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2018年3月26日付 2695号

燃料価格下落で利益改善し増収傾向を維持、黒字事業者が半数以上に 16年度経営分析報告  全ト協

 全日本トラック協会(坂本克己会長)は16日、2016年度決算版経営分析報告書を公表。営業収益(貨物運送事業収入)は輸送量の増加を背景に1者平均2億1380万円で、前年に比べ6.1%の増加となった。また、営業利益率は燃料価格の下落により、前年度比0.5ポイント改善し、9年連続の営業赤字から脱却が図られ、黒字事業者の割合は55%と半数以上を占めた。さらに、これまで車両10台以下の区分では半数以上が営業赤字となっていたが、人材不足による傭車利用の拡大を背景に営業収益が増加したことで、51%が営業黒字を計上した。

 報告書は1992年度から発行しているもので、今回で26回目。全国の事業者2333者(有効数)から提出された16年度決算(平成15年10月~17年8月)の「一般貨物自動車運送事業報告書」の決算内容を分析した。

 16年度は、輸送トン数が増加傾向となったことから、営業収益(貨物運送事業収入)が回復し、燃料価格下落によりコスト削減が進んだものの、運転者人材の確保が困難な状況が続いたことから、人件費および傭車費の負担が増加した結果、営業利益を押し下げた。

 16年度の売上高(全ての事業収入、1者平均)は2億1500万円と、前年度の2億390万円に比べて5.4%の増収。このうち営業収益は、2億1380万円と、前年度の2億150万円に比べて6.1%増加し、16年度の売上高と営業収益は15年度からの増収傾向を維持した。

 営業利益については、燃料価格の下落効果により、貨物運送事業の1者平均営業利益が34万6千円となり、前年度の営業損失58万3千円から黒字圏へ回復し、全ての事業規模において改善傾向を示した。

 一方で、トラック運送業では、必要な運転者数を円滑に確保できない傾向が強く、賃金水準の引上げ、時間外労働の拡大による時間外給与の増加等の影響により、運転者人件費および傭車費の増加が営業利益の改善を限定的なものにした。 

 以上のことから、売上高営業利益率(全事業)は0.3%と前年度から0.3ポイント改善。営業収益営業利益率(貨物運送事業)は前年度のマイナス0.3%から0.5ポイント改善し、0.2%に回復した。

 売上高経常利益率(全ての事業)は1.1%と前年度比0.6ポイント改善、営業収益経常利益率(貨物運送事業)は0.9%と0.7ポイント改善した。経常利益は全ての事業規模で改善傾向を示した。 

 貨物運送事業の営業利益段階の黒字事業者は55%と、前年度から4ポイント改善、経常利益段階の黒字事業者は61%と、前年度から6ポイント改善した。

弁当などEC販売のスターフェスティバルと資本業務提携、関東運輸など活用  セイノーHD

 セイノーホールディングス(田口義隆社長)は22日、フードデリバリーサービスを展開するスターフェスティバル(岸田祐介社長)と資本業務提携を締結した。今後は、スターフェスティバルが展開する電子商取引で販売される弁当をセイノーグループの物流網に組み込み、両社のネットワークや経営資源を相互に活用することでシナジー効果を創出し、顧客に新たなサービスを提供する。

 具体的には、セイノーグループで食料品のコールドチェーンを提供する関東運輸と、買い物弱者対策として狭小商圏の宅配サービスを提供するココネットが中心となって、スターフェスティバルが提供する冷凍弁当の保管・輸送を行う。

 提携は、スターフェスティバルの第3者割当増資をココネットが引き受けることにより、普通株式を取得。ココネットは配送力安定化(人材確保)に向けて、ラストワンマイルの「オープン・パブリック・プラットフォーム」を構築し、スターフェスティバルとの物流網のシェアリングを実現する。

 スターフェスティバルは、“食”のeコマース配送網を構築するため、物流事業会社との連携を実現するとしている。

 スターフェスティバルは「ごちそうで人々をより幸せに」を企業理念に、法人・団体向けに有名店の弁当・ケータリングをデリバリーするサービス「ごちクル」やオフィスランチサービス「シャショクル」を中心としたフードデリバリーサービスを展開している。 

 セイノーHDでは、本年度を初年度とする中期経営計画「バリューアップ チャレンジ 2020 ~成長へのテイクオフ~」で、バリューアップの2本柱一つとして、「オープン・パブリック・プラットフォーム」の構築を掲げており、今回の資本業務提携により、スターフェスティバルが展開する中食・デリバリーの市場を拡大するとともに、将来的にはより多くの飲食店が参入出来る環境を整備することで、新たな価値を創造していくとしている。 

今週掲載トピック一覧

  • ☆主な物流企業の2018年度新卒新入社員数
    ☆アベノミクス物流にとって「吉」か「凶」か(97) 『大規模金融緩和は継続(その3)』
    ☆四文字 『個人トラック「違法行為」』
    ☆日中ビジネスワンポイント(173) 『春節所感』

  • ☆日本郵便、「ゆうグローバルエクスプレス」でオーバーサイズの荷物利用者向けサービスを4月2日から開始
    ☆国交省が第4回自動運転戦略本部開催、トラック隊列走行実験中に割り込み22回発生
    ☆国交省が「自動運転における損害賠償責任に関する研究会」の報告書公表、保険会社からメーカーへの求償権行使の実効確保を
    ☆関運局、労働局等と連名で管内荷主団体企業にトラック事業者との適正取引など要請
    ☆全日通の春闘妥結判断、定年65歳の諸課題解決へ向けて検討・協議を確認
    ☆ヤマト労組森下委員長が春闘交渉でコメント、賃上げの満額回答で会社の決意示された
    ☆重田国交省物流審議官が講演、総合物流施策推進プログラムのポイントなど解説
    ☆埼玉ト協が18年度事業計画決める、安全・安心な運行へ向けて交通事故防止対策の徹底を
    ☆日本郵便、小口保冷配送サービス「クールEMS」のインド宛ての取り扱い開始
    ☆ヤマト運輸が4月1日付組織改正、4法人営業部新設やリテール営業部の新設など
    ☆国交省・全ト協、テールゲートリフター補助申請の予算枠2億を9千万円超過
    ☆石井国交大臣が物流博物館を視察

今週のユソー編集室

  • ▼国土交通省の重田雅史物流審議官は先日開かれた講演で、新技術による物流革命に関連して、トヨタ自動車の「イーパレットビジョン」に注目していると語った。
    ▼このビジョンでは、バスやトラックのように使える全自動運転の電気自動車をプラットフォームとして活用し、都市内における荷物などの配送、ライドシェアリング、モバイルオフィス、ホテルなどに利用してもらうイメージを明らかにしている。
    ▼同社の豊田章男社長は、この構想を米国の家電見本市でプレゼンし、Uberをはじめとする多数のパートナー企業とともに「モビリティー・サービス企業を目指す」姿勢を鮮明に打ち出したという。
    ▼重田審議官はこれについて、先進的な物流企業が構想への関与を意識するべきと指摘した。物流サービスを物流以外の企業が提供する未来。それは利用者や社会、そして物流企業にとって、どのような意味を持つのか。今から考えておく必要がありそうだ。

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