査を進め、9月の第3回会合に結果を報告した上で、11月の第4回会合でガイドラインを取りまとめる。

 調査では、大型トラックメーカーに対して、ハンドル、ペダル類、ギヤ、乗降性、オートマチック化の動向などについて調べるとともに、女性ドライバーに関連するニーズの把握状況やニーズへの取り組みの有無、取り組みの阻害要因などについて質問する。

 ユーザーへの調査は、トラック事業者と女性ドライバーに対して実施。事業者アンケートでは、女性ドライバーが乗務している車種や女性採用に関する荷役、配車、運行計画などのメリット・デメリットなどについて質問する。

 女性ドライバーには、主に運転している車種や車両に求める安全性・快適性・利便性などについて尋ねる。

 ガイドラインは、自動車メーカーのモデルチェンジの際の参考に役立てるほか、車体架装メーカーの設計やオプション設定に反映させることなどを目的に取りまとめる。

 また、トラック事業者の発注時の参考になるような内容も盛り込まれる予定。

中国最大の港湾運営の上海集団物流と提携、物流全般・人材交流等  日通

 日本通運東アジアブロック(杉山龍雄常務執行役員)は14日、中国最大の港湾運営会社・上海国際港務(SIPG)傘下の上港集団物流(SIPGL)と業務提携の覚書を締結したと発表した。

 SIPGLは、SIPGグループの中核物流会社で、上海に約40万平方メートルの倉庫を所有している。グループ内に船社を持つSIPGのリソースを利用して、港湾と海上輸送を組み合わせた輸送サービスを提供している。

 今回の業務提携を通じて、両社はフォワーディング業務、eコマース、倉庫事業、複合輸送商品の開発、CO2削減を目指したコンテナラウンドユースへの取り組み、両社の研修やセミナーに参加できるような人材交流など、幅広い分野で協力し相互の発展を目指すとしている。

 中国は、「一帯一路」政策による鉄道輸送の拡大やeコマースの伸長など物流事業の環境は大きく変化しており、SIPGグループと日通グループは、長年にわたる協力関係のもと、両社の事業拡大のために業務提携したもの。

今週掲載トピック一覧

  • ☆ウォッチ(82) 『拡大、進化を続けるASEAN物流市場』

  • ☆日通が記者会取材会で4サービスをプレゼン、テーマは「日通フード・ロジスティクス」フレッシュ青果便など
    ☆日貨協連がWebKITデータを日本銀行に提供へ、サービス価格指数の精度向上に寄与
    ☆ヤマトHD・ヤマト運輸の山内・長尾両社長会見詳報、労働環境整備着実に 料金改定理解に感謝
    ☆運輸労連18春闘の大手組合妥結状況、ヤマト運輸が満額の妥結で各社とも賃金・一時金増額
    ☆ヤマト運輸が春闘の妥結内容を発表、働き方改革に重点
    ☆JR貨物が10月に貨物賃率表10%値上げへ、設備投資等に充当
    ☆セイノーHDが防災・減災事業を展開、可搬型回生式負荷装置を用いた非常用電源の負荷試験事業を実施へ
    ☆千葉県改善協議会が実証実験結果報告、荷主の理解・協力にいまだ課題残る
    ☆千葉県適正化実施機関が評議委員会を開催、DE評価が5ポイント増に AB評価7割切る
    ☆埼玉ト協が物流セミナー開催、適正運賃収受の動きや働き方の講演など
    ☆ヤマト運輸が5月に人事制度改定、フルタイムSD全社員を正社員として採用
    ☆住友倉庫がシンガポール・チュアスに定温庫を備えた新倉庫を来年5月に竣工
    ☆データテックがSRの活用方策など学ぶお客様交流会開催、新プログラムも
    ☆NTTロジスコが大規模災害危機管理演習実施、千葉県直下震度6の想定で
    ☆日通、女子プロゴルファー原英莉花選手とスポンサー契約

今週のユソー編集室

  • ▼やれ「宅配クライシス」だ、「引越難民」だと、近年一般紙において、物流業界のかいわいが騒がしい。宅配と引越は消費者に直結する物流であるだけに、その影響はやはり大きい。
    ▼「宅配クライシス」は2016年12月に発生し、「引越難民」はこの3月のことだ。いずれも宅配と引越の超繁忙期であり、需要をさばききれない事態を象徴している。見ようによっては「運べない時代」が、すでに到来しつつあるのかもしれない。
    ▼ただ、宅配や引越の関係者と話をしていると、そうした危機は16年以降に初めて顕在化したのではなく、消費税が5%から8%に増税される直前の、14年3月にはすでに現れていたとする指摘が多い。
    ▼超繁忙期の対応に四苦八苦する業界にあって、さらに別の需要増の要素が加われば「クライシス」は容易に「クラッシュ」に転ずるだろう。そうした事態を回避するためにも、社会全体で需要の平準化に努めていきたい。

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