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2021年10月4日付 2858号

ロボット点呼実験は大きな問題起きず、実験は第2次期間に移行 国交省の運行管理高度化検討会

 国土交通省は9月28日、ウェブ会議形式で「運行管理高度化検討会」の2021年度第2回会合を開き、9月1日に開始した自動点呼(ロボット点呼)の実証実験に関する実施状況などについて報告。9月1~20日に行った1万2322回の乗務後ロボット点呼では、準備段階で通信トラブルなどが発生したものの、点呼執行時に大きな問題は発生せず、順調な滑り出しをみせている。

 ロボット点呼の実証実験は、9月を第1次期間として運行管理者立ち会いの下、バス5事業者7営業所、タクシー4事業者10営業所、トラック10事業者13営業所で乗務後点呼を実施。準備段階でサーバーにアクセスできない通信トラブルにより代替機に交換するなどのトラブルが2件発生したが、点呼が執行できないような大きなトラブルは発生していない。

 また、実施状況ヒアリングでは、顔認証やアルコールチェック時の位置確認がうまくいかず再検査が多発しているとの意見が7件出ており、メーカーが立ち位置に関するサンプル図をマニュアルに記載することで対応している。

 また、動作が遅く、多くの運転者の帰庫が集中する時間帯では対応できないとの指摘もあった。

 10月以降は第2次期間として、運行管理者が立ち会わずに点呼を行うが、ヒアリングでは「機器の異常・運行上のトラブル発生時やアルコールが検知された場合に運行管理者による対応が必要」「点呼簿に記載する運行管理者名を誰にするか」「運行で発生した問題点をニュアンスを含めて伝えることが困難」「定型化されない伝達事項を運転者に伝える必要がある」などの指摘・懸念が抽出された。

 これらの課題に対しては、点呼時の運行管理者の立ち合いは不要ではあるが営業所への出勤を必須とすることや、運行管理者による伝達など対面での補強許容、点呼状況の抜き打ちチェックなどを行う。

 検討会では今後、2次期間の実証実験を行いながら、点呼機器の認定制度や性能要件などの検討を進め、年度内にも取りまとめを行う。

 検討会のもう一つの柱である遠隔点呼(IT点呼)の対象拡大に向けた検討については、4月から7事業者による実証実験を行っており、第2回会合では8月までの結果を踏まえた中間報告が行われた。

 その結果、ヒヤリハット評価については、急制動、急ハンドル、などの回数が対面点呼とほぼ同様の傾向を示した。

 ヒアリング調査では、「人件費削減につながっている」「点呼結果を電子データで管理することで、効率的かつ確実に保存できる」などの意見が挙がった一方で、「モニター越しの確認では不安が残る」「機器の運用コストが課題」などの懸念も示された。

 10月以降は、5事業者を加えた第2弾の実験を展開し、機器要件などの検討に向けた課題抽出などを上積みしていく。

『ヤフネコ!パック』で発送する商品を未梱包で発送可能とする実証実験開始 ヤマト運輸

ヤマト運輸が梱包作業を代行する

 ヤマト運輸(長尾裕社長)とヤフー(川邊健太郎社長)は1日、「ヤフオク!」「PayPayフリマ」向け匿名配送サービス「ヤフネコ!パック」で発送する商品について、梱包しないまま対象のオープン型宅配便ロッカー「PUDOステーション」または宅急便センターに持ち込むだけで、ヤマト運輸が梱包を代行し発送を行う実証実験を開始した。

 「ヤフネコ!パック」のユーザーから寄せられている「梱包の仕方が分からない」「梱包資材が手元にない」などの声に応えたもの。実験では、利用者が商品を梱包しないまま対象のPUDOまたは宅急便センターに持ち込み、通常と同様の発送手続きを行うと、ヤマト運輸が商品を梱包し発送手配が完了する。

 実験期間は本年11月1日まで。期間中の梱包代行料金はPUDOの場合無料、宅急便センターへの持ち込みの場合資材代金を含め一律税込み500円がかかる。PUDOの料金を無料にすることで、PUDOの周知と利用促進も狙う。

 ヤマト運輸は利用者に対し、想定していたサイズが変わる場合があることや、クール宅急便などは対象外となること、実験対象外のPUDOに持ち込まれた場合は返送(返送の送料はユーザー負担)されること、異なる取引で成立した商品をPUDOの一つのボックスに入れないことなどについて、注意を呼び掛けている。

 対象となる都内6ヵ所のPUDO・宅急便センターは次のとおり。拠点名、住所、対応時間の順。

 【PUDOステーション】①東京メトロ東西線茅場町駅、東京都中央区日本橋茅場町、始発~終電②東京メトロ半蔵門線清澄白河駅、東京都江東区白河、始発~終電③クロネコスタンド豊洲4丁目センター、東京都江東区豊洲、24時間対応④ヤマト運輸甘酒横丁センター、東京都中央区日本橋人形町、24時間対応―。

 【宅急便センター】⑤阿佐ヶ谷パールセンター、東京都杉並区阿佐谷南、午前9時~午後8時⑥三鷹下連雀3丁目センター、東京都三鷹市下連雀、午前9時~午後8時―。

 両社は9月30日、実験開始に先立って東京都江東区で報道関係者向けのデモンストレーションを実施。実験で未梱包発送のニーズを探るとともに、どういった商品で利用されるのか、ヤマト運輸側で梱包を代行することにより、どの程度の作業負荷がかかるのかを検証し、併せて適正な梱包代行費用についても検討していく考えを示した。サービスの本格的スタート時期についても、実験の結果を踏まえて判断していくとした。

今週掲載トピック一覧

  • ☆経済と物流の表裏分析(24)『トラック運賃の足元の動向と見通し(その2)』
    ☆2024年問題への対応(1)『ウイングアーク1st』

  • ☆第一貨物が市内3拠点を集約する新・山形支店の竣工式開催、効率と品質向上
    ☆佐川急便がJR西日本・JR九州と貨客混載の実証実験、鹿児島中央→新大阪で
    ☆トナミ運輸労組が第76回定期大会開催、金作委員長を新任
    ☆セイノーHDグループのGENieが医療品等を対象としたラストワンマイル新流通モデル構築でスズケンと業務提携
    ☆日通齋藤社長が創立記念でメッセージ、HD制移行とグループブランド「NX」を通じて内側から良い変化を生み出すことを期待
    ☆韓国日通が韓国での日系企業初となる3温度帯管理で韓国内における日系企業初のGDP認証取得
    ☆ヤマト運輸が宅急便の発送手続きをスマートフォンで完結できるサービス「宅急便をスマホで送る」の対象サイズを拡大
    ☆全新潟運輸労組が定期大会で「女性中央執行委員」を削除する規約改正行う、女性参画が定着化
    ☆ニトリが11月に神戸市に新たな物流センター「神戸DC」竣工、EC拡大などに対応
    ☆日通総研見通し、21年度国内貨物輸送は通期で3.3%増と5年ぶりにプラスに転換と予想
    ☆野村総研が国交省の委託事業である非接触・非対面型のBtoC配送実証実験の公募を開始
    ☆千葉ト協が理事会を書面開催、職場認証制度の申請件数が予算額を10%超過
    ☆秡川国交省自動車局長が定例会見、経団連の貨客混載全面解禁の要望について詳細などを確認中
    ☆日通の現地法人・上海通運が上海発大阪・神戸向けにスピードと定時性に優れた高速フェリーを利用した「関西特快」を開始
    ☆日通が台湾域内輸送の提供に関するGDP認証取得、医薬品物流拡充へ
    ☆佐川急便が新テレビCM「共に未来へ」編と「高尾100年の森」編の放映を開始、環境への取り組み紹介
    ☆JP楽天ロジが白馬村の山小屋へのドローンを活用した物資配送実証実験、目視外飛行での物件投下による往復配送を国内初成功

今週のユソー編集室

  • ▼自由民主党の総裁選が終わり、岸田文雄新総裁が誕生した。今週からの臨時国会で総理大臣に指名され、そのまま衆議院議員選挙に流れ込む。
    ▼新型コロナウイルスも少し落ち着きを見せてきたが、コロナ禍で傷んだ経済の回復と財政規律のバランス、もはや覇権国家への野望を隠そうとしない中国への対応を中心とした外交問題など、新総理が解決を迫られる難題は目白押しだ。
    ▼2024年問題への対応や物流標準化の行方など、難題を抱えているのは物流も同じである。課題解決に一歩でも近づくために、政治と行政による強力かつ継続した支援が求められている。新総理には政治の混乱を招かないよう期待したい。

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