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2020年1月27日付 2779号

徹底したデジタル化等でヤマトを取り戻す 経営構造改革プラン発表  ヤマトHD

会見する長尾社長

 ヤマトホールディングス(長尾裕社長)は23日、2020~23年度の4年間を期間とする経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」を発表。同日記者会見した長尾社長は、プランについて「経営体制の刷新により経営と現場の距離を縮め、スピーディーに要望に応えるヤマトを取り戻す。デジタル化の徹底で勘や経験に依存した経営を改めるとともに、現場SDの余計な負担を取り除き、オープン化の推進で新たな“運ぶ”を創り出すことに挑戦する」と強調した。

 プランでは①顧客、社会のニーズに正面から向き合う経営への転換②データに基づいた経営への転換③共創による物流のエコシステムを創出する経営への転換―の三つの基本戦略を掲げ、それを実現するために三つの事業構造改革(宅急便のデジタルトランスフォーメーション、ECエコシステムの確立、法人向け物流事業の強化)と、三つの基盤構造改革(グループ経営体制の刷新、データ・ドリブン経営への転換、サスティナビリティの取り組み)を実行する。

 このうち、宅急便のデジタルフォーメーションでは、デジタル化による徹底したデータ分析とAIの活用、ロボティクスの導入で輸配送工程とオペレーション全体の最適化、標準化を進め、集配の生産性を向上。宅急便SDが顧客との接点により多くの時間を費やせる環境を構築し、関係を強化する。現在ベースとセンターで行っている仕分作業をベースで一括して行い、ネットワーク全体の仕分生産性を4割向上させるなど、取扱個数の増減だけに影響されない、安定的な収益構造に改める。

 ECエコシステムの確立では、本年4月からEC事業者や物流事業者と協業してネットワークを整備し、宅急便より簡素で安価なサービスを希望するEC利用者のニーズに適合したオープンな新配送サービスを一部地域で開始する。統合受発注・輸配送・在庫管理・決済などを一括管理できるオープンなデジタル・プラットフォームを構築し、21年4月からの提供を目指す。

 法人向け物流事業の強化では、人材や物流機能、幹線ネットワークなど法人向けの経営資源を結集し、顧客目線のアカウントマネジメントを推進。データ基盤として「Yamato Digital Platform(YDP)」を構築し、高精度でリアルタイムの情報を軸とした法人向け物流ソリューションの提案力を強化することで、サプライチェーン全体を最適化するソリューションの開発に注力する。

地方部での貨客混載を法的位置付けも 今国会に提出  交政審計画部会交通基本計画小委

交通政策基本計画の見直しに
向けた検討がスタートした

 交通政策審議会計画部会交通政策基本計画小委員会は22日、東京都千代田区の国土交通省で4年ぶりに会合を開き、来年度の交通政策基本計画の見直しに向けた検討を開始。また、地方部での人流・物流の確保に向け、20日に召集された第201回通常国会に、「貨客運送効率化事業」(仮称)の創設などを盛り込んだ「持続可能な運送サービスの提供の確保に資する取組を推進するための地方公共交通の活性化及び再生に関する法律(活性化再生法)等の一部を改正する法律案」を提出する方針が示された。

 小委員会では、国土交通省の担当官が、2014年の活性化再生法改正後の成果や課題などについて説明。

 全国で500件を超える地域内の公共交通ネットワーク形成に向けた計画策定が行われる一方、移動者目線でのサービス改善や過疎地での移動手段の確保などの課題が顕在化しており、運転者不足の深刻化や公的負担の増加をはじめとする社会情勢の変化も地域の足の確保に影を落としている。

 こうした状況を踏まえ、19年12月の交通政策審議会交通体系分科会地域公共交通部会の中間取りまとめでは、「地域公共交通計画」(仮称)を原則として全ての自治体が策定し、さらに地域公共交通特定事業に必要な実施事業を記載することなどを柱とする活性化再生法の見直しイメージが盛り込まれた。

 また、「貨客運送効率化事業」(仮称)を創設し、すでに全国で取り組みが進められている貨客混載を法律上の制度として位置づけることで、地方部での物流サービス確保と地域での旅客運送サービスの提供につなげる。

 同事業では、国土交通大臣の認定を受けた場合に、法律上の特例を適用することを想定しており、物流のドライバー不足とバス事業の収支悪化への対応を後押しする。

 改正法案は、2月の上旬に国会に提出される見込み。

 小委員会は、来年度の交通政策基本計画の見直しに向け、本年度内に3回の会合を開いて有識者からのヒアリングなどを行い、春以降に計画素案について審議する。

 22日の小委員会ではこのほか、次期交通政策基本計画策定に向けた論点として①交通の基礎的な日常サービスとしての持続可能性の向上方策②技術革新のモビリティの質的向上への活用③ライフスタイルの多様化への対応④ヒト・モノのスムーズで効率的な移動の実現方策―などが示されたほか、有識者からのヒアリングを行った。

今週掲載トピック一覧

  • ☆運輸・交通両労連委員長に聞く 2020春闘展望
     運輸労連・難波委員長「改善の足取り確かに」
     交通労連・園田委員長「利潤の適正な分配を」
    ☆物流業界の新年会
    ☆アベノミクス物流にとって『吉』か『凶』か(139)『GDP統計の謎(その2)』
    ☆四文字『運転者の「給与規定」』
    ☆トラック運送業における働き方改革のヒント(3)

  • ☆日本海事協会が「運転者職場環境良好度認証制度」のウェブサイトを開設、登録料は6万円に
    ☆交通労連が中央委で春闘方針などを決定、園田委員長が組織の拡大に意欲示す
    ☆ヤマト運輸労組が春闘討論集会開く、20年度の運動の柱は元気な職場づくり
    ☆国交省自動車局伊地知貨物課長が日貨協連で講演、トラックの標準的運賃は現行より高い設定に
    ☆ヤマトホームコンビニエンスが単身者向け引越サービスの名称を「わたしの引越」として2月にエリア拡大し受注開始
    ☆群馬ト協が富岡実業高校で出前授業し業界の魅力紹介、優秀な人材確保へ
    ☆建交労首都圏労使協が総会・セミナー開催し中村会長らを再任、27日要請行動
    ☆日通が引越業界で初めて問い合わせ窓口にチャットボットシステム導入
    ☆ヤマト運輸がゲストオペレーター(GOP)接客対応コンテストを開催し全国から13人出場、優勝は東北支社の髙橋GOP
    ☆東ト協連が「東ト協連型災害ネット」早期導入キャンペーン実施中、3月31日まで
    ☆運輸労連東京が2020春闘方針固める、賃上げ1万2千円中心
    ☆運輸労連の賃金実態調査で賃金増額に転じる、労働時間は減少傾向に

今週のユソー編集室

  • ▼省人化機器メーカーの担当者と話をした時「現在AIと呼ばれているものは、本質的なAIではない」という言葉に考えさせられた。
    ▼自分の理解の範囲では、現在AIと呼ばれている技術はトライ&エラーを重ねる深層学習であって、初めて遭遇する場面でも極力エラーを回避できる本質的なAIとは違う、ということのようだ。
    ▼自動運転技術を考える際、この差は大きい。安全を至上命題とする運送事業者が、エラーを前提とした技術に手を出すのは難しい。海外のニュースでは、現在のAIに誤認識させることの容易さを警告するものもあった。
    ▼運転のエラーは人命に直結する。本質的なAIの開発が待たれている。

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