物流・輸送の専門紙、輸送新聞はこれからも輸送産業の発展に貢献してまいります。

文字サイズ

2021年8月9日付 2851号

高速道路料金の大口・多頻度割引は拡充と縮小の両面で検討を 社整審国幹部会が中間答申

 国土交通省は4日、社会資本整備審議会道路分科会国土幹線道路部会(朝倉康夫部会長)の中間答申を公表。高速道路の将来像や費用負担のあり方、料金制度の見直しの方向性などを盛り込んだ中間答申では、大口・多頻度割引の割引率について、「現下の経済状況を踏まえた拡充」と、「原因者負担の公平性の観点からの縮小」の両面について、引き続き検討する必要があると指摘している。

 中間答申は、冒頭で現行の有料道路制度はネットワーク拡大期の財源確保に貢献したが、高速道路の更新や進化の取り組みを将来にわたり継続的に実施するためには、制度の見直しに着手すべき時期を迎えていることなどに触れた上で①維持管理・修繕・更新への取り組み②高速道路の将来像③高速道路を持続的に利用する枠組み④速やかに実現すべき料金制度のあり方―を柱に構成している。

 維持管理・修繕・更新への取り組みでは、「大型車利用の適正化による構造物の長寿命化」として、適正利用者への特殊車両通行許可手続きの簡素化や違反者への指導の強化をはじめとする従来の取り組みに加えて、大型車が構造物に与える影響について、データ分析の深掘りを進め分かりやすい形で国民へ情報発信すべきと指摘。また、整備が進められている新たな特殊車両通行許可システムやETC2.0を活用した取り締まり強化などを通じて、老朽化した橋などを避けた経路への誘導を進め、適正な利用を促進することで構造物の長寿命化を図るべきとしている。

 料金制度のあり方については、深夜割引の現状について、「首都圏や近畿圏の本線料金所などで、深夜割引適用待ちの車両の滞留が見られ、荷主に対して立場の弱い運送事業者等は割引が適用される深夜に走行せざるを得ないとの意見があることなどを踏まえれば、深夜割引がトラック運転者等の労働環境の悪化につながっているとも捉えられる」とした上で、割引が適用される時間帯に少しでも高速道路を利用していれば出入口間の全体に対して割引が適用されることが主な要因となっていることから、「割引が適用される時間帯の走行分の料金を対象として割り引くような見直しについて、民営化後の料金徴収技術の進展も踏まえ検討するとともに、交通容量に余裕のある高速道路の夜間利用の促進やトラック運転者などの負担軽減を目的として、割引適用時間帯の拡大について検討する必要がある」としている。

 大口・多頻度割引については、「深夜割引との重複適用により、大口・多頻度割引が適用される大型車の料金が、割引が適用されない普通車の料金を下回ることもあり、構造物に与える影響等に応じた公平な負担の観点から割引率が高すぎるとの指摘もある」とする一方、利用者団体からは、感染症の影響から経済が回復するまでの間、割引率を拡充すべきとの意見があることを説明。加えて、契約単位割引については、感染症の影響により1台当たりの月間利用額が低下した結果、割引が適用されないケースが散見されるなど、利用者にとって不安定な割引だとし、割引率については、「現下の経済状況を踏まえた拡充」と、「原因者負担の公平性の観点からの縮小」の両面について、引き続き検討する必要があるとしている。

 また、より安定的な割引を目指す観点から、協同組合をはじめとする利用者団体の意見も踏まえ、外的要因に大きな影響を受けやすい契約単位割引と、相対的に小さい影響しか受けない車両単位割引のバランスの見直しについても検討することが望ましいとしている。

アートコーポレーションにヤマトホームコンビニエンス株式51%を来年1月に譲渡 ヤマトHD

 ヤマトホールディングス(YHD、長尾裕社長)とアートコーポレーション(寺田政登社長)は2日、YHD100%子会社のヤマトホームコンビニエンス(YHC、佐藤大輔社長)の発行済普通株式の51%を、アートコーポレーションに譲渡することに合意し、7月20日に株式譲渡契約を締結したと発表した。譲渡日は2022年1月17日で、YHCはアートグループホールディングスの連結子会社になる。

 両社は、昨年10月に引越市場顧客のさらなる利便性向上に向けた協業に関する検討を開始した。

 その後12月にはアートバンラインがヤマトの幹線輸送の一部を受託、本年1月にはアートが家具等の単品輸送をYHCに、ヤマトが家族引越等をアートに委託する相互送客をスタートさせ、2月にはアートが単身引越のうち家財量の特に少ない案件をYHCに委託するなど、両社の経営資源を活用した協業を行ってきた。

 その結果、両社の強みを生かすことで多様なニーズに応える多彩なサービスが提供可能であることや、両社のネットワークの活用で、より高品質で効率的な輸送サービスを提供できると判断し、今回の株式譲渡契約締結に至ったとしている。

 両社は今後も関係を強化するとしており、YHCの社名は当面そのままとし、YHCが展開している生活支援サービスなど、単身引越や家具・家電配送以外の業務はヤマトグループに残る。

 アートはコロナ下で急成長したECにおける大物家具・家電の配送をグループの新たな事業の柱と位置づけ、ヤマトグループのネットワークと、これまでYHCが培ってきた開梱・設置、回収における高い技術力や優れた品質に、アートが持つネットワークを組み込むことで、さらに利便性の高い、高品質なサービスを構築するとともに、引越領域でもアートが保有するノウハウとマネジメント力を生かし、YHCの引越事業を高度化していくとしている。

今週掲載トピック一覧

  • ☆経済と物流の表裏分析(20)『2021年度の経済見通し(その4)』
    ☆ウォッチ(123) 『中国初の越境サービス貿易ネガティブリスト~「海南島自由貿易港の越境サービス貿易」に関する参入規制を読む~』
    ☆スリーエムジャパン、運輸・物流業界向けオンラインセミナー「除菌・安全対策のご提案~安心できる職場環境へ」開催へ 新発売の菌を吸着する除菌用シートなどアピール

  • ☆日立物流、物流センターの運営最適化担う統合制御システム「RCS」が特許取得
    ☆SGL、東松山SCRに次世代型ロボットソーター導入で生産性大幅に向上
    ☆オランダ日通、スキポール空港に医薬品・半導体等対応の新物流センター竣工
    ☆全ト協・日貨協連、7月のWebKIT成約運賃指数は24ヵ月ぶりに前年同月比増
    ☆日立物流が決算会見、「SSCV―Safty」の外販強化など今後の展開を説明
    ☆ヤマト運輸・アルフレッサ、ヘルスケア商品の共配で配送業務量予測システムと適正配車システムの導入開始
    ☆日通、海上輸送と鉄道輸送を融合した国内複合一貫サービスの九州ルート開始
    ☆福山通運、下関~福山間でダブル連結トラックの5路線目運行開始
    ☆国交省、ASV導入補助やデジタコ導入補助の申請受け付けを順次開始
    ☆日本マリン・センコー汽船、新造の濃硫酸船「祥硫」が就航
    ☆ビットキー、ゆうパックでオートロックマンションの顔認証置き配の実証実験

今週のユソー編集室

  • ▼見る者に多くの感動を与えた東京オリンピックが閉会した。開催期間中にも東京都と周辺を中心に、新型コロナウイルスの感染が爆発的に増加し、医療への負荷は増え続けている。
    ▼大会期間中は、都内では大規模な交通規制が敷かれ、コロナ対策でさまざまな制約を受ける中、大会関係のみならず、生活物資や企業の生産活動を含めた物流に大きな影響が出なかったのは、物流関係者が積み重ねた事前の準備と、日ごろからさまざまな状況に応じたオペレーションを実行してきた経験の賜物だろう。
    ▼今後、大会の課題点などについての検証が行われることと思うが、物流面への影響も精査して、将来に役立ててほしいと思う。

戻る